- 2007/01/31 掲載
ERP導入で企業を強くする[第1回/全3回]
~中堅中小企業のERP導入実践シナリオ
コスモコンサルティング 代表 ・ITコーディネータ ・名古屋ソフトウェアセンター ERPアドバイザー ・独立行政法人中小企業 基盤整備機構 IT推進アドバイザー 畠山忠彦氏 |
自分の会社で今何が起きているのか?中堅中小企業といえども経営者がすべての事業、すべての業務を把握することは不可能である。今日受注がいくらあったのか、納期は守れているのか、在庫はスムーズに回転しているか、回収は滞っていないか?顧客クレームが増えていないか等々、経営者が必要とする情報は多岐にわたる。
経営情報の収集が迅速かつ的確に出来れば、多くの経営者はまず正しい判断と指示が出来る筈だ。いかに精度の高い情報を素早く集められるかどうかが今日の経営の重要課題といっても過言ではない。情報を集められる経営者とそうでない経営者の差は大きい。ERPは経営者にとって経営をスコープするための道具であり、経営者の心強い味方となる。
ERPとERPパッケージシステムの定義
ERPはEnterprise Resource Planningの略であり、直訳すれば「経営資源計画」となり、企業が持っている経営資源(人・物・金・情報)を統合的に管理することにより最適な資源配分をして最大の経営効果を発揮するための手法である。ERPパッケージシステムとはこの手法を実践するためのシステムであり、統合型/業務横断型のシステム構造を持ち、あらゆる業務(システム)から情報を集中させることにより経営(Planning)に必要な情報提供を可能とする経営者のためのシステムを指す。本文ではERPパッケージシステムを以下「ERPシステム」と表記する。
ERPシステムの特徴
1 販売、物流、生産、購買、在庫、人事、会計などの基幹業務がカバーされ、各業務の取引データが統合化した大福帳型のデータベース構造を有する。業務横断/統合型構造により、各業務の取引がタイムラグ無く経営情報に反映される特徴をもつ。本日の販売、生産、購買の取引データが即日に会計システムの総勘定元帳で認識され、顧客別、品目別、事業別等の収益分析のうえにリアルタイムに反映される(全ての取引データがリアルタイムに集積される)。
2 業務間のデータの整合性が常に保たれ、売上の訂正、キャンセルデータも即刻統合データベースに反映される。これにより所謂「営経乖離」などの不整合が発生しない仕組みをもつ。従来の個別システムでは、生産管理システムで把握する製造原価と会計システムが捉える製造原価とのズレが往々にしてあり、経営者はどちらを信用すればよいか悩まされる。しかし、ERPシステムでは業務間の整合性が保たれ、数値は唯一のものとなる。
3 ERPシステムにはビジネスモデルをベースとした標準テンプレートが用意され、テンプレートに合わせて自社の業務を改革・改善することが可能となっている。従来型のシステムのように自社に合わせてシステムをカスタマイズするのではなく、業務をシステムに合わせる手法をとる。ERPシステムが標準とするビジネスプロセスはベストプラクティスであり、業務をシステムに合わせることで業務そのものを変革することができるのがうたい文句である(これにはいささか問題もあり、後述する)。
4 ERPシステムでは各種の分析機能を持ち、統合データベースから様々な切り口での経営分析が可能。ERPシステムが持つドリルダウン/トレーサビリティ機能は経営者にとって最も有用な機能と言える。まず会社全体のなかから異常点、特異点を発見し、さらにその発生源(エリア、顧客、品目、社員)を追跡して原因を検証し、的確な対策、対応を指示することができるのがERPシステムの得意技である。例えば[全社の利益率が前月に比べて低いことを発見する]→[営業所別収益を見るとA営業所の収益率低下が顕著であることを確認]→[A営業所の品目別収支構成を見ると主力製品Cの収益低下を確認(ここまでERPシステムで把握)]→[競合他社の低価格戦略によりシェア維持のために大幅なディスカウントを余儀なくされていることが判明]→[コストダウン対策を製造部、購買部へ要請する]早く「痛み」を見つければ、早く治療することができる。(図1)
図1:ドリルダウンとトレーサビリティの機能
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