- 2024/09/26 掲載
アングル:ECB利下げ、後手に回るリスク 市場はインフレ目標割れを警戒
[26日 ロイター] - ユーロ圏のインフレスワップ市場では、欧州中央銀行(ECB)の利下げが後手に回り、インフレ率が目標の2%を長期にわたって割り込む結果、景気が悪化する恐れがあるとの見方が浮上している。
ダンスケ銀行がロイターの委託で集計したデータによると、スワップ市場はインフレ率が来年1月から持続的にECBの目標を下回ると予想。
これに対し、ECBは現在2.2%のインフレ率が今月、目標を下回る可能性はあるが、その後再び加速し、来年後半に目標に達すると予想している。
MFSインベストメント・マネジメントの債券調査アナリスト、アナリサ・ピアッツァ氏は「市場はECBが後手に回っているリスクがあるとのシグナルを送っている」と指摘。
同氏は、ECBが来年末まで四半期に1回のペースで利下げを続ければ、インフレ率が目標を下回る期間が過度に長期化し、その後の押し上げが難しくなる恐れがあるとの見方を示した。
<経済成長への懸念>
市場ではインフレ率が中銀目標を下回るリスクが世界的に高まっているとの指摘が出ているが、主因は原油価格だ。
北海ブレント原油は今月1バレル=69ドルを割り込み、約3年ぶりの安値を付けた。
もっとも、市場は新型コロナウイルス流行前のような超低インフレを予想しているわけではなく、スワップ市場は今後1年間の平均インフレ率を1.7%と見込んでいる。
ただ重要なのは、市場が予想するインフレ率がECBの経済成長見通しと食い違っていることだ。
アムンディ・インベストメント・インスティテュートの先進国市場戦略責任者ガイ・ステア氏は「市場はECBが経済成長についてやや楽観的だと考えている」と指摘。来年のユーロ圏の経済成長率は1%と、今年の0.8%から加速するものの、ECBの予測である1.3%には届かないとの見方を示した。
<所得は増えるか>
ECBは域内需要が当初の予測を下回っていることを認めているものの、モノの価格のディスインフレが進んでおり、実質所得の増加で消費と経済成長が支えられると分析している。
だが、ユーロ圏の家計貯蓄率は新型コロナ前の水準を上回っており、一部のエコノミストは、消費者信頼感が低迷する中、消費者が貯蓄を取り崩して消費を増やす可能性は低いと指摘。
野村のエコノミストによると、預金者は資産形成を増やしており、消費が増える公算は小さい。
また、賃金上昇率も不安定ではあるが、ECBの予測以上に急激に鈍化している。
エコノミストによると、23日発表の購買担当者景気指数(PMI)でドイツ企業の雇用削減ペースが過去15年(新型コロナ流行時を除く)余りで最高だったことも懸念要因だ。
バークレイズのユーロ金利戦略責任者、ロハン・カナ氏は「成長全般の弱さを踏まえると、サービスインフレが粘着的で忍耐が必要だという主張をECBがいつまで維持できるか、疑問が残る」とし、「そうした主張を長期にわたって維持すれば、その分だけ景気が悪化し、大幅利下げを迫られる可能性がある」と述べた。
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