- 2024/09/19 掲載
アングル:FRB大幅利下げ、米市場の反応限定的 今後の相場変動を警戒
[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は18日に0.5%の大幅利下げに踏み切ったが、この日の米国市場の反応はおおむね限定的だった。ただ、市場関係者はボラティリティーが今後高まるリスクを指摘している。
市場では利下げ発表後に株高・ドル安が進んだが、勢いは続かなかった。一方、長期金利は上昇しており、一部の投資家はさらなる急上昇のリスクに言及している。
アネックス・ウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「この平穏は長くは続かないと思う」と指摘。株式市場が終盤に下げに転じており、「明確な方向性を示すデータが得られない限り」株安が進む可能性があると述べた。
同氏は19日の新規失業保険申請件数など今後のデータに注目が集まるとし、「FRBは明らかに遅れを取り戻そうとしている。今回の利下げを通じて、無駄にした時間を取り戻そうとしている」と語った。
大幅利下げが他の市場に波及効果を及ぼすことも考えられる。
コーペイのチーフ・マーケット・ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は為替市場について「今後数時間はリスクが高まる恐れがある。他の国で金利の先行きに対する見方が固まるにつれてトレーダーが急激な荒波にさらされる」とし、「ポジション調整が進む間は余震が続くだろう」と述べた。
<大きな反応見られず>
オプション分析サービスのORATSによると、株式オプション市場はS&P総合500種指数が上下1.1%前後変動すると予想していたが、18日の同指数は高値から押し戻され8日ぶりに反落し、0.29%安で引けた。
カーソン・グループのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ソヌ・バルギース氏は、終値ベースで市場に目立った反応がなかった理由として過去数日間の値動きを挙げる。
小型株で構成するラッセル2000指数は前日までの5営業日で5%上昇。ドルは0.7%値下がりしていた。
メリル・アンド・バンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンクの債券戦略責任者マット・ディチョク氏は「『うわさで買って事実で売る』というのは決まり文句だが、今回はそのようなことが起きた」と指摘。
18日のドル指数は当初下落したものの、その後上昇に転じ0.1%高の100.981となった。
ブランディワイン・グローバルのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「今回の政策変更はほぼ予告されていたため、金融市場に大きな動きは出ていない」との見方を示した。
<債券市場は反応>
だが、債券市場では大きな値動きが見られた。10年国債利回りは前日比で7ベーシスポイント(bp)急伸。2年債と10年債の利回り格差は利下げ発表後に2022年7月以降で最大となり、投資家が長期的に物価上昇と景気拡大を見込んでいることを浮き彫りにした。
国債利回りは数日前に23年半ば以来の水準に急低下していた。
エバーコアISIのシニアマネジングディレクター、ジュリアン・エマニュエル氏は、利回り上昇に備えたポジショニングを推奨。FRBによるインフレ抑制の進展ペースが鈍化もしくは停滞する可能性があると述べた。
小型株は利下げ発表直後に反発したものの、横ばいで終了。ラッセル2000指数は発表後最初の1分間で1%近く上昇した。LSEGのデータによると、これは同指数の1分間の上昇率としては少なくとも過去3カ月で最大だった。
中小企業は一般に借り入れへの依存度が高く、利下げが実施されれば資金調達コストが減り、利益率と成長の支えになる。
カーソン・グループのチーフマーケットストラテジスト、ライアン・デトリック氏は「特に小型株が急騰したが、これは来年も利下げを続けるというFRBの言葉を市場が信じている証拠だ。小型株の追い風となる可能性がある」と述べた。
だが、ラッセル2000指数の18日終値は0.04%高にとどまった。
FRBのパウエル議長は、米経済の強さを守るため、今回の利下げで「力強いスタート」を切ったと表明したが、大幅利下げを不安視する動きが見られる可能性もある。
野村キャピタル・マネジメントのポートフォリオ運用・クロスアセット戦略責任者マシュー・ロウ氏は「今回のイベントに賭けて買い持ちでこの日を迎えた投資家の間では、利益確定の動きが活発になるだろう。市場は、私たちの知らないどんなことがFRBを不安にさせているのかを見極めようとしており、株価が下落する可能性は十分にある」と述べた。
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