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大鵬薬品工業は独創的な医薬品の研究・開発、製造・販売を行っている企業である。世界的に再編が進む製薬業界にあって、同社は「グローバル・ニッチ・ベンチャー」を経営ビジョンに掲げ、がん、アレルギー、泌尿器の3領域に特化した研究開発型のスペシャリティ・ファーマとして歩み続けている。
大鵬薬品はメインフレームをオープン系サーバーに替え、新しいプラットフォームの上で基幹業務を再構築することを決めたのである
製薬企業におけるダウンサイジングに
A-AUTO for UNIXとBSP-RMを活用
大鵬薬品工業株式会社
1963年創業の大鵬薬品工業(東京都千代田区、以下大鵬薬品)は、「私たちは人びとの健康を高め心豊かな社会づくりに貢献します」の企業理念のもと、独創的な医薬品の研究・開発、製造・販売を行っている企業である。世界的に再編が進む製薬業界にあって、同社は「グローバル・ニッチ・ベンチャー」を経営ビジョンに掲げ、がん、アレルギー、泌尿器の3領域に特化した研究開発型のスペシャリティ・ファーマとして歩み続けている。
この経営ビジョンを具現化するには、情報処理のためのIT基盤にも全体最適の視点が欠かせない。そこで、大鵬薬品はメインフレームをオープン系サーバーに替え、新しいプラットフォームの上で基幹業務を再構築することを決めたのである。
今回、オープン系のバッチジョブ管理ツールとして同社が選んだのは、メインフレームにおいて培われた運用ノウハウを継承することができ、ライセンス交換サービスも用意されているBSPのA-AUTO for UNIX。また、帳票管理については、メインフレームとオープン系でプリンターや電子帳票システムを共用できるBSP-RMが採用された。
グローバル・ニッチ・ベンチャーを目指してIT基盤のオープン化に踏み切る
大鵬薬品工業
情報システム部 システム推進室
課長 榎本 繁氏
グローバル規模で再編が進展する製薬業界では、独創的な製品を生み出す研究・開発体制を確立するとともに、経営のスピード化と業務効率化が常に求められており、ITによる効果的なサポートが必要不可欠となっている。
大鵬薬品においても、これらの要請に応えることは重要な経営課題であった。そこで、独立した存在感のある企業を志向する同社は、得意分野である、がん、アレルギー、泌尿器の3領域に特化した研究開発型のスペシャリティ・ファーマであり続けるための業務環境の見直しを進めてきた。
その一環として情報システム部が2004年から取り組み始めたのが、業務システムのオープン化。計画策定から実施まで携わった榎本 繁氏(情報システム部・システム推進室・課長)は、大鵬薬品におけるオープン化のねらいを「業務システムの処理にメインフレームを長らく活用してきましたが、全体最適のIT基盤を構築することを目的としてオープン系サーバーへの切り替えを決断しました」と説明する。
オープン系への移行は、アウトソーシングサービスを利用してメインフレーム本体を外部に移管することから始まった。2004年5月のことである。続いて、2005年3月からは財務会計、管理会計、工場生産原価の各システムをERPパッケージで再構築する作業に取りかかった。ERPベースの新システム「TRP」(Taiho Resource Planning)を稼働させるためのプラットフォームにはUNIXサーバーが選ばれ、2006年7月に無事カットオーバーを迎えている。
さらに、2007年からは新しい販売・物流系システム「TIP」(Taiho Innovative Planning for Data Resource)のカスタム開発と、人事給与勤怠のシステムをオープン系に載せ替える作業が始まった。最終的には、2009年1月にすべてのメインフレーム上の業務システムがオープン系で処理されるようになる予定である。
バッチジョブ管理にA-AUTO for UNIX、帳票管理にBSP-RMを採用
大鵬薬品工業
情報システム部 システム管理室
主任 大西 勝氏
こうした一連のオープン化に際して問題となったのが、バッチジョブ管理と帳票管理をどのように移行するかということ。
製薬企業の販売系システムには、業界VANを通じて卸から毎日伝送されてくる売り上げデータを集計して公開する機能が欠かせない。入力データがバッチ方式で送られてくるので集計処理もバッチ方式で行う必要があり、運用管理を担当している大西 勝氏(情報システム部・システム管理室・主任)によれば「毎日、1,500以上ものバッチジョブが実行されていました」。同社ではその管理にビーエスピー(BSP)のA-AUTOメインフレーム版を使用しており、これに匹敵する能力を持つオープン系のバッチジョブ管理ツールが求められていたという。
また、帳票管理については、2009年1月までの間、センタープリンターと電子帳票システムをメインフレームとオープン系サーバーで共用できるようにする必要もあった。メインフレーム側にはBSPのA-SPOOLが導入されており、それとの親和性も重要な採用条件の1つとなったようである。
これらの要件をベースに、慎重な選定作業が進められた結果、バッチジョブ管理にはA-AUTO for UNIX、帳票管理にはBSP-RMが採用されることになった。
「同じA-AUTOのUNIX版であり、20年以上におよぶ実績で培われてきた運用ノウハウを継承できることを高く評価しました。さらに、メインフレーム版のライセンスをオープン系に振り替えるライセンス交換サービスがあり、移行コストを最小限に抑えられることも大きな魅力でした」と、榎本氏は選定の理由を語る。帳票管理のBSP-RMについては、プリンターと電子帳票システムのベンダーによる推奨が決め手となったのである。
メインフレーム時代の運用ノウハウがオープン系にも活かせた
採用が決まったA-AUTO for UNIXとBSP-RMは2005年末に大鵬薬品に納入され、TRPのテスト段階から稼働を開始した。
A-AUTO for UNIXが組み込まれた運用管理サーバーはクラスター構成になっており、データベースサーバーや業務サーバーで実行されるバッチジョブのスケジューリング、キューイング、実行制御を行う仕組みである(図1参照)。また、メインフレーム側のA-AUTOとは業務アプリケーション連携(EAI)サーバーを介して連携し、データ交換に伴うバッチジョブの起動などを実現している。
一方、帳票をセンタープリンターや電子帳票システムに出力して配布する処理は、メインフレーム側のA-SPOOLとオープン系側のBSP-RMのどちらからも行えるようになっている。A-SPOOLに登録されている配布情報はBSP-RMでもそのまま使える為、設定作業を重複して行う必要はなかった。
日常の運用管理での使い勝手について、大西氏は「A-AUTOからA-AUTOへの移行でしたから、オープン系になっても運用形態はほとんど変わっていません」と語りる。また、メインフレーム版A-AUTO用に社内で開発していた無人運用ツールをオープン系に載せ替えた結果、運用工数もメインフレームと同程度に抑えることができた。
間接的ではあるが、A-AUTO for UNIXとBSP-RMの導入は経営管理面でも一定の効果をもたらしている。「TRPは経営指標の可視化を目的としたシステムですから、それがオープン系で稼働したことにより、経営層は会社の状況を正確かつ迅速に把握できるようになりました」(榎本氏)。
さらに、2009年1月にTIPが本稼働を迎えると販売・物流業務の処理フローがスリム化され、データベースの一元化とコード体系の整理も一段落する。この時点でIT基盤はオープン系に一本化されので、ダウンサイジングによるコスト圧縮の効果も所期の目標通りに得られることであろう。
「オープン系への移行そのものは無事に完了しそうですが、その先には、日々のシステム運用が待ちかまえています。BSPには、オープン系を運用するための幅広いアドバイスなども期待しています」と、榎本氏。BSPの運用管理ツールは、製薬企業における業務改革にも役立っている。
図1:システム構成図
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