- 2024/08/04 掲載
アングル:トルコで高まる海外不動産投資熱、国内市場の魅力低下で
[イスタンブール 30日 ロイター] - トルコ国民は伝統的に好んで不動産に投資してきた。だが、国内で物件価格が高騰し、収益率が低下しているほか、規制変更の見通しが浮上するなど不動産市場の魅力が低下しているため、海外志向を強めている。
トルコはエルドアン大統領が進めた低金利政策と通貨リラの下落によりインフレ率が高騰。消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は足元でも70%超に高止まりしており、国民は資産防衛のため不動産や自動車、外貨への投資に走った。
しかし2023年以降は正統的な金融政策に転換し、不動産市場に影響が及び始めた。海外物件への投資熱が高まった背景には、国内不動産市場の先行きを巡る懸念がある。
トルコ国民の間で今人気あるのはモンテネグロ、スペイン、ドバイ、ロンドンなどの物件。一方、国内市場は物件の値上がりや供給不足、高い住宅ローン金利などで、月ベースの住宅販売が過去10年で最低の水準に落ち込んだ。
トルコ中銀のデータによると、海外不動産投資は2021年以降4倍近くに拡大し、昨年20億ドルに達した。専門家の間には、通貨リラの最近の実質的な上昇や国内不動産の値上がりで今年は30億─40億ドルに膨らむとの見方もある。
エネルギー業界で働くトルガさん(56)は「住宅価格はものすごく高いが、投資目的で住宅を所有したい人々からすると家賃は低いままだ」と不満を漏らす。昨年、イスタンブールの物件を売却してロンドンでの住宅購入を決めたのは定期的な外貨収入の確保と投資先の多様化が目的だが、国内の規制が先行き不透明なことも一因だという。
「不動産や所得税、国内規則が不透明だから海外に投資することにした。明日何が起こるか分からない」と将来への不安を口にした。
トルコ国民は何年にもわたりひどいインフレに見舞われていたところに、昨年からは急激な信用収縮が起こり、リラも繰り返し暴落した。
中銀のデータによると、不動産価格の上昇率は2022年から23年にかけてインフレ率をはるかに上回っていたが、最近はペースが鈍化している。2022年にインフレ率が85%まで急上昇したため、政府は賃借人保護のため家賃の値上げに25%の上限を設けたが、大家から数千件の訴訟を起こされ、今月上限が撤廃された。
このような背景からトルコ国民はロンドンの住宅市場への関心を強めていると、ロンドンの不動産コンサルタント会社ユニーク・ロンドンの創業者、アルズ・ウイグン氏は指摘する。国内の物件価格高騰で国民は投資リターン回収期間の短縮化とリスク分散のために海外での投資に動いたという。業界関係者によると、投資回収期間はトルコの約30年に対して、英国やスペインでは同等の住宅で18年未満、モンテネグロでは12年未満だ。
<開発業者も海外に>
需要の高まりを受けてトルコの不動産開発業者も海外での事業展開を模索している。
「トルコの不動産投資は今後5年間、リターンが低迷するだろう。人々が長期投資目的で不動産を購入するとは思えない」と、建設会社フェネルシオグルのアイカン・フェネルシオグル会長は予想した。
海外投資に乗り出した同社は既にスペインで許認可を取得し、秋に着工の予定。スペインの地中海沿岸地域のアリカンテに投資したほか、モンテネグロでも建設に乗り出す予定で、来年はドバイへの投資も計画している。
トルコでは最近、投資目的の住宅購入に新たな税金が課されそうだと報じられているが、これは不動産投資に対する政府の認識の変化を示しているとフェネルシオグル氏は指摘。「政府は国内不動産が投資手段でなくなることを望んでいるのだろう。今後国民はますます海外市場に向かうのではないか」と語った。
トルコ当局は最近の規制変更で短期賃貸用の物件供給のハードルを高め、必要な許可や事務手続きを増やしている。
不動産サービス輸出協会のバイラム・テクチェ会長は、インフレ、不動産価格上昇、不透明な環境が投資家を不安にさせていると指摘。「外国での住宅購入は、かつては高所得者層に見られる特徴だった。しかし今はトルコが非常に不安定なため、中所得者層が資産を別の場所に移したいと考えている」と言う。
PR
PR
PR