- 2025/01/20 掲載
アングル:米小型株、大統領選後の上昇が帳消しに 金利上昇が逆風
[ニューヨーク 17日 ロイター] - 投資家がトランプ次期米政権下で輝く資産を探す中、共和党の政策から恩恵を享受すると期待された米国株の一角は今のところ低迷している。
米小型株で構成されるラッセル2000株価指数は先週、昨年11月の高値から10%下落して調整局面に入った。これに対しS&P総合500種は同じ期間の下落率が3%弱に過ぎない。
20日に就任するトランプ次期大統領は国内経済の成長を促進する政策を支持すると予想され、これは小型株の魅力を高める要因となる。
だが小型株はここ数週間、激しい逆風に直面している。金利が当初の想定より高止まりすると見込まれているためだ。これにより借り入れコストは押し上げられ、特に中小企業の財務を直撃することになる。
トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズの共同最高投資責任者を務めるキース・ラーナー氏は「成長を促進する政策が増え、経済情勢が改善する局面では理論的には小型株は堅調に推移する傾向がある」と指摘。「経済成長が勢い付けば小型株に好材料となる一方、金利上昇は悪材料になる」と述べ、そうした強弱材料の綱引きになると説明した。
投資家は「トランプ・トレード」が続く余地があるかどうかを探っており、こうした状況下で小型株が注目されている。
昨年11月5日の米大統領選でトランプ氏が勝利して以降、同氏の成長促進政策が株式に幅広く恩恵をもたらすとの見方から株価は大きく上昇した。だが株式市場全体では、その上昇分の一部は失われてしまった。
トランプ・トレードの一部は今なお続いている。トランプ氏を支持する実業家イーロン・マスク氏が率いる電気自動車(EV)大手テスラの株価は昨年11月5日以降で60%余り上昇した。暗号資産(仮想通貨)に対する規制緩和から恩恵を受けるとみられるビットコインは同じ期間に40%強ほど値上がりしている。
これに対しラッセル2000は大統領選翌日に約6%上昇し、11月に終値として3年ぶりの高値を付けたが、現在は大統領選前の水準に戻っている。
今年の利下げ回数が従来の想定より少なくなるという見通しが、小型株に対する市場心理を悪化させている。米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月、2025年のインフレ見通しを上方修正するとともに、想定利下げ幅は縮小した。
米国債利回りは17日までの週に、10年債利回りが1年2カ月ぶりの高水準に達するなど、大きく上昇している。
BMOキャピタル・マネジマントの最高投資責任者、ユングユ・マー氏は、中小企業は債務負担が比較的大きくなる傾向があるため、FRBの利下げが当初の想定より小幅にとどまる方向に修正されたことで、小型株が値上がりするとの期待は「冷や水を浴びせられた」格好だと述べた。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル市場ストラテジスト、サミーア・サマナ氏は、中小企業は大企業よりも国内事業に重点を置く傾向にあるため、トランプ政権下で規制緩和と国内ビジネスの促進が予想されることは、中小企業に恩恵をもたらすはずだと指摘した。
もっともトランプ政権下での中小企業の見通しは、バイデン政権下よりも改善したとはいえ、トランプ氏が表明ていしている関税の引き上げによりサプライチェーン(供給網)が支障を来せば、中小企業に問題を引き起こす恐れがあると説明した。
サマナ氏は「トランプ政権下ではいくつかの好材料もあれば、悪材料もあるだろう」と語った。
S&P総合500種は過去2年間で約50%上昇し、上昇率はラッセル2000の2倍を超えている。小型株の強気派は、小型株が大型株にある程度追い付くことを期待している。
それでも小型株は金利が上昇し続ければ、逆風に見舞われる可能性がある。トゥルーイストのラーナー氏によると、小型株の指数は金利の変動とインフレによる影響を受けやすい金融株と工業株の占める比率が高くなる傾向にある。
ラッセル2000は昨年末時点で金融株と工業株が全体の37%を占めた。これに対しS&P総合500種はこの比率が22%だった。
BMOのマー氏は、トランプ氏の大統領返り咲きは小型株に好機をもたらすと主張。「だが(小型株の)アウトパフォームという投資テーマは多分、好ましい金利環境が整備されるかどうかに左右されるだろう」と語った。
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