• 2024/08/04 掲載

アングル:EV普及に貢献するフォーミュラE、技術革新をけん引

ロイター

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Beatrice Tridimas

[ロンドン 31日 トムソン・ロイター財団] - 英ロンドンで7月21日に開催された2024年電気自動車(EV)世界シリーズ「フォーミュラE」の最終戦。各車両はレースのスタート時のバッテリー容量が39周を完走するのに必要なレベルの60%に制限され、残りは「回生ブレーキ」の発電で賄った。

最新モデルの電動レーシングカーは電力の半分近くをブレーキ操作からの再生が占め、主催者の国際自動車連盟(FIA)によるとエネルギー効率は過去最高だ。

2014年に始まったフォーミュラEはEV技術の開発を促し、税制優遇措置や価格の引き下げ、車種の増加とともにEVの普及に貢献している。

ジャガーTCSフォーミュラEレーシングチームを率いるジェームス・バークレイ氏によると、実際のレースで学んだことは今後の車両開発のために中核の技術者チームに伝えられる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、EVは昨年世界で販売された自動車のほぼ5台に1台を占め、温室効果ガスの排出実質ゼロの目標を達成する上で重要な役割を担っている。

しかし専門家は、EVは普及に障壁が残っており、経済と人口の拡大に伴う輸送部門の排出量増加を抑えるには力不足だと警告している。

世界銀行の交通経済担当グローバル責任者、セシリア・ブリセノガルメンディア氏は「EVは脱炭素化に欠かせないが、それで十分というわけではない」とくぎを刺した。

<技術のトリクルダウン>

イエール大学とカーネギーメロン大学の研究によると、技術の進歩はEVの市場シェア拡大に寄与している。

今年のフォーミュラEチームは、回生エネルギーの効率性向上に取り組んだ。

日産のフォーミュラEチームの代表、トンマーゾ・ボルペ氏は「回生ブレーキは電動乗用車の航続距離と運転性の向上にも役立つ可能性がある」と語った。

日産が2010年に発売した最初の量産EVのひとつ「リーフ」のバッテリー容量は、同社が2014年にフォーミュラEに参戦して以来、181%も増えている。

ジャガー・ランドローバーも将来的にはレーシングカー用に開発された、より高速で軽量なパワートレイン(駆動装置)を可能にする「シリコン・カーバイド・インバーター」技術を全てのジャガー・ランドローバー車に採用する予定だ。

しかしフォーミュラEレース用に開発された革新的な技術が電動乗用車に「トリクルダウン」するには4年から5年かかると、フォーミュラEのサステナビリティ担当副社長ジュリア・パレ氏は指摘する。

<鍵握る充電設備>

フォーミュラEは技術開発を促進しただけではなく、EVの普及を後押しし、その走破性やスピードといった性能を消費者にアピールした点にも功績がある。

IEAによると、EVの販売台数は過去5年間で急増し、2023年には2018年の6倍強となる1400万台近くに達した。

しかし販売の95%が中国、米国、欧州の3地域に集中。世銀によると、充電インフラの不足と価格の高さのためにグローバル・サウスでの普及は遅れている。

ブリセノガルメンディア氏は「今後直面する最大の問題は、排出量が増えている発展途上国で輸送部門の脱炭素化にどう対処するかだ」と指摘。これらの国で充電インフラと公共交通の電化に投資する必要があると訴えた。

IEAによると、昨年に世界の公共充電設備は40%増加し、急速充電設備が低速充電設備を上回るペースで増えた。

しかしハーバード大学のアシュリー・ヌネス氏によると、人口密集地に暮らす低所得者層にとって充電インフラは依然として障害になっている。「1人1人に充電設備を設けるのは単に不可能だし、住宅が密集している場合はスペースが足りず、なおさら無理だ」という。

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