- 2005/11/25 掲載
【企業経営で着目したい4つの時代】マーケティング・アンビションの時代(3/4)
嶋口 いい企業の定義が問題にもなりますが、わかりやすくいえば、そうなるでしょう。トヨタ自動車にしてもキヤノンにしても、セブン&アイ・ホールディングスにしても、長い間、変わらず「いい会社」と言われる企業には、たとえそれを明言していなくても、後付けであったとしても、アンビションがあるものです。
――いま、挙げられた企業は、確かに日本を代表する「いい企業」だと思います。しかしむしろ、アンビションがわからない。少なくとも外部に向かって、それを発信していない企業のように感じます。むしろアンビシャスといえば、トヨタよりもホンダなのかなと思ってしまうのですが
嶋口 マーケティングには、大きく言って2つのカテゴリーがあります。経営的マーケティングとマーケットマネジメントです。後者は、ミドルマネジャーが考えるべきマーケティングです。どうやって製品を作るのか、いくらにするか、流通チャネルはどうするかということで、つまり4P(プロダクト、プライス、プレース、プロモーション)を考えるわけです。
私の興味は、特に前者の「経営的マーケティング」にあります。これは、いかに企業を安定的に成長させていくかを考えるというものです。そのためには、必要条件と十分条件がある。必要条件は、日常のビジネスを企業経営の原則に則って、しっかりと行うことに尽きる。これが重要なことは間違いないのですが、これだけでは企業は成長しない。企業が成長するためには、十分条件が必要なのです。堅実な経営計画から時に飛躍するとか、セオドア・レビットが言うように、事業の目的を再定義するとか……。
このときのドライビング・フォースとなるのがアンビションです。ですから確かに、アンビションが出やすい、つまり見えやすい企業は比較的小ぶりな企業になるでしょう。あるいはベンチャー企業などの挑戦者です。トヨタなどのリーディングカンパニーは、それが見えにくい。
しかし、時代の変わり目では違う。変革期になると、いい企業からは、それこそ湯水のようにアンビションが飛び出してくる。トヨタの場合、それがプリウスのようなエコカーや、レクサスに結実している。そういうものを統合するようなアンビションが、トヨタにはあると思う。それがただ、見えにくいだけなのだと思います。
――全体が大きすぎるから、堅実性という衣で覆う必要がある。しかし事業部など、その構成要素に分解していくと、チャレンジング・スピリッツがしっかりと躍動している。そこには確かにアンビションがある。だから、リーディングカンパニーは安定的に強いというわけですね
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