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変貌する社会情勢と市場動向が複雑に絡み合い、いま数多くの企業ではインフラやITの運用に劇的な影響が出始めている。このような状況を踏まえ、情報システム部門が将来への戦略を策定する際には、従来より客観的な視点からの検討が求められるようになってきた。今後5年間という短いスパンで、企業が生き残りを賭けて戦うために注目すべき最重要トレンドは何か。米ガートナーリサーチのカール・クランチ氏が、これら重要トレンドについて紹介し、企業がどのようなアクションを起こすべきかという点について提言した。
インターネットは、常時接続で150億以上、また一時接続で500億以上のアクセスがあり、オンライン上には14億台のPCと20億人のユーザーがいる。昨年送信されたeメールは107兆通以上もあり、Facebookに追加されたコンテンツはこの1ヶ月間だけでも300億件にも上る。さらに2015年までには世界のIPトラフィックは4倍になると予測されている。
そのような状況の中で、企業は消費者の動向を汲み取って行動していかなければならない。デバイスは小型化され、パフォーマンスも向上し、一人当たりの利用台数もアクセス数も急増中だ。
ネットやITの世界では今何が起きていて、今後どうなるのか。米ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト カール・クランチ氏は、ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2012で、ITインフラにおける最重要トレンドとそれに基づく対応計画を提言した。
すべてにアクセスできるモバイルデバイスとクラウドサービス
最初にクランチ氏が挙げたトレンドはタブレットの急増だ。
「タブレットについては利用が大きく伸びており、コンテンツ・情報の作成、配信など、利用形態が変わった」
タブレットは、ジャイロセンサーやGPSなどの機能を備えており、ユーザーが入力操作をしなくても、自然にマシンが反応してくれるインターフェイスとしても使える。これをクランチ氏は「コンテキスト・アウェア・コンピューティング」と表現する。ユーザーがどこにいて、何を実行しているのか(動く、止まる、方向)を把握し、それらのコンテキスト情報を基にアプリケーションが反応するのである。
「コンテキスト・アウェア・コンピューティングというトレンドに対応するために、企業としては2014年ぐらいまでに開発計画を見直し、仮想化の基礎や、それらを支えるアーキテクチャーの整備を点検すべき」
また、アプリケーション配信にも変化が生じているようだ。ガートナーの予測では、2014年までにアプリストアからのモバイルソフトのダウンロード数は年間700億件以上になるという。
「パーソナルユースのみならず、大半の企業がプライベートなアプリストアを構築し、それを通じて社員に対してソフトを提供することになるだろう」
キャパシティ、省エネ~先端データセンターに求められるもの
個人に限らず、企業に蓄えられるデータも日々増え続けている。そのため、事業拡大に向け、データセンターもキャパシティの増加が求められるようになってきた。
確かに容量が増えても、最新サーバへのリプレイス、ラックの高密度化、仮想化や並列処理などの適正なテクノロジーを組み合わせることで、物理的なスペースを拡大せずに、現行の占有面積を維持することが可能だ。
しかし、そこで直面するのがITの「複雑性」だ。新しいITシステムで機能を25%追加すると、そのシステムの複雑性は100%に上昇するとクランチ氏は指摘する。具体的なソフトウェアの例では、Oracle10gの初期設定パラメータは1600以上、ハードウェアの例では、Cisco Catalyst 6500 Switchの資料類は約2400ページもある。
「ソフト・ハードの複合的な組み合わせで相乗され、そのための調整に対する費用と時間が積み増しされてしまう。したがって、複雑性を縮小することで反応度を上げ、柔軟性や拡張性を担保することが肝要だ」
データセンター内では、サーバ、ディスク間の接続など、ネットワークに関するケーブリングの課題も挙がっている。ラックあたりの帯域幅(I/O)の増加率は、4年以内に25倍まで跳ね上がると予想され、ビッグデータの処理や保存も考慮すれば、現状では対応できそうにない。
静的に独立したサーバ/ストレージ/ネットワークではなく、これらを共用管理して大量のリソースをプールすることで、急速なデマンドに動的かつ柔軟に対応できる「ファブリックベース」のデータセンターが求められるのである。
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