- 2013/02/22 掲載
新野淳一氏xTED座談会:2013年はフラッシュストレージが本格普及か?その可能性を探る
フラッシュ技術は本当に注目されているのか
新野氏:いろいろなエンジニアが注目していると思いますが、最初にフラッシュストレージの有用性に注目したのは、データベース系のエンジニアだと思っています。彼らは、この数十年、データベースをチューニングして、いかにして少しでも速くするかに頭を悩ませてきました。CPUは高速になり、メモリも安くなってたくさん積めるようになっても、それに比べてディスクの進化が遅いため、彼らの問題はなかなか解決しなかったのです。
こうした悩みに対して、フラッシュのテクノロジーは物理レベルで解決策をもたらしてくれます。そのため、いままさに大規模データを高速処理しなければならないという問題に直面している企業で採用されている段階だと思います。もちろん、速いのが大好きというエンジニアは多いので、彼らに夢のある技術として注目されてきたという面もありますが(笑)。
森谷氏:我々のお客さまでも、たとえば構造解析や流体解析のようなヘビーな解析業務を手がける製造業のお客さまなどで注目されていると感じています。高価なSSDを導入しても、時間短縮によって、投入したコスト以上のリターンが期待できる分野です。また、官公庁のお客さまが研究用のインフラとして導入されているケースもあります。
新野氏:企業にフラッシュが普及する段階は2つあると思っています。まずは、速くないと成り立たないビジネスを展開している企業での導入です。たとえばソーシャルメディアだと、遅延が2~3秒あるとユーザーは離れてしまうと言われています。ECサイトのように、お客さんを待たせたら売上が下がるところもそうですね。
そして価格が少し下がってくると、次に、速くなることが差別化要因になる企業が導入をはじめます。たとえば、分析時間を1日から1時間に短縮することで、より速いフィードバックができたり、よりきめ細かいサービスが可能になり、その結果、売上が伸びるといった場合です。
現在は、こうした企業が導入を検討している段階ではないでしょうか。今年は、こうした企業の成功事例も続々と出てくるのではないかと思います。
住友氏:確かに我々の感触としても、前述の解析業務のように高速でないと業務が成り立たないお客さまだけでなく、Webを運営されているお客さま全体に広がっている印象はあります。あとは特定の分野で、速さ自体が差別化につながる企業もそうだと思います。いまや何のWebサイトも運営していない企業はないので、幅の広い企業で検討が進められていくのではないでしょうか。
震災は大きなトリガーになった
──運用管理の面から見たときのメリットはいかがでしょうか。新野氏:熱、容積、電力消費に悩まされているところ、つまりデータセンターを運営している企業に注目されています。ITの世界では、箱(ハードウェア)は安くなっているのに、運用コストはそれほど下がっていません。つまり、たとえ箱が高くても、運用コストが安くなれば、たとえば5年で見たらトータルコストは安いといった理由でフラッシュのストレージを購入している企業はあるのです。
森谷氏:それは我々も感じます。特に一昨年の震災は大きなトリガーになりました。計画停電が実施され、電力消費に対する考え方が一変し、データセンターにすべてを預けるという流れが加速しました。その結果、データセンターを運営する企業が、ますますフラッシュストレージに注目するようになったと感じますね。
──その他にフラッシュのメリットは何かありますか。
新野氏:冒頭の話と少し重複しますが、データベースのチューニングが楽になります。高速なランダムアクセスが可能なフラッシュストレージの特長もありますが、さらにキャッシュとして有用という面もあります。高速なフラッシュをキャッシュとして利用する方法は、フルフラッシュにするより投資対効果が高いと言えるでしょう。
技術の進歩により低価格化はさらに進行
高橋氏:ワールドワイドで見ると下がっているのは確かです。その結果、いままではホットデータの高速化のためにSASとSATAを組み合わせていたのを、フラッシュ+SATAにするという動きもあります。
また、システム全体の価格を語る上では、無視できない技術の進歩もあると思います。たとえば、インラインの重複排除は欠かせません。データの重複を排除することで、たとえば100GBのデータを70~80GBに圧縮できます。その結果、フラッシュの容量単価をハードディスクの単価に近づけることができるのです。
新野氏:私は、フラッシュベンダーさんとお会いするときに必ず聞くことが2つあります。1つは、これからも本当に価格は下がりますか、ということです。フラッシュは、物理的には小さくすればするほど不安定になるため、そろそろ限界ではないかといわれているのです。この点、仕組みは各社まちまちですが、どのベンダーさんも大丈夫という答えで共通しています。CPUも、同様のことが言われ続けていながらずっと集積化が進んでいるのと同じことかもしれません(笑)。
もう1つは、フラッシュの次の不揮発性メモリは何かということです。こちらも答えは皆さん同じです。iPhoneで採用され、たくさん使われて安くなったものでしょうと。
──海外と日本市場の違いについてはいかがでしょうか。
新野氏:やはりアメリカがすごいなと思うのは、伸びている分野、将来有望な分野に、業界の実績のあるベテランが入って、イノベーションを起こし、ビジネスをしているところですね。たとえば、以前はアプリケーションサーバの分野の企業で経営に携わっていた人間が、いまはよりホットなフラッシュストレージの分野の企業で経営に携わっている、といったことです。
ストレージは一般的にハードウェアという印象が強いのですが、実は知的財産の塊、つまりソフトウェアなのです。フラッシュのデバイスやモジュールは大量生産されているものですが、それをコントロールしたり、重複排除したりというソフトウェアの部分に、いまものすごいエネルギーが投入されています。アメリカのシリコンバレーの力が、ストレージの分野にも現れているような気がします。
フラッシュ普及でファイルシステムやデータ構造も変わる
──フラッシュ技術の今後についてはどう見ていますか。新野氏:わからないから面白いというのが正直なところですが、1つわかっていることもあります。現在のサーバOSはディスクに最適化されたファイルシステムを持っていますが、フラッシュが主流になれば、それがガラッと変わるということです。フラッシュストレージが普及すれば、それに最適化したファイルシステムやデータベース製品が出てきたり、データの管理単位、命令セット、エラーの修復方法なども変わるはずです。
室矢氏:弊社ではEMCのData Domainというディスクベースのバックアップ製品を扱っています。バックアップであれば、それほど高いパフォーマンスは不要ですし、容量単価の安い製品で十分なのです。したがってディスクももちろん残ると思います。
──最後に、3月7日に開催されるセミナー「フラッシュ技術はこう使う! 運用管理者必見!大規模インフラの課題を解決する技術」の見所について、お聞かせください。
室矢氏:ストレージの速度を上げるにはさまざまな方法がありますが、中でもSSDがすでに企業でも本当に使えるところまで来ているということを、ぜひ実感していただきたいと思います。
新野氏:フラッシュというと、スピードや先進性が話題になりがちですが、フラッシュを入れることでシステム全体が変わるという視点も大切です。ストレージのボトルネックがなくなるかわりに、別のボトルネックが明らかになったり、周囲のバランスをとらないとせっかくの性能を発揮できないといったことが起こりえます。今回のセミナーは、フラッシュ技術のみにフォーカスしたわけではないので、こうした本来必要となるシステム全体の視点で持ち帰っていただけると思います。
森谷氏:仮想化などの進展に伴い、ストレージは徐々に集約化されてきています。中央に大きなストレージが置かれ、それに伴ってコンプライアンスやデータの保全といったテーマも重要になります。より大量のデータを、限られた時間でバックアップをとるといった問題もあるでしょう。しかも、災害対策として、手早く遠隔地に送るということも、やはり求められています。今回のセミナーでは、一次ストレージと2次ストレージ、その中でフラッシュを使う、圧縮を使うといった区切りでお話できるのではないかと思います。
──2013年は、いよいよエンタープライズでもフラッシュが注目される年になりそうです。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
フラッシュ技術はこう使う!運用管理者必見!大規模インフラの課題を解決する技術
2013/3/7 (木) 14:00~17:10 | ||||
東京都 | 東京コンファレンスセンター 品川 4F 403 | |||
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