- 2006/04/04 掲載
ビジネスを変革するSOAのすすめ
アクセンチュア白川氏が語る、「ビジネスに生かすSOA」とは?

SOAのとらえ方
SOAの価値は「ビジネスの環境変化に柔軟に対応する」ことだとよく言われるが、多くの場合単に技術論ないしはマーケティング上のフレーズにとどまっているように感じられる。曰く「BPMエンジンでビジネスプロセスを実装すれば、ビジネス環境の変化に応じて柔軟にプロセスを組み替えることができます」 また曰く、「レガシーシステムをWebサービスとして部品化することにより、既存資産を有効活用できます」などである。
これらはある意味事実ではあるが、SOA対応ツールを導入すればすぐさまSOAのメリットを享受できるわけではない。だからといってSOAに取り組むことに意味がないかというと、その逆であると筆者は考える。
2006年3月に開催されたOracle Open Worldでオラクル社のCEOラリー・エリソン氏が、「オラクルはSOAに100%コミットする」と語ったように、各テクノロジベンダのSOAへのコミットメントは堅い。 SOAは単なるブームに終わらず今後の情報システムの基本構造を成すことになることは間違いないと考えられる。数年後には企業システムはSOAに対応していることが当たり前の状況になっているだろう。10年ほど前にインターネットやeコマースの可能性がしきりに取りざたされたが今ではそのような議論さえ起こらない状況であるのに類似している。
つまり、現在SOAに取り組まないことは、将来に向けてのリスクとなり得る。アクセンチュアが2005年に世界数百社のCIOに対して実施した調査によると、平均的には約23%の企業がSOAをビジネスに本格導入することを表明していたが、「ハイパフォーマンス」と定義している企業に絞ってみるとその率は50%に達した。
SOAの活用レベル
SOAの価値は、当然それをどのように活用するかで異なる。下記にSOAの活用レベルを示す。

レベル1はたとえば、従来Javaと.NETをリアルタイム連携させるために使用していたCORBA/COMブリッジなどの複雑な方法を標準的かつシンプルなSOAPに置き換える場合で、若干の生産性の向上が見込めるもののそれ自体がビジネス的なメリットを生み出すものではない。
レベル2はいわゆるEAIのモデルである。EAIツール固有のインタフェースに代えて標準的な接続方式を使用することで、よりシンプルかつ低コストでの統合が可能となり、アプリケーション機能の再利用性が高まる。既存のアプリケーション間接続の状況にもよるが、多くの場合大幅な統合コストの削減を見込 むことができる。
レベル3はSOAにより企業内の情報流通やプロセス連携が最適化された状態である。情報流通の点では、たとえば経営者は、手に入れたタイムリーな分析データを元に、戦略を迅速に見直すことができる。またエンドユーザーは、ビジネスプロセスの進行状況をリアルタイムに把握することで、日々の業務や意思 決定を円滑に遂行できる。顧客や取引先は、状況に応じた情報に即座にアクセスできるようになる。プロセス連携の点では、従来機能や組織の切り口で提供されてきたアプリケーションをエンド・トゥ・エンドのプロセスの観点で再構成し、かつ自動連携させることで大幅な業務の省力化を実現可能である。
レベル4は上記を企業外部に拡張し、外部の企業・組織も含めて全体としてあたかも一つの企業として情報流通やプロセス連携を行う場合である。
レベル5のリアリティ・オンラインは、研究開発部門であるアクセンチュア・テクノロジー・ラボが掲げる次世代のテクノロジー・ビジョンである。リアリティ・オンラインの世界では、センシング機能と通信機能を備えたスマートオブジェクトが連携し合い、イベントの発生から対応までの時差が限りなくゼロに近づく。また、スムーズに蓄積・流通される情報を活用しての個人やビジネスに対するインサイトが大きなビジネス効果を生み出す。このような状況を作り出す一つの技術的基礎として、筆者はSOAによる「ユビキタス」な統合に着目している。
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