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  • 2008/08/07 掲載

NFCとは何か?どう使えばよいのか?非接触ICカード規格の統合【2分間Q&A(46)】

起爆剤となった「Suica/ICOCA/TOICA」

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近年、非接触ICカードの普及が目覚ましい。大きな起爆剤となったのは、JR3社による「Suica/ICOCA/TOICA」などの電子乗車券や携帯電話の「おサイフケータイ」など、主に電子マネーの分野で大きな広がりを見せたことだ。今回は、この非接触ICカードの仕組みと規格について改めて見ていくことにしよう。
執筆:池田 冬彦
生活のインフラとして機能する非接触ICカード

   非接触ICカードは、鉄道やバスの電子乗車券・定期券、電子マネー、電子社員証・学生証など、あらゆる分野に向けて大きく広がっている。2004年には携帯電話にも非接触ICカードを内蔵する機種が登場し、まさに生活のインフラとして欠かせぬものになった。

 そもそも、ICカードの歴史は接触型ICカードから始まった。接触型ICカードは、現在もキャッシュカードやクレジットカードで使われているが、ICカードの金属端子とカードリーダ/ライターの読み取り装置の接点とを接触させる必要がある。このため「カードを装置に差し込まないと使えない」という物理的な制約がある。

 しかし、非接触カードはICカードリーダ/ライターにかざすだけでデータを伝送できる。このため、カードの向きを気にせずに誰でも簡単に利用でき、カード・リーダ/ライターの接触面が摩耗で劣化したり、汚れによる読み取りエラーなどもない。改札システムや入退室システムなど、幅広い分野で実用的に使える。

 たとえば、JR東日本の「Suica」では、利用者が自動改札にICカードをかざすだけで、わずか0.2秒で相互認証やデータの暗号化、運賃計算といったプロセスがすべて完了する。これなら、1分間に最大60人が通過する自動改札システムをスムーズに運用でき、磁気カードや接触型ICカードのようなリーダ/ライター装置の清掃などのメンテナンスコストもかからない。

 非接触カードのハードウェアは実にシンプルだ。薄いシートを4枚張り合わせた形になっており、その中に極めて小さなICチップとアンテナコイルが入っている。電池は内蔵されておらず、リーダ/ライタから発信される電磁波でICカード側のアンテナコイルに交流電圧を生じさせてICチップを駆動させ、ワイヤレスによるデータ通信を行っている。

図1 非接触ICカードの仕組み
図1 非接触ICカードの仕組み

米粒大の小さなICチップとアンテナで構成されており、電磁波を使ってカードリーダ/ライターとデータの送受信を行う


非接触ICカードにはさまざまな規格がある

 非接触ICカードの規格には、密着型や近接型などさまざまなものがあり、ICカードとして最も普及しているのが、最大10cmまでの通信が可能な「ISO/IEC 14443」というものだ。この規格には3つの種類があり、フィリップス・セミコンダクターズ(現NXPセミコンダクターズ)が開発した「Type A(MIFARE)」、モトローラ社が開発した「Type B」、そして、日本で使われている「FeliCa」という3つの種類がある。

 Type A(MIFARE)はヨーロッパやアメリカを中心に普及し、ロンドン、北京、ソウル、モスクワ、オランダなどの公共交通システムなど、世界で最も普及している。日本では、タバコの自動販売機の成人認証システム「Taspo」で採用された。また、Type Bは日本では経済産業省の「IT CITY統一仕様・国内行政系カード標準規格」に採用され、住民基本台帳カードやパスポートで使われ、採用が予定されているICカード型運転免許証にもこの規格が採用される予定だ。

 一方、日本では「FeliCa」が圧倒的なシェアを占めており、まさにFeliCaの独壇場、といった状況にある。FeliCaは88年にソニーが開発を開始し、94年より実用化された日本独自の非接触ICカード方式だ。当初は「ISO/IEC 14443 Type C」としての提案を行ったが、標準化には至らなかった。FeliCaは他の非接触ICカードの方式と同じく13.56MHzの電波を使う。通信速度は212Kbpsで、Type A/Bの(106Kbps)の2倍と高速だ。

 FeliCaは現在、電子乗車券・定期券である「Suica」や「ICOCA」「PASMO」などをはじめ、電子マネーである「Edy/nanaco/WAON」、家電量販店のポイントカードなどでも幅広く使われており、携帯電話に搭載される非接触ICカードもFeliCaが採用されている。そのほか、入退出管理システムやセキュリティゲートシステム、FeliCa社員証/学生証を使ったコンピュータの認証システムなど、FeliCaを用いたさまざまなソリューションが提供されている。

種類説明
ISO/IEC 14443 Type A規格上の通信距離は最大10cmまで。フィリップス・セミコンダクターズ(現NXPセミコンダクターズ)が開発し、世界で最も普及している標準規格。
ISO/IEC 14443 Type B規格上の通信距離は最大10cmまで。米モトローラ社が開発したもので、日本では住民基本台帳カードに使われている。ICカード型運転免許証にも採用予定。
Felica(ISO/IEC 14443 Type C)規格上の通信距離は最大10cmまで。ソニーが開発した「FeliCa」の技術をベースに規格化された。日本では事実上、非接触ICカードの標準として広く利用されている。


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