nanapi 古川健介氏、和田修一氏、山下隼生氏インタビュー
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多くのハウツーを集めた情報共有サイト「nanapi」などで知られる株式会社nanapi(2012年4月1日に株式会社ロケットスタートから商号変更)が、先日新たなサービスをリリースした。その「nanapi Biz」は、動画の特性をフル活用した仕事術のサイトだ。nanapiのこれまでの歩みを振り返りつつ、新サービスの狙いなどについて、代表取締役の古川健介氏、CTOの和田修一氏、そしてnanapi Bizを担当する山下隼生氏にお話を伺った。
ハウツーを共有することで仕事も暮らしも便利に!
──生活に役立つ情報共有サイト「nanapi」をスタートしてから、約2年半が経ちました。会社を立ち上げた古川さんと和田さんは、この2年半を振り返ってみて、どうお感じになっていますか?
古川健介氏(以下、古川氏)■こういうコンテンツを作ると、これ程度のアクセスがあるのではないか──という予測通りの伸び方をしています。そういった意味で順調ですが、サプライズも一切ありません(笑)。ちなみに、当初はnanapiをメインにすると思っていたわけではなく、複数のサービスを手掛けて、いずれはそのうちのどれかに集中しようと考えていたので、最初に作ったnanapiを今もやっているのは自分でも意外ですね。
和田修一氏(以下、和田氏)■アクセスの伸びは、通常のWebサービスだと読みづらいものなのですが、nanapiは想定の範囲内の動きをしています。集客に関しては、SMO(ソーシャルメディア最適化)やSEO(検索エンジン最適化)などベーシックなテクニックを中心に使っているので、その分手堅いというのもあるでしょうね。それと、年間の人員計画も順調で、かなりいい人材を採用できていると思います。
古川氏■採用はかなりいい人に来てもらえています。大手に人材が持っていかれがちなので、ネット系企業の転職先としてその候補に上がるのも大変なのです。その中でこれだけ優秀なメンバーがきてくれているのは、嬉しい想定外です。それと、当初の予測と異なった点でいえば、サイト内のコンテンツ作りが想像以上に難しかったことですね。そこで困難に直面してしまった感じはありましたが、最近ようやく解決しつつあります。
──そのコンテンツ作りの難しさはどういったあたりでしょうか? 具体的にお教えいただけませんか。
古川氏■コンテンツの量と質を考えた時に、戦略的には量が一番のフックになると思うんです。例えば、Wikipediaの記事の質がどれだけ高くても、100件しかなかったら役に立ちませんよね。一方で、とにかくやみくもに量を増やしたところで、ユーザーから見て使えないコンテンツばかりだったら、それも意味がありません。質の底上げをした上で量を増やす必要があります。ユーザー目線のいいコンテンツを大量に作ることがアクセスにつながるのですが、その仕組づくりが一番難しい。
和田氏■言い換えれば、コンテンツはユーザーのためにあるべきということですね。技術的にもユーザーインターフェイスはどうしたら読みやすくなるかに注力しなければなりませんし、そのことが結果的に集客に繋がると考えています。
古川氏■それと、ハウツーを集めてCGMサイトを運営する難しさもありましたね。例えば「ハンバーグのレシピ」と言っても、好きなハンバーグの味は人によってかなりばらつきがあります。各々の好みが反映された主観的なハウツーは集めるのもそう難しくはないですが、大半の人にとっては役立つが、書くこと自体は面白くないような客観的なハウツーはなかなか集まりません。その問題の解消のために、在宅でライティングできる方々に報酬を支払って原稿の執筆をしてもらう仕組みである「
nanapiワークス」で解決しています。
また、主観的なものは、その人の主観なので他人が手を入れづらい。CGMサイトとしてそのあたりをどうしていくかは悩みどころです。ただ、最近スマートフォンなどが普及して、ユーザーが投稿しやすくなってきましたよね。PCだとある程度のリテラシーがないと投稿できない敷居の高さがありましたが、スマホなら気軽に文章や写真をアップできます。そういう形でのCGMを使った方法を今は考えています。
──そんな中、2012年3月にリリースされた「nanapi Biz」は、動画を使ったビジネス書ともいえるサービスです。このサービスの着想のきっかけはなんですか?
古川氏■文章を読むことに慣れている人もいれば、そうでない人も当然いますよね。動画のプロフェッショナルの山下が入社したこともあって、文章ではなく動画でハウツーを見せることを考え始めました。2011年の10月くらいから、動画でネクタイの結び方を紹介したり、「
うちトレ」(家でもできるトレーニング方法を動画で解説するサービス)をリリースしました。
その反響などを踏まえて、動画でハウツーを見るユーザーは、かなりの数が存在すると実感しました。その層を主たるターゲットとして、ビジネス上のハウツーなどについて動画を使って解説するのが、このnanapi Bizというサービスです。
山下隼生氏(以下、山下氏)■社長の古川はビジネス書が好きなのですけど、僕はビジネス書が苦手でまったく読みません。本を読むくらいなら、誰かに聞いて済ませてしまいたいというタイプなのですが、僕のような人間はまだまだいるのではないかと思っています。そういう人たちにはどんどん活用してもらいたいですね。とくに就職活動中であったり、新社会人になったばかりの20代には、名刺の渡し方や面接の仕方などすぐに知りたい緊急性の高いニーズがあります。今はそこに向けたノウハウを中心に情報をアップしています。
──これまでのナナピのサービスはCGMのように不特定多数でコンテンツを作り上げていく印象がありましたが、nanapi Bizのコンテンツはノウハウを解説する個人にフォーカスしているのも特徴的です。
山下氏■ビジネス系のノウハウはとてもシビアで、間違ったマナーで接すると相手に失礼になることも多々あります。だからそのノウハウについて“誰”が教えているのかが重要で、ビジネス本の著者やコンサルタントなど実績のある人が解説すると説得力は増しますよね。例えば、手帳術やノート術のような主観性の高いものも、「この人が言っているなら信頼できる」という説得力が持てます。また、いろいろな講師の方に解説してもらうことで、どのやり方が自分にマッチしているかも検討できます。それがこのサービスの強みです。
古川氏■課金はなかなか難しいのですが、例えば500円で高名なビジネスコンサルタントの動画が見られるというコンテンツに対しては、ユーザーはお金を払ってくれるかもしれない。さらにこれはまだ先の話ですが、そこからユーザーと動画の出演者がコミュニケーションをとれるようなところまでいけたら面白いですよね。
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