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未曾有の被害をもたらした東日本大震災。福島原子力発電所の破損によって、直接的な被災地から遠く離れた首都圏でも、東京電力の給電エリア内では約2週間にわたって計画停電が実施された。交通網は混乱し、人や物の移動が滞った。今後の日本企業そして情報システム部門には、こうした“想定外の脅威”をも視野に入れたリスク・マネジメントが求められることになる。そのためには何を考え、どのような準備が必要となるのか。ガートナー セキュリティ&リスク・マネジメント サミット 2011で行われた提言を整理した。
データセンターにおけるリスク・マネジメント
震災に伴う今回の計画停電によって、情報システム部門には大きく2つの視点からのリスク・マネジメントが求められるようになったという。1つが、データセンターを対象としたもの、そしてもう1つが、オフィス・在宅勤務を対象としたものだ。
まずデータセンターにおけるリスク・マネジメントについて、そのポイントを見ていこう。
これまでの日本企業では、地震発生時のリスクとして「計画停電」はまったく考慮に入れていなかった。というのも、日本は電力事情がよく、瞬断はあっても、長時間、長期間にわたって停電することが想定しづらかったからだ。
さらにデータセンターでは、一般的にA系統・B系統というように、2つの系統から電気が供給されている。しかし今回の震災では、データセンターの設置に適していると考えられていた郊外が計画停電の対象エリアに含まれてしまった。そこで浮き彫りになったのは、“二重化された給電経路が同じ電力会社からのものだったらどうするか”という視点が欠けていたということだ。
また日本政府は電力の大口需要者に対して、今年の夏の瞬間最大使用電力を25%削減するように求めている(4月19日現在)。これが正式に適用された場合、当然のことながら、データセンターもその対象となる。
「給電経路が完全に遮断された場合、あるいは使用電力を減らされた場合の対策として考えられるのが、自家発電装置の利用だ」(ガートナー リサーチ リサーチ ディレクター 石橋正彦氏)。
しかし自家発電装置は、非常に燃料を消費する。たとえば、あるユーザー企業が自社でデータセンターを保有している場合、自家発電装置用には通常3万~6万リットルの重油や軽油が備蓄されているとする。この燃料は、2500kVAクラスの発電装置を利用した場合、1時間に約1100リットルが使われることになる。
これがもし燃料の備蓄量が6万リットルで、自家発電装置も冗長化構成で同時稼働させ、さらに1日の停電時間が3時間だった場合を考えてみると、約9日間で燃料は尽きてしまう計算になる。つまり自家発電装置だけでデータセンターを稼働させるためには、絶えず燃料を補給し続けなければならないということになる。
「データセンターに自家発電装置を持っている企業は、これぐらい稼働させると燃料を何リットル消費するかというシミュレーションをして、計画停電あるいは25%削減目標を乗り切る必要がある」(石橋氏)。
さらには燃料が底を付く最悪の場合も想定するなら、東京電力の給電エリア外にセカンダリ・サイトを設置することも検討すべきだろう。
「データセンターに自家発電装置を保有していない企業は、各マシンを手順に沿って確実にシャットダウンさせ、計画停電終了後、スムースに立ち上げるための施策を実施することが肝要だ」(石橋氏)。
【次ページ】オフィス・在宅勤務におけるリスク・マネジメント
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