- 2025/03/25 掲載
電力債、3月末で優遇廃止=自由化で問われる資金調達戦略
大手電力会社が、有利な条件で社債を発行できる措置が3月末で廃止される。電力自由化の一環で、新規参入事業者との競争条件を公平にするためだ。電力会社は送配電網や発電所などに巨額の投資を行う必要がある。電力債の優遇廃止後も円滑に資金調達できるか戦略が問われる。
電力債は会社の全資産を担保とする「一般担保」を付けられるため、市場で主流の無担保社債と比べて有利な条件で発行できる。この優遇措置は電力会社の資金調達を後押しし、巨額資金が必要なインフラ整備を円滑に進める効果があった。
一方、2011年の東京電力福島第1原発事故後には、被災者への賠償より社債の返済が優先される仕組みに批判も起きた。電力自由化の流れで20年4月に改正電気事業法が施行され、5年後に優遇措置が廃止されることが決まっていた。
大手電力グループ各社は24年度に、円建ての一般担保付き社債で1兆2871億円、外貨建てで15億ドルを調達。使途は原発の安全対策や再生可能エネルギー開発、送配電網強化などだった。発行額は東京電力パワーグリッドの4300億円を筆頭に、中国電力の1827億円と5億ドル、九州電力の1130億円と5億ドルなどが目立つ。
4月からは、一般担保付きの社債を発行できなくなり、無担保社債に移行する。格付投資情報センターは「強い逆風になるとは想定していないが、実際の投資家の受け止め方などに着目する必要がある」と指摘する。
九電の池辺和弘社長は「投資家向け広報で、われわれは健全だと説明し、金利が上がらないようにする」と市場への情報発信を重視する構えだ。電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)は「資金調達の多様性を拡大していく必要がある」と指摘。脱炭素化に資金使途を限るグリーンボンドなど、さまざまな調達手段を活用して必要な資金を確保していく考えを示した。
【時事通信社】
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