連載:Copilot for Microsoft 365で変わる仕事術
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2023年はChatGPTなどに代表される生成AIの認知度が急速に高まり、業務に取り入れようと試行錯誤を始める企業も増えました。中でも生成AIに投資を続けているのがマイクロソフトです。11月1日からMicrosoft 365(Officeアプリ関連製品群)に、AIを活用した新サービスである「Microsoft 365 Copilot」が提供されると発表されました(なおWindows 11向けに提供されるWindows Copilotは9月26日から提供されます)。期待が高まっているMicrosoft 365 Copilotですが、一体どういったものなのでしょうか。また、月額30ドルのライセンスを追加で支払う価値はどこにあるのでしょうか。
サービス名から読み解く「マイクロソフトの狙い」
ここ数年のマイクロソフトが提供するサービス名の特徴として、機能や特徴をそのまま名前にする傾向があります。Microsoft Teamsもその代表例のひとつです。業務のなかで「チーム」で利用するからTeamsというサービス名になっています。これはわかりやすくもある反面、関連情報をネット検索する場合にキーワードで探しづらいという難点もあります。
さて、Microsoft 365 CopilotのCopilotは、日本語訳で副操縦士と訳されることがあります。英語では「Co-Pilot」と区切って読むことができ、操縦士である「Pilot」に、「一緒に」や「共に」を意味する接頭語の「Co」を付けたものです。
Microsoft 365 Copilotも、アシスタントや秘書などではなく、もう一人の操縦士「Co-Pilot」と名前を付けられたところにサービスの狙いや意思を感じます。Microsoft 365 Copilotは、私たちの業務をちょっと便利に助けてくれるだけではなく、一緒になって目的を達成するために協力しあうパートナーにしたいのではないでしょうか。
実際に、Microsoftが提供するCopilotは、さまざまな場所でユーザーのパートナーとなりえます。特に、Microsoft 365 Copilotでは、Teamsのほか、WordやExcel、PowerPoint、Outlookなど、Office製品に組み込まれて提供されるのが特徴です。
そしてそれぞれのCopilotは、WordであればWordの作業を、ExcelであればExcelの作業を、ユーザーと一緒になって行ってくれるように最適化されています。
パートナーは互いの長所を生かし短所を補いながら協力しあい、達成すべき同じ目的に向かっていきます。AIが得意なことは、人では無理な大量のデータを扱うことができる点です。私たちの業務では、パソコンやスマートフォン、タブレットで行う業務が増えたと共に、そこで生み出されるデータや情報も増え続けています。
社内にある情報をすべて把握できている人はもはやいないはずです。自分が所属している部署であっても、そこで共有されている情報をすべて知って活用できている人はいないのではないでしょうか。AIはそうした大量の情報を生かして、私たちの業務を支援しようとしてくれます。
一方で短所となるのは、AIは間違った情報や不十分な情報を返してしまうことがある点です。現在においては、その正しさの判断は人の役割です。人がAIからの情報を見てそれを採用すべきかを判断し、その情報を実際の業務に活用していく必要があります。
これはマイクロソフトのCopilotのデモでも機能として表現されています。Copilotが回答し生成した情報には必ず、人がその情報の採用を判断するボタンが表示されています。
Bing ChatとBing Chat Enterpriseの違い
Microsoft 365 Copilotに関連する技術であり、現在すでにユーザーが利用できるようになっているのは、検索サイトのBingからアクセスできるBing Chatです。Bing Chatは検索やその結果の要約を助けてくれるAIです。それらの回答は、全世界のWeb上に公開されているさまざまな情報を基に行われています。
また、今年の8月には、マイクロソフトは企業向けのBing Chatとして、Bing Chat Enterpriseのプレビュー版を公開しました。Bing Chat Enterpriseは、必要なライセンスを持つユーザーが、BingにMicrosoft 365のアカウントでサインインすることで利用できます。
Bing ChatとBing Chat Enterpriseの大きな違いは、機密情報が含む可能性のあるユーザーやAIとの会話データの保護に関する点です。Bing Chat Enterpriseについては公式なドキュメントの中で、ユーザーとの会話を保持せず、言語モデルのトレーニングにも利用しないと書かれています。
そのためユーザーは、チャット履歴の機能も利用できません。これは企業利用においては重要な観点であり、意図しない情報漏えいを防ぐことにつながります。
【次ページ】Copilotは「Pilot」の能力を超えられるのか
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