• 2005/10/13 掲載

勝つためのIT投資戦略(2/2)

人気コンサルタントが語るIT投資を成功に結びつけるためのキーポイント

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(2)新規顧客開拓
 競争力のある商品・サービスが提供できても、新たな顧客を開拓できなければ、さらなる発展は難しい。前述のeマーケットプレイスやインターネット上のショッピングモールに参加することで、その販売チャネルは格段に広がる。
 ただし、新たに取引を開始するには、信頼関係が重視されることも多く、商品・サービスの競争力だけでは新規顧客開拓は難しい場合もある。そのハードルを低くするためにも、自社のホームページで、自社製品の特徴や導入事例を紹介することなどにより、相手に信頼に足る取引相手であるとの印象を与えることも可能であろう。

(3)異業種間ネットワークの構築
 競争力のある新規商品を顧客に提供しようとしても、1社だけでその開発から顧客開拓まで行うことは難しい。もし、各分野で競争力のある企業が、共同して商品開発や顧客開拓を行うことができれば、成功確率は高くなるものと思われる。
 このような場合、インターネットを利用することで、空間的・時間的制約なく、コラボレーションすることが可能になる。

(4)社内の情報共有
 社内コミュニケーションの迅速化、効率化には、電子メールや掲示板などグループウェアによる情報共有が有効である。1度に多くの人に連絡できる、文字として残るため確実性が高まる、連絡相手の作業を中断させないなどの利点がある。

(5)社内ナレッジの共用化
 企業の競争力は、最終的には社内のノウハウによる差別化が一番重要になる。なぜなら、今まで述べてきたことは、すべての企業に同じように機会があり、対応が可能であるからである。しかし、社内のノウハウは、その企業の長年の蓄積、あるいは個人的なアイデアにより培った真の差別化要因となる。このようなノウハウ=ナレッジを社員で効率よく共有し、利用していくことが必要である。
 通常、このようなナレッジは、ベテラン社員の頭の中や体得された状態にあり、明文化されていないケースが多い。このような知識を「暗黙知」というが、暗黙知のまま、他人に伝達することは非常に困難である。一方、文章化された知識のことを「形式知」というが、これが各人の暗黙知となって初めて、有効に活用できるようになると言える。もちろん、形式知にできない暗黙知もあるが、暗黙知を体系化、マニュアル化し、形式知として学習可能な形に変え、それを次の人が学習し、暗黙知とするスパイラルを描いていくことで、新たな知識が創造されていくのである。
 この暗黙知から形式知に体系化するナレッジマネージメントのシステムや、形式知から暗黙知にするための教育システムもITを有効活用できる領域である。


■知識創造のスパイラル


IT投資を成功に
結びつけるために


 ITは導入したものの、効果が分からない、利用されないといった事例もある。それは、企業戦略と結びつけず、単に「他社が導入したから」といったような理由で導入したことが原因であることが多い。また、ITの導入を検討する部署と、実際に利用する部署が別々のケースにおいては、導入目的が利用する側に伝わっていない、利用者にとって最適の手段となっていないということが原因のこともある。
 IT導入は“目的”ではなく“手段”であり、さらには最適な手段であるとも限らない。真の目的に応じて、適材適所で採用すべきである。また、IT導入に際しては、強力なリーダーシップのもと、導入目的を全社員に徹底し、確実に利用につなげていく必要がある。

 さらに、競合他社の状況や顧客ニーズなど事業環境は常に変化しているため、ITも絶えず最適化を目指して更新していくべきである。
 このようなITのシステムを、自社ですべて一から構築する必要はない。自社に合ったパッケージソフトを採用すれば十分な場合もあるし、ASPが提供するサービスを利用すれば十分な場合もある。導入コストや管理コスト、更新コストなどを考慮のうえ、最適な選択をしていくことが大切である。

【筆者プロフィール】
中島敏博
interviewee by Toshihiro Nakajima
株式会社野村総合研究所
コンサルティング部門
情報・通信コンサルティング部
上級コンサルタント


●脚注
■CRM(Customer Relationship Management)
営業活動等で得られる顧客情報を収集管理し、経営のあらゆる場面で有効活用する手法のこと。

■CTI(Computer Telephony Integration)
電話とコンピュータで管理された顧客情報などを連動させ、発信番号ごとに着信するオペレータを振り分けたり、着信と同時に顧客情報を表示したり、自動的に発信したりする機能をもつシステム。

■ERP(Enterprise Resource Planning)
企業の経営資源を管理し、将来の計画を立てることで、効率的な経営を行う手法のこと。

■eマーケットプレイス
インターネット上に構築されたB to Bの仮想取引所。

■イントラネット
インターネット技術を用いて構築された社内システム。インターネットエクスプローラー(IE)などのウェブブラウザで利用できる情報共有、出退勤管理、交通費決済、スケジュール管理などのシステム。

■エクストラネット
インターネット技術を用いて構築された社外との情報交換システム。IEなどのウェブブラウザで利用できる商品情報の提供や、受発注や決済などのシステム。


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