• 2006/05/09 掲載

【連載】ITと企業戦略の関係を考える[第2回/全5回](3/3)

ITはコモディティ化しているのか?

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ハードウェアのコモディティ化

 ITの中でハードウェアは、すでにコモディティ化し、低価格化していることについては、誰にも異論はないだろう。カーは論文の中で、マイクロプロセッサの処理能力あたりのコストを例としてあげている。1978年に1MIPSあたりのコストは480ドルであったが、85年には50ドルに、95年には4ドルまで低下している。ストレージも同様に価格低下が進んでいる。1956年に1MBのストレージは1万ドルであったが、現在、1万ドルもあれば、40GBのハードディスク装置を搭載したPCを20台以上買うことができる。マイクロプロセッサやストレージだけでなく、メモリーや液晶ディスプレイなどPC(パーソナル・コンピュータ)の構成部品の価格は劇的に下がっている。

 こうした構成部品の価格低下に加えて、IBM互換のPCは、そのアーキテクチャがオープン・モジュールであったため、PCは完全にコモディティ化してしまった。そしてさらに、Windows NT系のOS(Windows 2000, Windows XP)やLinux, FreeBSD/NetBSDなどのUnix系のOSなどIAサーバー用OSの登場によって、サーバーも急速にコモディティ化している。ここでは詳述しないが、同様にストレージも、ハイエンドのルーターを除くネットワーク機器もコモディティ化が進んでいるとカーは指摘している。


ソフトウェアのコモディティ化

 問題は、ソフトウェアがコモディティ化しているかどうかである。もちろん、カーはソフトウェアもコモディティ化していると主張しているのだが、カーの論文に異議を唱える専門家は少なくない。彼らは、ソフトウェアは人類の知性を具象化したものであり、コモディティ化することはないと考えているからである。これに対してカーはその著書の中で、確かにソフトウェアはハードウェアとは異なり無限の可能性を持っているが、それは抽象的なレベルの話であり、現実にはソフトウェアはパッケージ・ソフトウェアとして販売されていると反論している。

 つまりビジネスの世界では、ソフトウェアは金銭で購入できる商品の一つにすぎない。さらにソフトウェアは開発には膨大なコストが必要なことがあるが、再生産はきわめて容易である。ソフトウェアは一度開発してしまえば、その再生産と流通に要するコストはほとんどゼロである。つまり、ソフトウェアの方がより共有することによるメリットが大きいことが分かる。これはソフトウェアはハードウェアより日用品化しやすいという性質を持っていることを意味している。

 企業には、巨額の費用をかけて独自のソフトウェアを開発するという選択肢も残されているが、ソフトウェアを共有することによってコストを節約した方が、ソフトウェアの独自性を維持するよりもメリットは大きい。実際にERPやSCMなどのパッケージ・ソフトウェアの利用が増えているのが、ソフトウェアがコモディティ化しているなによりの証明であるとカーは主張している。

 ITがコモディティ化しているというカーの説をご理解いただけただろうか。さて、次回はコモディティ化より深刻な「オーバーシューティング」という問題を取り上げよう。

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