- 2024/08/07 掲載
アングル:ディオール、サプライヤーの職場待遇開示守らず ESG認証も期限切れ
[パリ 6日 ロイター] - フランスの高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下のディオールが先月まで、英国の法律で義務付けられているサプライチェーンの労働条件に関する開示を期限通りに行っていなかったことが、ロイターの調べで分かった。また「環境、社会、企業統治(ESG)」に関する第三者認証についても、期限切れの内容をウェブサイトに掲載し続けていた。
英国は2015年制定の「現代奴隷法」により、国内売上高が3600万ポンド(66億4200万円)以上の企業に対し、自社の事業とサプライチェーンにおける強制労働と闘うための世界的対策を詳述した年次報告書をサイト上で公表するよう義務付けている。
しかしロイターの調べによると、ディオールの英国のサイトには7月19日まで、現代の奴隷制に反対する2020年の声明と、既に失効したESG認証が掲載されていた。
ディオールは現在、パリ五輪の主要スポンサーを務めている。しかし7月17日にイタリアの競争当局が、ディオールとイタリアのブランド、アルマーニが職人技に対する責任と社会的責務について消費者に誤解を与えた可能性を調査していると発表し、注目の的となった。当局は、イタリアの複数の請負業者における労働搾取的環境を暴露した司法調査を受けて調べを進めてきた。
これを受けて欧州の資産運用会社大手アムンディなどの投資家はLVMHに対し、サプライヤーの労働者待遇を監視するため、より積極的な措置を講じるよう求めた。これらの投資家がロイターに明らかにした。
ディオールは一部のサプライヤーで発覚した違法慣行を非難し、取引を停止して当局に協力していると説明。アルマーニは「調査の結果、前向きな結果が出る」との自信を示している。
ロイターは7月18日、ディオールに現代奴隷法の遵守状況について問い合わせ、同社はその後、2023年版の声明を開示した。声明には、18日に子会社のクリスチャン・ディオールUKの取締役会で承認されたと記されている。
声明は、クリスチャン・ディオールUKは従業員の現代奴隷制度に対する意識を高め、不正行為が疑われる場合には行動を起こすよう促すための研修コースを計画しているとしている。
8月5日現在、ディオールは2021年と22年の声明も開示していない。同社はこれらに関するロイターの質問に直接回答しなかった。
ノッティンガム大学のライツ・ラボで現代奴隷政策を研究するサラ・ソーントン教授によると、声明文の公表は法律で義務付けられているが、これまで遵守しなかったとして処罰された例はない。一部の議員や権利団体は罰則の導入を求めている。
英内務省は2020年、対象組織の83%が現代奴隷法を遵守していると推定している。
LVMHは7月19日、ロイターへの電子メールで、英国に拠点を置くディオール子会社が「当社の事業とサプライチェーンにおける人権の尊重および、現代奴隷制リスクへの対応に関するグループ全体の手順」を採用していると説明した。
LVMHのジャンジャック・ギオニー最高財務責任者(CFO)は7月23日、アナリストとの電話会見で、イタリアのディオールのサプライヤーにおける労働者搾取疑惑について知らなかったと述べた上で、LVMHは「起きたことについて全責任を負う」と述べた。
<古い認証マーク>
ディオールはまた、7月19日までサステナビリティ(持続可能性)に関するサイトのページに、高級ブランドに特化したESG監査会社ポジティブ・ラグジュアリーによる認証マークを掲載していた。しかしその上には2021年に得た認証である旨が示されていた。
エイミー・ネルソンベネット最高経営責任者(CEO)は7月17日、ロイターに対し、同社は2023年6月に再審査プロセスを始める予定だったが見送ることを決めたため、認証は終了していたと明かした。
ネルソンベネット氏によると、ブランドは再審査を受けないと決定した後90日以内に認証マークを削除する必要がある。ディオールは今年7月に認証マークとそれに付随する声明を削除した。
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