- 会員限定
- 2008/01/23 掲載
制度会計の改正が管理会計に及ぼす影響(2/2)
管理会計、特に「業績評価会計」には情報システムの活用が欠かせない。もう一度ここで「仮説検証型アプローチのマネジメントサイクル」に沿って必要な情報を確認しよう。
![]() |
図1 仮説検証型アプローチのマネジメントサイクル |
(1)まず、最初に必要な情報は「仮説を立てるための情報」(金儲けの3要素)である。販売を例に取ると
1)誰に
2)何を
3)どうやって売ったのか
その結果、どれだけの売上・利益があったのか
(2)次に必要な情報は「仮説の実行結果を評価するための情報」である。これも金儲けの3要素の情報が ベースとなる。したがって、これらの情報を集める仕組みは仮説設定フェーズも仮説評価フェーズも基 本的には同じものである。
ここでのポイントは様々な切り口(=多面的分析)でデータが見られることである。そしてその切り口も色んな組合せで見られることが大事である。前回の洗髪用シャンプーの例で説明すると
(1)誰に(性別もあれば年齢別、職業別、国籍別なども考えられる)
(2)何を(ブランド別もあれば、価格帯別、容量別、容器形態別なども考えられる)
(3)どうやって(チャネル別もあれば、地域別、通常販売かバーゲンか、時間帯別なども考えられる)
そして、前回も説明したように単にAブランドの売上がいくら、Bブランドの売上がいくらではなく「男性が買ったAブランドの売上がいくらか(性別とブランド別の2つの切り口の組合せ)」「Bブランドのカタログ販売で女性が買った金額はいくらか(ブランド別とチャネル別と性別の3つの切り口の組合せ)」と見ていくことによって、問題の本質に近づいていくことができる。そのためには
(1) 1つの販売データに様々な項目が入力できるようにする
(2) 関連するデータを連携させる(結び付ける)仕組み
(3) 分析結果を利用する人達が、自分達の目的に合った形で出力できるようにする仕組み
などが必要になってくる。このような多面的分析を行うソフトとして一般的に「BI(Business Intelligence)」ツールと言われているものがある。これは、業務システムなどの膨大なデータを、蓄積・分析・加工するもので、具体的には「DWH(データウェアハウス)」や「OLAP(オンライン分析処理)」などがそれに該当する。
データウェアハウスとは時系列に蓄積された大量の業務データの中から、各項目間の関連性を分析するシステムである。よくある例としては、天候と商品売上の関連や、一緒に買う商品の組合せの特徴の分析などである。
オンライン分析処理とは、データウェアハウスなどを使って集められた大量の元データを多次元データベースに格納し、これを様々な角度から検索・集計して問題点や解決策を発見することである。例えば、顧客の購入履歴を分析し、地域別、製品別、月別など様々な切り口から売上を分析することができる。システム部門ではなく、分析結果を利用する人達が直接システムを使って分析するところに特徴がある。
BIツールについて説明したが、このツールを活用するためにも、全社システムが連携していることが重要である。企業のシステムは多くの業務システムから構成されている。例えばメーカーであれば会計システム、販売管理システム、購買管理システム、生産管理システム、原価計算システム、人事・給与システム、固定資産管理システム、経費精算システムなどである。
販売管理システムでは売上や売上原価のデータは取れるが、営業経費データは会計システムの中にある。したがって、製品別の営業利益まで管理するためには、販売管理システムと会計システムとの連携が必要になってくる。この場合に、必ずしも両システムが直接つながっている必要はなく、それぞれのシステムからBIツールにデータを渡して、そこで蓄積・集計・分析・加工する方法もある。 分析が高度化・複雑化するにしたがって、企業内の様々なデータが必要になってくる。そのためにもシステム間連携は必須の前提条件になってきている。
以上、 今回は、制度会計の改正が管理会計に及ぼす影響(固定資産関係、四半期決算関係)と情報システムの活用について解説した。今回をもって本講座を終わるが、読者の管理会計活用の一助になれば幸いである。
![]() エス・エス・ジェイ取締役執行役員総合企画室長 大手外資系監査法人入社後、独立し長谷川公認会計士事務所開設。その後大手ベンチャーキャピタルにてベンチャー企業への投資、経営指導、情報システムを中心とした経営管理システム構築指導を行う。また、東証一部上場企業にてシステムソリューションビジネス、経営企画部門の執行役員を歴任後、2007年2月より現職。公認会計士、システム監査技術者。 |
関連コンテンツ
PR
PR
PR