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昨今、多くの組織がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、さまざまなデジタルツールを導入している。だが、せっかく採用したツールが組織内で定着しないという声も聞かれる。ガートナーの調査では、「従業員は平均11種のアプリケーションを利用しているが、上手く使いこなせないために年間平均1カ月もの時間を浪費している」ことが明らかになった。ユーザーがより快適にデジタルツールを使いこなすカギとなる「DAP」とは何か、ガートナーのシニア ディレクター/アナリストのステファン・エモット氏が、同社の調査結果を踏まえて解説する。
従業員のやる気喪失を招く「デジタルフリクション」
まず、エモット氏は「現在、多くの従業員は業務でもプライベートでも豊富なテクノロジーを利用できます」と語り、ガートナーが実施した調査結果を示した。
「従業員は平均11種のアプリケーションを利用しています。その一方で、66%の従業員が、雇用主が提供する情報技術を利用するうえで、デジタルフリクション(摩擦)が一般的な障害になっていると回答しています」(エモット氏)
デジタルフリクションとは、従業員が組織から提供されたアプリケーションを使用する際に直面する一連の課題を指す。
「従業員が高いデジタルフリクションに直面した場合、従業員のやる気は失われます。従来のユーザーインターフェース(UI)よりは使いやすくなったとは言われていますが、ビジネスのプロセスは依然として複雑な状況です」(エモット氏)
「年間1カ月以上がムダ」になっている悲惨な現実
ガートナーでは、デジタルを前提としたワークプレースにおける人材投資を企業戦略上の重要項目と位置付けている。そして、魅力的で柔軟性の高い職場環境を活用して従業員の「デジタルデクステリティ」を高める必要性を説いてきた。
「デジタルデクステリティとは、ビジネス成果を向上させるためにテクノロジーを活用する能力と意欲のことで、DXを加速させるものです」(エモット氏)
同社の調査では「デジタルデクステリティの高い従業員は、中位レベルの従業員よりも3.3倍ものデジタルビジネスの成果を上げる可能性が高い」と示されている。
ただ、従業員は新しいソフトウェアに苦戦している現実があるという。今回の調査では、2/3以上の従業員が不満や困惑、消耗、不愉快という否定的な感情をあらわにしていることが明らかになった。
「デジタルフリクションが原因で、年間平均1カ月もの時間が浪費されています」(エモット氏)
また、同氏はガートナーの調査では「回答者の59%が年間100時間以上ムダにしていると感じている」という結果があることを示し、「世界的なパンデミックの発生以降、多くの組織にとって重要な関心事は、職場のアプリケーションに満足している人材は現在の職務でも別の職務でも組織内にとどまり、成長する可能性が1.6倍高くなることです」と説明する。
「テクノロジーは変化しなければならないが、その結果、デジタルフリクションや離職が生じます。『デジタルアドプションプラットフォーム』こそが、デジタルフリクションを減らし、従業員のエンゲージメントを向上させることが可能です」(エモット氏)
デジタルアドプションプラットフォーム(DAP:Digital Adoption Platform)とは、組織のビジネスプロセスや新しいアプリケーションにガイドを提供する基盤を指す。同氏によると、テクノロジーへの適応力を高めてエンゲージメントの向上を可能にするものだという。
【次ページ】DAPが組織にもたらす4つの重要なポイント
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