- 2024/09/02 掲載
アングル:日経平均が8月急落分を奪還、「円高耐性」への意識も
[東京 2日 ロイター] - 2日の東京株式市場で日経平均は一時、節目の3万9000円を上回った。8月の株価急落の起点となった7月31日以来、約1カ月で元の水準に戻したことになる。ドル/円が当時に比べ円高寄りに滞留する中での株価の戻りを受け、市場ではデフレ脱却への思惑から「円高耐性」が意識されているとの見方も出ている。
<日経平均とドル/円の動きに乖離>
8月上旬の急落後は、日経平均とドル/円の動きに乖離がみられる。日経平均が7月31日の水準を回復したのに対し、当時、150円台前半にあったドル/円は足元で146円前後で推移し、依然として円高水準にとどまっている。
円安の追い風が弱まる中でも日本株が戻りを試してきた背景として、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト、石黒英之氏は「多少円高になっても、国内で脱デフレのテーマを背景に、経済の拡大で十分カバーできるとの見方があるのではないか」と指摘する。
4―6月期の実質国内総生産(GDP)は堅調な内容が確認され、名目でも607兆円で過去最高を上回った。個人消費が盛り上がりをみせる中で、実質賃金がプラスに転換し、物価上昇と賃金上昇の好循環が意識されている点が、日本株を支えているとの見方だ。
8月上旬の株価急落では、日銀の金融政策決定会合や米連邦公開市場委員会(FOMC)後に円キャリートレードの巻き戻しが生じ、ドル安/円高が急速に進んだことが背景のひとつとなった。「とりわけ、米国のリセッション(景気後退)懸念が急速に浮上し、為替が急激に円高に振れたことが売り圧力につながった」と、三菱UFJアセットマネジメントのチーフファンドマネジャー・石金淳氏は振り返る。
米連邦準備理事会(FRB)の利下げが後手に回ったとの警戒感が市場を覆ったが、その後に公表された米経済指標で底堅い数字が確認されるにつれ、過度な警戒感は徐々に後退してきた。
三井住友トラスト・アセットマネジメントのチーフストラテジスト・上野裕之氏は、FRBが大幅な利下げに踏み切る可能性は低いとみており、ゆるやかな円高進行を見込む。「ゆっくり円高が進む分には、日本経済は耐えられる。円高が進んだとしても企業業績が急速に悪化しない程度であれば大丈夫、という楽観論に傾いてきているのではないか」との見方を示す。
<高値更新にはなお時間>
2日の東京市場では日経平均が節目を回復した後、マイナスに転じる場面もあり、伸び悩みもみられたが「米雇用統計など月初の米経済指標の発表が控えている上、きょうは米市場が休場のため、利益確定売りが上値を抑えるのは自然」(岩井コスモ証券の投資情報センター長、林卓郎氏)との声も聞かれ、目線は上方向にあるようだ。
もっとも、今回の戻りを受け、8月の株価急落が間違いだったのか、戻りが早過ぎるのかは市場も見極めかねている。目先の企業業績をみる上では「円安進行が一服したことで、企業がコスト高分を価格転嫁して値上げできる環境が一巡することも確かで、企業業績への影響は注意してみておかなければならない」(SBI証券の投資調査部長・鈴木英之氏)との声もある。
日本株は順調に水準を戻してきたが、米ダウ工業株30種が最高値を更新する中では出遅れ感も意識されている。日経平均が再び4万2000円台の高値に向けて上昇するためには、国内外の経済の底堅さが継続して確認されるかが重要になりそうだ。
三菱UFJAMの石金氏は、米国株次第な面もあるとした上で、「米国経済のリセッション(景気後退)懸念が再び強まったり、日銀が利上げに前のめりになって円高が進んだりすることがなければ、再び高値を取りにいけるのではないか」と指摘する。
野村AMの石黒氏は、国内の脱デフレが数四半期連続で続き、持続的な経済成長が確認され、多少の円高でも企業業績が良好だと確認されてくれば相場の底堅さが増すとみている。
ただ、11月に控える米大統領選が混戦模様となっており、選挙が近づくと膠着感を強めてくるとの見方から、大きな方向感が出てくるのは大統領選後との見方もある。経済指標や業績の確認を踏まえると「年内の高値更新は難しく、来年の1―3月頃になるのではないか」と、野村AMの石黒氏は話している。
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