- 2024/06/17 掲載
米国債市場参加者、大量発行継続に伴う流動性の悪化を懸念
[ボストン 14日 ロイター] - ボストンで13─14日開催された債券市場参加者の会議「フィックストインカム・リーダーズ・サミット」では、米財務省が財政赤字を賄うため大量の米国債を発行し続けるのに伴い、米債券市場の流動性が悪化することが懸念されるとの声が相次いで聞かれた。
米債券市場の流動性は過去数年にわたり悪化している。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを開始して以降、米国債相場は大きく変動しており、会議のいくつかの討論会でこの問題が話し合われた。
規制当局と財務省は債券市場の取引環境を改善するとともに混乱を回避するため、一連の改革を実施してきた。それでも多くの市場参加者は、2020年3月に新型コロナウイルスのパンデミックを巡る不安がくすぶる中で流動性が急速に悪化したときのような過去の局面で浮き彫りになった脆弱性が、需要が供給を下回る中でボラティリティーが急上昇した際に再び表面化する恐れがあると懸念している。
マーケットアクセスのクリス・コンキャノン最高経営責任者(CEO)は「私は市場の流動性について強く懸念している」と強調。「現在、米国債は利払い費用を賄うために発行されている。一方で流動性を支える市場参加者は増えていない」と述べた。
証券業金融市場協会(SIFMA)のデータによると、2014年に12兆5000億ドルだった米国債市場の規模は今年5月末時点では2倍超の27兆ドルに膨らんだ。米議会予算局(CBO)によると、米連邦政府の債務は2034年までに48兆ドルに膨れ上がる可能性がある。
一方でディーラーの仲介能力は自己資本基準の引き上げにより抑制されている。さらに米国債の利回り曲線は長短金利が大きく逆転しており、銀行にとってはデュレーションの長期化を回避する要因となっている。
MI2パートナーズのパートナー、ハリー・メランドリ氏は「いかなる理由であれ大量に売られる市場では、マーケットメイカーは取引高の増加を手放しでは喜べないだろう。今日、明日の問題というわけではないが、脆弱性が存在している」と語った。
アリゾナ・パートナーズの共同創業者であるジェームズ・フィッシュバック最高投資責任者は、このところ「流動性は良好である」が、政府の国債発行量増加が理由で劇的に悪化するかもしれないと懸念していると話した。
「国債の入札に誰も応札しなかったらどうなるだろうか。それは実際に起こり得る事態であり、そうした局面でこそ流動性が非常に重要になる」と述べた。
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