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  • 【連載】ITと企業戦略の関係を考える[第2回/全5回]

  • 2006/05/09 掲載

【連載】ITと企業戦略の関係を考える[第2回/全5回]

ITはコモディティ化しているのか?

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 第1回では、ニコラス・G・カー(Nicholas G. Carr)が”IT Doesn’t Matter”( ハーバード・ビジネス・レビュー2003年5月号に掲載)で伝えたかったことは、「ITは、もはや企業にとって持続的な競争優位の源泉ではなくなっている」ということであり、それは「ITが電話や電力、鉄道などの基盤的技術と同じように技術的な成熟にあわせてコモディティ(日用品のように誰でも容易に入手できるもの)になりつつあるから」と考えていることをお伝えした。では、本当にITはコモディティ化しているのだろうか。
【知識・知財】富士通総研 前川徹氏

1978年 3月、名古屋工業大学情報工学科卒、
同年に通産省に入省、機械情報産業局情報政策企画室長、
JETRO New York センター産業用電子機器部長、
情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンター所長、
早稲田大学 大学院 国際情報通信研究科客員教授などを経て
2003年9月から株式会社 富士通総研 経済研究所主任研究員。

おもな著書として、『ネットバブルの向こう側 ECビジネスの未来戦略』
『ソフトウェア最前線』(ともに(株)アスペクト)などがある。



プロプライエトリな技術と基盤的技術

 ”IT Doesn’t Matter”の著者であるニコラス・G・カー(Nicholas G. Carr)は、技術を「プロプライエトリな技術」と「基盤的技術」に区分している。プロプライエトリ(proprietary)とは「私有財産として所有される」という意味であり、プロプライエトリな技術とは、ある企業によって占有される独自の技術のことである。

 一方、基盤的技術とは、広く社会で共有される技術である。たとえば、かつての大型汎用機(メインフレーム)やMacintoshを構成している要素の多くはプロプライエトリな技術でできており、鉄道や電力は基盤的技術で構築されている。

 仮にある企業が鉄道を建設し運営する中核的な技術を独占的に保有していたとすれば、鉄道が生み出す便益は、現実に存在しているオープンな鉄道網から得られる便益よりはるかに小さいものとなっていただろう。電力や電話も鉄道と同じように、その技術が広く共有された方が社会的な価値は大きくなる。

 基盤的技術は、その技術的な特徴と経済的な特性から広く共有されるものとなる。もちろん、基盤的技術であっても、その黎明期には特定の企業によって保有される技術で成り立っている。しかし、鉄道や電力の歴史をみれば分かるように、その技術の利用が広まるにつれ、共通化が進み、プロプライエトリな技術は姿を消すことになる。


標準化とプロプライエトリな技術

 プロプライエトリな技術とは、標準化された技術だと考えてよいかもしれない。ただし、この場合、標準化された技術とは、公的な規格となった技術ではなく、技術の仕様、特にインタフェース情報が公開され、業界内で広く利用されるようになったデファクト・スタンダード(事実上の標準)も含むと考える必要があるだろう。

 つまり、プロプライエトリな技術と基盤的技術の違いは、その技術の所有にあるのではなく、その業界内で広く利用されているかどうかにあると考えた方が分かりやすいし、カーの論理展開の中では正しいように思われる。

 こうした標準化は技術そのものだけではなく、その技術の利用方法にまで広がっていくと、カーは指摘している。その事例としてカーは、電力利用の事例を挙げている。電力の利用が始まったばかりの頃は建物ができた後で電気配線を行いコンセントを取り付けていたが、やがて新しい工場が建設される時には、あらかじめ電気配線と数多くのコンセントを設置するようになっていった。これはベスト・プラクティスが広く理解され、模倣されるようになり、技術の利用方法が一種の標準となった事例である。

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