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- 2009/07/01 掲載
【連載】ザ・コンサルティングノウハウ(8):行動規範
「行動規範」
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ABCコンサルティングには、革新的な戦略の策定・実行を支援するという存在価値がある。この存在価値は、コンサルタントたちに、「クライアントの意向を越える」、「片時もいいかげんなことは言わない」、「つめ切るまで動くな」といった行動規範を生み出させた。行動規範は、コンサルタントたちにとって重要なコンサルティングノウハウである。また、これらの行動規範が、『メッセージ・ファースト』のようなより具体的なスキルや方法を生み出している。これも、コンサルティングノウハウだ。つまり、企業存在価値が、行動規範やその他のコンサルティングノウハウ創造の源泉となっている。
企業の存在価値が、企業行動に影響を与えることは、戦略論ですでに議論されていることである。山口は、かつて、企業の存在価値が戦略にどのように影響を与えているかをリサーチしたことがあった。たとえば、ブレークスルー塾の立野教授の紹介で、彼が昔働いていた大手製造業を調査した。この会社は、設立時に創業者が、『突出した技術で世界一になる』という存在価値を明文化していた。この存在価値が、『差異化技術へのリソース傾斜配分、完成した新技術で世界一のシェア獲得、本技術による利益獲得、利益の新しい技術への傾斜配分』という戦略に展開されていた。戦略は戦術そして組織運営を決めるから、企業存在価値→戦略→戦術→組織運営という階層が存在する。しかしこの階層は、戦略以降がいかにも記述的だ。これに対して、ABCコンサルティングでは、企業存在価値→コンサルタントたちの行動規範→ノウハウ(行動規範以外のコンサルティングノウハウ)→コンサルタント一人ひとりの思考と行動、となっている。もちろんABCコンサルティングにも、戦略→戦術→組織運営という階層は存在している。この階層が組織の記述的ナレッジの階層だとすると、企業存在価値→行動規範→ノウハウ→社員の思考と行動は、意味論的な階層に見える。事実、山口がリサーチしたこの製造業の場合、研究開発部門に、「その研究のどこが世界一か」と問う言葉が定着していた。これは、『必ず世界一の要素がある研究をする』という行動規範だ。
戦略とは、組織の目指すポジションを明確化し、重点領域重点課題を明確化し、リソースを再配分することだ。これに対して行動規範は、組織構成員の行動や思考の目指すポジションを示し、重要な行動・思考領域を特定し、これに社員の頭の中にあるリソースや時間を重点配分するために存在しているようだ。2つの階層は、組織の表と裏だ。
※クリックで拡大 |
図1:企業の意味論的知識体系と企業の記述的知識体系 |
今まで戦略論は、「表」の記述的な部分を多く論じてきた。企業価値や行動規範は、「裏」の意味論的な部分の重要性に対する、経営者・コンサルタント・学者の「気づき」なのだろう。だとすると、戦略や戦術が組織行動を大きく変えたように、行動規範やノウハウで、企業行動を大きく変えることができるのではないか。伊藤が言っていた、「企業を早期にノウハウ・コンシャスに変える方法として、コンサルティングノウハウはおもしろい」という言葉が、山口の心にひっかかっていた。これを明日、小学生に試してみようと思ったのだ。
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