- 2024/06/13 掲載
焦点:米軟着陸期待は健在、インフレ鈍化で米株に投資妙味か
[ニューヨーク 13日 ロイター] - 12日発表の米物価指標や米連邦準備理事会(FRB)によるインフレ鈍化進展への言及は、今年の米株上昇をけん引してきたソフトランディング(軟着陸)への期待に追い風となった。
FRBが堅調な経済成長を維持しつつインフレを抑制し、最終的に金利を引き下げることができるという軟着陸への期待は、S&P総合500種の最高値更新の主要因になっている。
年初には予想を上回るインフレ指標が相次ぎ、こうしたシナリオに疑問を投げかけたが、12日に発表された5月の消費者物価指数(CPI)は上昇予想に反して前月比変わらずとなった。
また、パウエルFRB議長は同日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、インフレ率は経済に大きな打撃を与えずに低下したとし、この状況は持続可能と発言。同時に、金利を引き下げる前にインフレが鈍化しているという一段の証拠を確認する必要があると改めて述べた。
当局者による最新の金利・経済見通しでは年内1回の25ベーシスポイント(bp)利下げが想定され、前回の3回から減った。
Tロウ・プライスのポートフォリオマネジャー、サウラブ・サド氏は「FRBは2%へのインフレ率抑制に向けた最後の1マイルが長くなると述べているが、市場は依然として軟着陸に向かうまずますの成長と労働市場見通しを信じている」とし、「FRBは大きな景気減速懸念はないとの見方に傾きつつある」と述べた。
軟着陸のシナリオはここ数カ月、市場にとって重要なナラティブ(物語)になっている。
市場は年初時点で150bp以上の利下げを織り込んでいたが、FRBがインフレ再加速のリスクを冒さずに金融政策を緩和するには景気が堅調すぎることが判明すると利下げ観測は後退した。
先物市場が織り込む年内の利下げ幅は12日終盤時点で45bpと、FRB当局者の見通しを上回った。
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「市場は(12日に)明らかに軟着陸の見方を強めたが、FRBはさらに時間が必要だと言っている」とし、「市場が望むのは年内利下げで、忍耐強く待つ必要がある」と語った。
それでも景気は引き続き堅調で、企業収益も予想を上回っている。こうした状況は経済が今のところ高金利に耐えているとの見方を裏付け、投資家の楽観姿勢を支えている。
BMOファミリーオフィスのキャロル・シュライフ最高投資責任者は予想より前向きなCPI統計や、FOMCで大きなサプライズがなかったことを受け、年末まで好調な経済が続くとの見方を維持すると述べた。
その上で「FRBが利下げを開始する局面でも基調的な経済は依然としてかなり好調だろう」とした。同社は米国株を中心に株式を適度にオーバーウエートにすることを推奨している。
インフレ率が低下を続け、FRBが緩和に向かっていることを示す兆候は、米国債利回りを引き続き低下させ、債券に対する株式の投資妙味を高めるほか、借り入れコストを下げる可能性がある。
これまで高金利に圧迫されていた小型株や金融株などを押し上げるとの見方もある。
それでも、FRBが利下げを先送りし過ぎて成長を損なうリスクは残ると、フェデレーテッド・ハーミーズのシニアポートフォリオマネジャー、ドン・エレンバーガー氏は指摘する。
「FRBは望むデータを得つつあるが、同時に板挟み状態にある」とし、「利下げを真に望む一方でデータは不十分で、政策金利を5%以上に維持する期間が長引くほど、何かが壊れる可能性が高まることを恐れている」と述べた。
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