- 2024/06/06 掲載
当面は政策維持が妥当、個人消費のプラス転換を注視=中村日銀委員
Takahiko Wada
[札幌市 6日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は6日、札幌市金融経済懇談会であいさつし、金融政策について、現時点のデータを踏まえると当面は現状の維持が妥当だと述べた。所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるには、実質賃金のプラス転化に加え「可処分所得のしっかりとした増加が必要だ」と指摘。今後の政策運営に当たって、実質個人消費のプラス転換の状況を注意深く確認していくとした。
中村委員によると、2023年は雇用者報酬が前年比1.7%増加したが、家計の購買力を示す可処分所得は社会負担の増加などで0.2%増にとどまった。中村委員は家計の購買力が依然として弱いと指摘。所得税・住民税の定額減税の効果が期待されるものの、貯蓄率低下の巻き戻しや節約志向が高まる可能性もあるとの見方を示した。
中村委員は3月の金融政策決定会合でマイナス金利の解除に反対票を投じ、9人の政策委員の中で最もハト派的とみられている。
あいさつでは、連合の春季労使交渉(春闘)の回答集計結果では賃上げ率が5.2%と33年ぶりの高さとなったものの、主に大企業の集計結果であり今後、中小・中堅企業への波及を確認していくと述べた。
企業の損益分岐点比率について、07年度から22年度にかけて大企業では6割程度まで改善したのに対し、中小企業は9割程度のままだと指摘。足元の賃上げが人手をつなぎとめるための「防衛的賃上げ」との声も少なからず聞かれるとして、「私自身は賃上げの持続性に確信を持てていない」とした。
日銀の4月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)によると、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年度比上昇率の政策委員の予測中央値は25年度、26年度ともに1.9%。中村委員は25年度以降について、家計の貯蓄率低下の巻き戻しや節約志向の高まりなどで個人消費が低迷し、値上げの鎮静化が進むと「2%に届かない可能性がある」との見方を示した。
中村委員は、2%物価目標や持続的な経済成長を達成する「千載一遇のチャンスをつかみかけており、重要な転換点に差し掛かっている」と指摘。中小・中堅企業においても販売価格の引き上げに必要な顧客満足度を高める努力が行われ、「経済構造に前向きの変化が起こっている」などと述べた。
一方で、30年続いた企業のコストカット志向が「わずか2年で一気に変わるとは考えがたい」との見方を示し、物価目標の持続的・安定的な達成のためには「経済の力強い回復への期待を確信に変える経済構造の変化が必要だ」と語った。
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