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本連載では、ITによって地方経済を活性化するべく活躍している方々に、各都道府県の経済の現状や生の声、IT化の実情、さらに各課題や成功事例などを持ち回りで紹介いただく。第2回は福岡県で地場のIT化を推進する小林英二氏に、同県の経済情勢をレポートしていただくとともに、IT活用の最新動向について解説してもらった。
今回取り上げた県の位置
福岡県執筆担当
小林 英二
ベンチャー・マネジメント代表
中間法人EKA代表社員
経済産業省推奨資格 ITコーディネータ
1994年にンチャーマネジメントを設立。中小企業を中心にした400社以上のコンサルティングを行う。主な資格は、ITコーディネータ。総務省電子政府推進委員等。主な著書に「モチベーションが上がるワクワク仕事術」『部下の「やる気」を育てる!』「iPhoneワクワク仕事術」がある。ブログは「モチベーションは楽しさ創造から」、Twitterアカウントは@favre21。
九州の中枢を担う福岡県
福岡県は九州の北端に位置し、九州における本州との窓口的な存在である。海を渡れば山口県、東に大分県、西に佐賀県、南に熊本県に隣接している。福岡市周辺に経済、行政、文化などに関する様々な機能が集中しているほか、商業施設の充実や高速道路網の整備などもあって、九州地区の中枢としての性格を有している。
そのため、数多くの企業が九州を開拓するための第1歩として福岡に支店を出しており、「支店経済」と表されるほどである。福岡県の総面積は4,845平方キロメートルで日本全土の1.3%(九州・沖縄の 11.8%)に過ぎないが、人口ベースでは505万人と日本全国民の4.0%(同33.9%)を占めている。また、県内総生産をみると、約18兆円(名目・平成18年度)と、日本の3.5%(同37.7%)を占めている。
そんな福岡県の特色の一つは、その産業構造にあるだろう。
ひと言で表せば「バランスの良い産業構造」と言える。第1次、第2次、第3次と、それぞれの産業が主力分野を持っている。第1次産業では日本茶の一種「玉露」では全国一の生産量を誇り、いちごなどもアジア向けに輸出している。第2次産業はここ数年、急速に自動車関連産業の集積が進み、製造業の厚みが増している。最後に第3次産業。中心都市の福岡市が商都であることもあって、商業関連産業のウェイトは高い。
福岡県を地理的に見ると、歴史的、経済的特性などから、1)福岡市を中心とする福岡地域、2)北九州市を中心とする北九州地域(北九州支店管轄)、3)県中央部の筑豊地域、4)県南部の筑後地域の4地域に分けられる。
福岡地域は九州内の経済、行政の中枢機能が集積し、産業面では卸・小売、サービス業などの第3次産業が中心になっている。北九州地域は県内はもとより、九州で最も工業が集積する地域である。1997年に政府のエコタウン事業地域としていち早く指定を受けてからは、リサイクル施設や国内初となるPCB(ポリ塩化ビフェニル)の廃棄物処理施設が設置されるなど、エコ関連事業も伸びている。
筑豊地域は、県中央部に位置している。かつては石炭の国内最大の産出地であったが、現在では300を超える炭坑はすべて閉鎖され、近年は、大手自動車メーカーが進出したことで、製造業が増えてきている。筑後地域は、県南部の筑後川流域に広がる地域で、古くから北部九州の交通の要衝。 隣接する佐賀県鳥栖市周辺(九州縦貫・横断自動車道が交差)とともに、物流拠点地域として発展を続けている。
九州新幹線の全線開通、アジア交流など交通インフラにも強み
最近の福岡県における最大の話題は、3月12日の九州新幹線の全線開通である。この開通により、博多と熊本間は最速で33分。博多と鹿児島中央間は最速で1時間19分で移動することが可能になった。
九州新幹線開通に伴い、福岡市の商業はさらに拡大すると見込まれている。その理由の1つは九州新幹線による「ストロー効果」である。九州新幹線沿線の熊本県、鹿児島県からの買い物客の増加が見込まれているからである。2つめの理由が、福岡市の現在の中心商業地区は天神地区であるが、博多駅エリアの再開発がこの3月で完了したため、2つめの魅力的な商業地区が生まれたからである。もちろん九州新幹線は、買い物客を増やすというだけでなく、ビジネス客の利便性を向上させることも期待されており、九州においては、各企業の支店が福岡に一極集中されていくことも考えられる。
また、さらにトピックスとして注目されているのは、アジアとの交流である。福岡県は、日本でも有数のアジアに近い県である。中国、韓国に行くのも飛行機であれば東京に行く時間とそれほど変わらない。そのため、近年はアジアから迎え入れる人たち、アジアに出て行く人たちが大幅に増加している。
福岡県を含む九州の輸出額は、アジア向けが半分以上を占めている。福岡県内企業を中心とした九州企業の海外進出先は、全体の75%がASEAN、中国などのアジア新興諸国となっている。行政サイドでもアジアとの経済交流の拡大に向けた環境整備に注力しており、2008年10月に福岡市は釜山市(韓国)と「超広域経済圏」の推進を宣言したり、2010年1月に福岡県は「福岡・アジア新時代創造特区」(アジア特区)構想を宣言している。これはアジアの技術者を県内の中小企業で受け入れる「中小企業大学校」の開講をはじめ、県内とアジアの大学の相互単位取得制度を策定するなど、人材育成や企業支援を促進する施策である。
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