- 2006/10/27 掲載
【ケーススタディ:サッポロビール『ヱビスビール』】ブランドはお客様への約束事である
ビジネスインパクトvol.7
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サッポロビール マーケティング本部 第2ブランド戦略部 マネージャー 山根一洋 |
「復活発売は、副原料を使わない麦芽100%の本格的なドイツタイプのビールへの挑戦でもありました。 発売当時からプレミアムビールの位置付けで、通常のビール大瓶が140円のところ、ヱビスは10円高い150円という価格設定でした」マーケティング本部第2ブランド戦略部マネージャー・山根一洋氏はこう語り、こだわりと誇りをもって大切に育ててきた商品ブランドだと強調する。
『名品。いま、よみがえる。特製ヱビスビール。』のキャッチコピーで復活したヱビスブランドであ ったが、少数のビール通に支えられただけで、1970年代後半の販売量は年間20?30万函程度(大びん20本を1ケース=1函で換算)で推移するにとどまっていた。現在のように、プレミアムビールとしてのブランドが一般に浸透したのは80年代後半からであった。そのきっかけは、漫画『美味しんぼ』(雁屋哲・花咲アキラ、小学館)で取り上げられたことだったという。
「1988年にバブル期のグルメブームの火付け役にもなった『美味しんぼ』で2回取り上げられたこと で、ヱビスという美味しいビールがあることが一般にも口コミで広がりました」(山根氏)。本格派 ビールに挑戦した開発者の思い、こだわって愛飲してくれていたビール通の顧客と飲食店によって作 られてきたブランドの基盤が、一般消費者にも浸透しはじめる転機となったのである。
ヱビス─というブランドを確立
これを機に年間販売量は100万函を超え、1994年には400万函台にまで伸びた。アサヒ「スーパードライ」(1987年発売)、キリン「一番搾り」(1990年発売)という競合他社のヒット商品が登場した中での健闘である。そして、第二の急成長を後押ししたのが、1994年に開始されたテレビCMを核としたマーケティングであった。
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決まり文句が印刷されたおなじみのポスター。 このえんじ色はブランドブックでも規定され ている、ヱビスの商品イメージカラーだ。 商品写真を全面に出すような派手さはないが、 落ち着いたヱビスの世界観を伝えている。 |
しかも市場自体は’94年に低価格の発泡酒が登場し、ビールのシェアを食い、ビールの総需要は年々 低下していた。そんな中、ヱビスビールは順調に販売量を伸ばし、現在に至るまで12年連続でビール内シェアを伸ばし続けているのである。
「『美味しんぼ』掲載以降、高品質で本格的なビールとしての知名度は高まったものの、一方で「一部の“通”のためのビールであり、自分とは関係ないブランド」というイメージもできてしまいました。自分で手を伸ばす所までいかないというお客様も多かったのです。ブランドのポテンシャルを発揮させるためにはイメージの敷居を下げる必要があり、その点で“ちょっと贅沢”というキャッチのこのCMは大きく貢献しました。これにより、ヱビスはより多くの人に受け入れられるようになったのです」(山根氏)。
これを機にヱビスは、贈り物や祭事の際、あるいはお客様を招いたときなど特別なシーンで好まれる “ちょっと贅沢なビール”というイメージを築くことに成功する。実際の調査でも、ヱビスビールのユーザー構造には、普段からヱビスを飲むという、いわゆるロイヤルユーザーに対し、「普段は発泡酒などを飲むが、特別な場合にはヱビスを選択する」という併飲ユーザーが比較的に多かったという。原料や製法にこだわった本物・本格ビールという基本的価値に加え、特別なときに、あるいは特別な人と飲むときに選ぶ“ちょっと贅沢なビール”というイメージが定着し、感覚価値、観念価値を加えた「ブランド価値」もこの段階で確立したといえるだろう。
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