- 2024/09/20 掲載
アングル:中国、成長目標達成へ刺激策強化へ 「バズーカ」は期待できず
[北京 19日 ロイター] - 中国の政策当局は困難になりつつある今年の成長目標を達成するために景気刺激策を打ち出す可能性が高く、根強いデフレ圧力と闘うために、需要押し上げに重点を置く公算が大きいとアナリストや政策顧問は予想している。
政府の統計によると、中国経済は8月に大きく減速しており、さらなる景気刺激策への期待が高まっている。習近平国家主席は5%前後の成長目標の実現に向けて取り組むよう求めた。
しかしインフラ支出によって成長を押し上げようとすれば債務リスクを悪化させる。また需要が低迷する中での過剰な国内投資はデフレ圧力を助長する。物価はすでに下落しており、企業はコスト削減のために賃下げや解雇を余儀なくされている。
ある政策アドバイザーは「デフレ対策に効果的な財政政策を強化すると同時に、金融政策を一段と調整して緩和的な姿勢を維持する必要がある」と語った。
米連邦準備理事会(FRB)が18日に利下げを発表し緩和サイクルが始まったことで、中国人民銀行(中央銀行)が金利と銀行の預金準備率を引き下げる余地が広がった。アナリストは人民銀が住宅所有者を支援するため、既存の住宅ローンの金利を引き下げる可能性があるとの見方を示している。
当局はさらに支出を増やす可能性もある。地方政府は主要プロジェクトの建設資金を調達するために債券の発行を加速させており、中央政府も主要な戦略的部門を支援するために債券発行を増やしている。
当局は財政刺激策と金融緩和を組み合わせて成長を促進する狙いかもしれないが、7月に開かれた中国共産党の重要会議では、供給面により重点を置くことが再確認された。これは弱い消費者需要と深刻化するデフレリスクに対処するための強力な措置が当面は期待できないことを示唆している。
中国政策科学研究会の経済政策委員会で副主任を務める徐洪才氏は「(当局は)成長率の低下を受け入れたくないため、取り組みを強化するだろう。だが強力な景気刺激策は期待できそうにない」と語った。
<厳しい成長目標の達成>
2024年の経済成長目標は5%前後と一定の幅を持たせているが、過去数カ月の成長鈍化を背景に、一部の金融機関はこれを下回る水準へ予想を引き下げた。
中国がこれまで成長目標を達成できなかったことはほとんどない。最後に未達となったのは22年で、コロナ禍の影響で約5.5%の目標に対し3%にとどまった。
ANZの中国担当シニアストラテジスト、Xing Zhaopeng氏は「さらなる刺激策が緊急に必要だ」とし、「政策の焦点は供給から需要へとシフトしつつあるようだ。家計の需要と公共部門の消費に照準を合わせた大規模な刺激策が打ち出されるだろう」との見方を示した。
モルガン・スタンレーのアナリストは、政府が医療、教育、公共住宅などの社会保障関連の支出を増やし、これにより将来に備えた民間貯蓄の一部が消費に向かうと予想した。
ANZは住宅ローン金利の引き下げや住宅・消費財の下取りを促進する取り組みが刺激策に含まれると見込んでいる。これらにより国内総生産(GDP)は0.2%ポイント押し上げられるが、24年の成長率は4.9%としている。
中国では商品・サービス価格の最も幅広い指標であるGDPデフレーターが5四半期連続で低下しており、1999年以来最長のデフレ局面が続いている。
生産者物価の下落が深刻化し、消費者物価の伸びが鈍いことから、GDPデフレーターは第3・四半期もマイナスになると予想されている。
雇用と所得が不安定な状況で消費が急回復するかどうかは疑問だ。
ソシエテ・ジェネラルのアナリストはメモで、「景気がデフレスパイラルから脱却するには、特に地方政府の債務削減圧力を緩和する財政面で一段の取り組みが必要だ」と指摘した。
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