- 2025/03/28 掲載
来年度、物価目標達成「目前」を前提に情報発信する局面=3月日銀主な意見
Yoshifumi Takemoto
[東京 28日 ロイター] - 日銀は28日、今月18─19日に開催した金融政策決定会合の「主な意見」を公表し、国内の高水準の賃上げやインフレ圧力などから2%の物価目標実現が「目前」に迫りつつあり、来年度にはこの前提で情報発信する新たな局面に入るとの指摘があったことが分かった。一方で、米関税政策などを巡る日本経済の下振れリスクを懸念する意見もあった。
<今後、果断に対応すべき場面も>
金融政策運営に関しては「経済・物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」とし、「具体的な政策運営は経済・物価の見通しが実現する確度をアップデートしながら適切に判断していく必要がある」との意見が示された。
米政策を注視しつつ、政策金利0.5%という水準の下での経済・物価の反応を見極めて、次の利上げを判断すべき、との意見が出た一方で、不確実性は高まっているが「今後の状況によっては果断に対応すべき場面もあり得る」との指摘もあった。
春闘の集計結果など踏まえると「基調的な物価上昇率も2%に向け順調に上昇している可能性が高い」などの見方も示された。「上下双方向の不確実性がある時に、不確実だから金融緩和を継続するということにはならない」との発言も出た。
物価に関しては「企業の価格転嫁はまだ時間かかっており、価格上昇圧力がしばらく継続する」との見方が示された。ある委員は「高水準の賃上げが実現し、国内要因のインフレ圧力などから、『物価安定の目標』の実現が目前に迫りつつある段階であり、来年度にはこうした前提で情報発信する新たな局面に入る」と指摘した。
「資産価格上昇に伴う期待収益率向上から、市場参加者が実質金利を消費者物価で捉える以上に低位に感じ、緩和効果強まっている可能性がある」とし、「過度な緩和継続期待による金融過熱を避ける観点から、緩和度合いの調整を機動的に行う必要がある」など低金利による金融の過熱リスクを指摘する声もあった。
「農産物の価格高騰は、供給力低下や人件費の上昇など一過性でない要因の影響が大きい」との見方もあった。
<米関税、日本経済に悪影響の可能性>
足元の世界経済については不確実性が高まっているとの意見も複数あった。「米国発の下方リスクは足元急速に強まっており、関税問題の展開次第では、日本の実体経済にまで悪影響を与える可能性が十分にあり、その場合には、利上げのタイミングをより慎重に見極めることが必要」との意見が出た。ある委員は米関税政策を巡る不透明感や中国製品との競争激化などで「日本経済への下押しリスクが高まっている」との懸念を示した上で、「中小企業の業績・投資、賃金・物価動向や米関税政策の影響を入念に確認しつつ金融政策を調整する必要がある」と指摘した。
米国経済については「インフレリスクと景気後退リスクの両方が高まっている」との懸念も表明された。
このほか「米国の連邦準備理事会(FRB)が政策変更を急がないと発信しており、日銀は政策自由度が増した状況」との指摘があった。
日銀の国債買入れの減額計画については「今のところ既存の計画を 大きく変更する必要性は感じないが、2026年4月以降に関しては、より長期的な視点から検討する必要がある」との発言があった。
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