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  • 2011/11/08 掲載

クロスライセンス契約とは?なぜ行われる?特許制度で重要な4つのポイント

スマートフォンの特許戦争を理解する(2)

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今、世界中で「スマートフォン特許戦争」とでも呼ぶべき状況が起きている。この流れを理解するため、前回は知財関連の権利全般を簡単に解説した。特許制度はきわめて複雑であり、その詳細をこの連載で説明することは困難だ。そこで今回は、その中でも特に重要な「特許権」について詳しく見ていくとともに、世の中で誤解されがちな4つのポイントに絞って解説する。これを読めば、特許権にまつわる誤解や、スマホ絡みのニュースでよく見かける「クロスライセンス契約」がどのようなもので、なぜ行われるのかといったことも理解いただけるだろう。
執筆:栗原 潔

ポイント1:特許権はきわめて強力な権利

用語解説(第1回の内容)
(1)知財とは何か?
(2)特許権とは何か?
(3)意匠権とは何か?
(4)商標権とは何か?
(5)著作権とは何か?
 前回も述べたが特許権とは発明(=技術的アイデア)の実施(=生産、使用、販売、輸出入等)を一定期間(=約20年間)独占できる(=他人の実施を禁止できる)権利だ。これは相当に強力な権利であり、たとえば土地の所有権などのような物理的な物の所有権に近い。

 土地の所有者はその土地を原則的に独占できる(ただし、都市計画で強制収容されるなどの例外的ケースもある)。他人が、勝手にその土地に入ったり使用したりすればそれを排除できる。このとき、どうせ使っていないのだからよいではないかという理屈は通用しない。もし、他人が土地の使用をやめなければ警察権力に頼っても立ち退かせることができる。

 また、土地の権利は財産権なので、他人に土地を貸すことで収益を得ることもできるし、売却することもできる。土地を担保に金を借りることもできる。もちろん、所有者が望めば他人に無料で使わせることもできる。これはすべて所有者の自由だ。

 特許権もこうした土地の所有権と同じような絶対的支配権であり財産権である(大きな違いは特許権には有効期限があるということ)。つまり、特許権者は他人の特許発明の無断実施を差し止めできるし、相手が差し止めに従わなければ警察権力に訴えることもできる(とはいえ実際には特許に関する争いが刑事事件化することはほとんどない)。

 また、特許制度では損害額算定の特別規定があり(特に米国においては)特許侵害の賠償額がきわめて高額になることが多い。たとえば、カメラの老舗企業ミノルタがコニカと合併せざるを得なくなった要因のひとつに、米ハネウェルとの特許訴訟に敗れたことがあると言われている。特許権は大企業そのものの存在を脅かす可能性があるほど強力な権利なのである。

 特許権はこのように強力な権利であるからこそ、誰もが特許取得を目指してイノベーションが推進されるのだという意見もあれば、特許権が強力すぎて企業が訴訟で体力を消耗してしまい、肝心のイノベーションが減退しているという批判もある。これは、結局バランスの問題であり簡単には結論を出せない。本連載でも回を改めて検討していこうと思う。

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