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- 2010/04/20 掲載
【ベンチマーキング基礎講座(4)】ベンチマーキングの歴史 ~米国企業は80年代の苦境からいかにして復活を遂げたか~
ICG国際コンサルタンツグループ会長 髙梨智弘氏
ベンチマーキングの出現
ベンチマーキングは、1970年代初めの米Southwest Airlines(サウスウエスト航空、以下SWA)が、駐機時間を10分~20分に短縮するために「自動車レース『インディ500』のピットクルーの効率的業務に学んだ」ことが始まりと言われている。当時のSWAはテキサス州に設立されたばかりで、格安運賃の航空会社として名をはせ、乗客が増加していた。しかし、大手航空会社から訴訟されたり、またテキサス州外への路線拡大の許可がなかなか取れなかったりと苦労していた。そうした中、SWAは収益を増加する方法を模索し、1台の飛行機が1日に飛ぶ回数を増やす、つまり飛行機を効率よく運用するためには、駐機時間を短縮することが重要だと考えた。そこで、同業の大手航空会社だけでなく、類似のプロセスでのベストプラクティスを学ぶために、自動車レース「インディ500」のピットクルーにベンチマーキングを行った。
効率化を達成するために外部から学ぶという経営手法が体系化されたのは、80年代前半に米Xerox(ゼロックス)で、業務の方法を改善するために「外部のベストプラクティスに学ぶ方法論」を開発したときからである。
Xerox社内での改善手法が産業界に広がったのは、1989年にXeroxが第2回マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)を受賞し、ワシントンで開催された受賞企業発表会(クエスト会議)でベンチマーキングの効果を参加者に公表したからであった。このベンチマーキング手法がMB賞のアセスメント基準に推奨手法として導入されたため、90年、91年にアメリカ中に広まっていった。
このベンチマーキングについては、APQC(American Productivity and Quality Center:アメリカ生産性品質センター)が1992年から、IBM、Kodak(コダック)、大手自動車企業などと、ベンチマーキングの研究会を開催し、その後、ベンチマーキングの方法論の研修を始め、現在の企業教育の1つとして世界に広がっていった。
ベンチマーキングの本質は、外の知識・知恵などを参考に自社の業務プロセスを飛躍的に改善・改革をすることである。外部のベストプラクティスに学び、自社の業務プロセスを新しいものに転換していこうという経営変革手法だ。外部知を取り込んでいくという意味では、ベンチマーキングはナレッジマネジメントの一部でもある。
これらをまとめると下掲図1のようになる。
>> 次ページ 米国企業が80年代の苦境を乗り越えた方法とは?
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