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- 2008/01/22 掲載
【MacWorldに見るB2B向けAppleの戦略】高速無線LAN搭載の超薄型ノート、仮想化ソリューションの意味
MacWorld Expo 2008レポート
執筆:山路達也 |
写真1 MacWorld ExpoでのMacBook Airのコーナー 会場での一番人気はやはりMacBook Air。 二本指で画像の縮小や拡大も行える新機能 「マルチタップ」などをみな熱心に試していた |
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今回のMacWorld Expo開催前に予告されていたキーワードは、"There is something in the Air."(空中に何かがある)。その正体は、超薄型ノートパソコン「MacBook Air」であった。薄型であるがゆえにCD/DVDの光学ドライブを搭載していないデメリットがあるが、それは高速の無線LAN(IEEE802.11n)でカバーされる。というより、高速な無線LANを前面に押し出して行くというのが、ジョブズの主張だ。無線LANを使って他のパソコン(WindowsでもMacでも)に搭載されている光学ドライブを利用することも可能、また無線LAN経由でバックアップが取れる「Time Capsule」という機器も発表された。
スティーブ・ジョブズは口のうまい人間だが、詭弁家とばかりはいえない。今では当たり前に使われているUSBや無線LANも普及が始まったのはMacから。ジョブズはトレンドの見極めに長けており、技術的な成熟と世間における需要のバランスが取れたところで、「半歩」進んだビジョンを提示する。
昨今では、企業内においてWeb型のソリューションが一般的になっており、クライアントのパソコンはWebブラウザさえ動けばそれで事足りるようになってきている。美しいユーザーインターフェイスを備え、使い勝手ではWindowsより高評価を得ることも多いMacも現実的な選択肢になりうるだろう。ちなみに、ジョブズの基調講演と同日には、Office 2007と互換性のある、Microsoft Office 2008 for Macも発売されている。
キーワードの「Air」はMacBook Airだけを指すのではない。同時に発表されたムービーレンタルサービス(日本での展開は未定)や、テレビに接続してハイビジョン画質の映画を見られる「Apple TV」でも無線LANが活用される。iPod、パソコン、大画面テレビでシームレスに映画を見られる環境を構築するために、「Air」が活躍するということだ。
ムービーレンタルによって、iPodで大成功を収めた垂直統合型のビジネスモデルが動画配信の世界でも展開される。アップルがうまいのは、自社のソリューションでユーザーを囲い込みながら、ユーザーに「自由」も与えるさじ加減だろう。音楽の場合、iTunesストアで購入した曲の著作権保護の仕組みは他のサービスに比べて自由度が高い(面倒な認証手続きをユーザーに意識させず、CDに焼くのも事実上自由)。データ規格についてもMP3やAACといったオープンなものを採用している。新しくなったApple TV(従来モデルは無償でバージョンアップできる)では、インターネット上で人気の写真投稿サイト「Flickr」や動画投稿サイト「YouTube」にアクセスできるようになっており、ユーザーの利便性を高めている。このバランス感覚には、学ぶべき点が多そうだ。
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