• 2024/05/27 掲載

焦点:急成長する中国の太陽光発電、送電グリッドの限界が足かせに

ロイター

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Colleen Howe

[北京 22日 ロイター] - 中国の太陽光発電は、部品の圧倒的な低価格と政策面での支援を追い風に、恐ろしいほどのハイペースで成長を遂げた。だが今、その成長は減速しつつある。送電グリッドの限界が次々に露呈し、市場改革によって発電事業者は先行きに不透明感を抱き、太陽光発電に都合の良い屋上スペースも残り少ないからだ。

中国における太陽光発電能力は昨年55%増加した。公式統計とロイターによる試算では2024年1-2月もこの勢いは続いたが、3月に入ると太陽光発電設備の新設が前年同月比で32%減少、過去16カ月で最低となった。

太陽光発電の成長鈍化の背景には、建物屋上のソーラーパネルから送電グリッドに対する余剰電力の供給について制限が厳しくなったこと、そして電力価格の改革により新規の太陽光発電プロジェクトの収益性が悪化していることがある。

複数の予測によれば、中国における今年の太陽光発電設備の建設は、国内の太陽光発電(PV)モジュール製造能力の成長を大きく下回りそうだ。欧州・米国における中国製品に対する風当たりは強まっているものの、中国製ソーラーパネルの輸出が強化されるとの見方が強まっている。

電力需要地の近く、主として建物屋上に設置される分散型太陽光発電が伸び悩んでいる主な理由は、日中に発電される余剰電力を吸収してくれるだけの蓄電設備や送電能力が不足していることだ。

そうなれば、規制当局としても、分散型太陽光発電の急成長をもたらした価格支援をある程度撤廃しようという話になる。

調査会社トリビアム・チャイナのアナリスト、コジモ・リース氏は「今後数年にわたり、これは全ての省が直面する大きな問題になりそうだ。送電グリッドは飽和状態に陥り、インフラ面で対処が追いつかなくなる」と語った。

分散型太陽光発電は昨年の国内太陽光発電全体の42%を占めていたが、これを大規模に採用していた複数の地域が同じ問題に悩まされている。北部の山東省などいくつかの省では特に深刻だ。

国営の中国中央テレビ(CCTV)は、山東省では分散型太陽光発電の最大5-7割が出力を制御されていると伝えた。つまり、グリッド運営事業者が、電力需要とのバランスを維持するため、太陽光発電からの供給分がグリッドに流入するのを止めざるを得ないという意味だ。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国は再生可能エネルギーに対する出力制御を5%以内に納めようとしており、主要電力市場における1.5-4%に見合った水準になっているという。

だが、中国のエネルギー規制当局が昨年、分散型太陽光発電による電力を吸収する余裕について6つの省を対象に調査したところ、5つの省では2024年中の新規プロジェクトに制約を設けざるを得ないことが判明した。

前出のリーズ氏は、山東省と並んで分散型太陽光発電導入の3本柱だった河北省と河南省では、すでに設備導入の「絶対的な崩壊」が生じていると指摘、「この両省は懸念を深めている」と語る。

昨年11月、河南省は事業者と省内の規制担当部署に対し、分散型太陽光発電の「健全な発展」を支えるために、グリッド容量を増やすための行動計画を立案するよう指示した。

中央の計画機関である国家発展改革委員会にファックスでコメントを求めたが、回答は得られなかった。また、河南省と河北省の当局には連絡がつかなかった。中国北部エネルギー規制局はコメントを控えるとし、河南省のエネルギー規制当局者からは回答はなかった。

<分かれる予想>

中国では太陽光発電が急速に普及したおかげで、再生エネルギーに関する目標を何年も前倒しで達成できる目算が立っている。導入済みの太陽光発電量は3月時点で655ギガワット(GW)に達し、第2位の米国(2023年末時点で179GW強)に大差をつけて世界首位となっている。

だが、今年の太陽光発電の導入量の予測には大きなばらつきが見られる。S&Pグローバル・コモディティ・インサイツは、2024年に新規導入される太陽光発電量は昨年の217GWから4%増えると予想。3月には減少したにもかかわらず、第1四半期の成長は予想より堅調だったとしている。一方、ライスタッドのアナリストは6%増加を見込んでいる。

対照的に、中国電力企業連合会(CEC)は、今年の新規導入量は20%減少すると予想し、中国のPVの業界団体は2月に発表した予測の中で12%減少する可能性を示した。

S&Pグローバル・コモディティ・インサイツでクリーンエネルギー技術担当の主任アナリストを務めるホリー・フー氏は、課題として浮上しているのは、グリッド投資が出遅れていること、そして現在進行中の電力市場改革がもたらした不透明感だと述べた。

中国で太陽光発電の急増を促したのは政府による支援だ。これによって関連装置の製造が急拡大し、グローバルな太陽光発電パネルの価格破壊をもたらし、貿易相手国からの反発を引き起こした。

アナリストらは、中国のPVモジュール生産能力が今年は500-600GW相当増加し、60-70%の成長になると予測するが、これは太陽光発電プロジェクトの成長を大幅に上回る。

こうなるとメーカーは欧州、米国といった市場への輸出を増やさざるを得ないが、いずれも太陽光パネルの製造に用いられる太陽電池に対する輸入関税率を25%から50%に引き上げている。

<買い取り価格引き下げの影響は>

これまで再生可能エネルギーの発電事業者は、グリッド運営事業者が発電量のほぼ全量を、石炭指数に連動したレートで買い取ることを保証されてきた。だが3人の業界専門家によれば、この買い取り保証は4月1日に撤廃され、地域によっては前倒しで実施されたという。

こうして、再エネによる電力は、これまでのような優位性のない市場価格で取引されるようになりつつある。

国有の石炭エネルギー・電力企業である神華能源は第1・四半期報告の中で、太陽光による売電価格はメガワット時(MWh)当たり283元(約6130円)と前年同期比34.2%減になったが、石炭発電による売電価格は同406元と2.4%減にとどまったと発表した。

一方で、グリッド運営事業者は出力制御の5%という上限を超えられないか試みており、上海を拠点とするエネルギー関連コンサルタント会社ランタウ・グループのデービッド・フィッシュマン氏は、「せっかく発電したのに買い取ってもらえないかもしれないという、発電プロジェクトのオーナーにとってのリスクが生じている」と指摘した。

国有の大手発電事業者である華能国際電力の場合、第1・四半期の出力制御が昨年同期の3.1%から7.7%に増加したという。ジェフリーズのアナリストが、華能の経営陣による発言として顧客向けノートで明らかにした。

課題は他にもある。永安国富資産管理で研究主任を務めるシー・リーダ氏が指摘するのは、最も開発が容易な拠点におけるプロジェクトはすでにほぼ開発済みだという点だ。まだ利用可能な場所では、屋上の補強が必要、グリッド接続の制約、日照時間の短さといった問題が考えられるという。

「コスト削減が今後も続かなければ、コスト効率の良い投資にはならない」とシー氏は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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