『日本の若者は不幸じゃない』著者 福島麻衣子氏・いしたにまさき氏インタビュー
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秋葉原のライブ&バー「ディアステージ」などを成功させ、注目を集める“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子氏と、人気ブロガー・いしたにまさき氏が『日本の若者は不幸じゃない』(ソフトバンク新書)という書籍を上梓した。秋葉原などを中心に全国各地で勃興している新しいビジネスやコミュニティのかたちを通して、日本の若者の現在を考えた一冊である。本書の狙いなどについてお二人に詳しくお話をうかがった。
コミュニティとクラスター
――まずは出版の経緯について教えて下さい。
いしたに氏■僕はもともと秋葉原ウォッチャーで、ここ数年の急激な変遷をいつか読み解かなきゃいけないと思っていたんです。そこで思いついたのが、もふくちゃんの活動を通して考えるという構成でした。秋葉原が大きく変わり始めたのは彼女が「ディアステージ」(福嶋氏が代表取締役を務めるモエ・ジャパン運営運営のライブ&バー。メジャーデビューした所属アイドルも多い。系列店にはアニメソング専門のDJバー「MOGRA」がある)を作った頃とちょうど合致していたし、自分の居場所を築いていく過程も興味深かった。彼女と秋葉原の変遷は重ねて見るとなにか分かるんじゃないかと思ったんです。企画を考えたのはもう1年以上前ですね。
――そこで出てきたのが、「若者は不幸じゃない」というテーマだったんですね。
福嶋氏■私は自分たちの世代が「不幸だ」と言われることにずっと抵抗があったんです。以前『朝まで生テレビ』の「若者不幸社会」という回に出演させて頂いた時にも、とても違和感を覚えましたので。
いしたに氏■「若者が不幸だ」という風潮は、結局は過去との対比でしかないんですよ。もちろん人間は比較対象でしか物事を捉えられない面が間違いなくあるので、年配の方と比べて収入が低いから、状況が悪いから不幸だと言う気持ちも分かります。でも若者が今なにをしているか、なにを楽しんでいるかという事象を見ないで大人が勝手に「不幸」と決めつけることには意味がない。そこに政治や社会構造を紐付けても解決しないんです。
――本の中で「チャンスを自分で作り出せるようになったこと」「選択肢が増えたこと」などが挙げられていて、とても共感しました。でも例えば年金の話で考えると、高齢者に比べて人数の少ない若者は必然的に負担が増えますよね。それは不幸だとは言えませんか?
いしたに氏■社会的環境で不利だと、それだけでもう不幸なのか?という話ですよね。僕は必ずしもそうではないと思います。
福嶋氏■確かに難しい問題だとは思うんです。損している面はあるかもしれないし、それは時代によって良い面や悪い面もあるでしょうけど、その社会的環境だけに則っていきなり不幸と言われてもそれは首をひねってしまいます。日本の若者が不幸なんだとしたら、どこの若者は幸福なんだろう?って思うんですよ。
いしたに氏■「大企業に就職する」という一つの典型的な良いルートに乗って、そこに幸を感じられる人もいるでしょうけど、そこに乗れなければ不幸だと決めてしまうのはおかしいんじゃないかってこと。ただ、少し昔だとそのレールに乗れなかったら確実に不幸になっていたということも事実なんです。では今はなにが変わったかというと、それはクラスターの存在だと思っています。詳しくは本書を見ていただきたいのですが、コミュニティとは違って中心となるところや帰属意識はあまりなくて、密なコミュニケーションもないクラスター存在は大きいと見ています。
――クラスターによってなにが変わったのでしょう?
いしたに氏■人が集まっている場所に参加できるきっかけにもなるし、そこからなにかを始められるかもしれない。レールから外れても、些細なことからチャンスが得られるようになったんです。やっぱり人間は一人じゃだめなので、これはかなり大きい変化ですよ。
福嶋氏■面白いのは、「この人はあの人に似てるな」と思ってグーグル検索すると、同じことを考えてる人がいっぱいいるんです(笑)。これも一種のクラスターで、ネットによってそれが可視化されましたよね。
いしたに氏■今までのコミュニティはあまり知識がない人に対して当たりが厳しく、入っていくことが難しかった。基本的な情報がないやつは来るなという空気があって、2ちゃん的に言うと「過去ログ読め!」みたいに怒る怖い人が多かったんです(笑)。でも今はそこからクラスターに変化する敷居がかなり低くなりました。ミクシィが普及してガラっと変わった印象があります。
――なぜミクシィなんですか?
いしたに氏■システム的に過去ログが参照しづらく、検索も貧弱だったんです。だからコミュニティで初歩的な質問をしても、普通に教えてくれる。そこから知らない人同士の会話が始まり、共通点がみつかり、自然とクラスターが生まれるようになりました。最近だとtwitterがわかりやすい例ですね。