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  • 2022/11/15 掲載

「デジタル免疫システム」「AI TRiSM」「メタバース」ガートナー2023年注目の新技術10

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イノベーション創出に向けた技術トレンドの把握はITリーダーの責務の1つだ。ただし、いくつもの技術が急速に進化する中で、どんな技術に注目すればよいのか見失うことも多い。こうした中、ガートナー ジャパン バイス プレジデント,アナリストの池田武史氏は「2023年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」を発表。「スーパーアプリ」「デジタル免疫システム」「メタバース」「オブザーバビリティの応用」「AI TRiSM」「インダストリ・クラウド・プラットフォーム」など、10の新技術を提示した。
執筆:畑邊 康浩
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ガートナーによる2023年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド
(出典:Gartner(2022年11月))

トレンドのキーワードは「最適化」「拡張」「開拓」

 デジタル技術は猛烈な勢いで進化を続けている。それらを企業経営に取り込み、成果をあげるには、技術そのものに加えて“旬”の見極めも重要だ。たとえ可能性が大きくても、トレンドを見誤っては活用に苦労し、成果にはなかなかつながらない。

 その点を踏まえてガートナーが実施しているのが、今後5年以内にイノベーションをもたらす可能性の高い技術の定点観測だ。ガートナーの池田氏は、「23年度に向けた領域は『最適化』『拡張』『開拓』の3つ」と指摘したうえで、顕在化しつつある10のトレンドを解説した。

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ガートナー ジャパン
バイス プレジデント,アナリスト
池田武史氏

迅速復旧が顧客満足度向上の“攻め”の施策に

 最初の「最適化」に該当するトレンドが、「デジタル免疫システム」「オブザーバビリティの応用」「AI TRiSM(AI Trust,Risk and Security Management(AIの信頼性/リスク/セキュリティマネジメント)」の3つだ。

 「デジタル免疫システム」とは、システムの安定(健康)を損なう各種要因に対応する仕組み(免疫)を作り上げ、耐障害性の向上と復旧の迅速化を目指す取り組みだ。

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「システム可視化」「AI拡張型テスト」「自動修復」などを組み合わせたデジタル免疫システムによる“攻め”のデジタル利用が本格化しつつある
(出典:Gartner(2022年11月))

 「システム可視化」「AI拡張型テスト」「自動修復」などの技術を組み合わせて実現する。注目されるのは、“攻め”への応用の加速だ。今では売上創出に責任を担うデジタル・チームの7割以上がデジタル免疫システムに関して何らかの活動を実施するまでになっているという。

「アメリカン航空ではシステムの矢継ぎ早な拡充と、バグによる障害復旧の迅速化によりオペレーション品質、ひいては顧客満足度の向上につなげています」(池田氏)

 各種システムへのデータ入力と結果とを突き合わせて改善余地を探るのが「オブザーバビリティへの応用」だ。見直しの対象は、システムに組み込まれたAIを含めた多様な判断ロジックだ。海運会社のKlaveness Ship Managementでは、この手法でシステムによる航路決定の最適化を推進。日々、天候が変わる中でのOPEXの削減を達成しているという。

 「AI TRiSM」は、統計処理ではカバーできないプライバシー/倫理面からの判断リスクへの対応や、判断に至ったロジックの可視化を通じて、AIの信頼性を高めるべき活動となる。さまざまな試行錯誤の結果、AIの出力結果を数学的モデルで説明可能なモデルを実現した欧州のAIスタートアップ企業Abzuなどが登場している。

コンポーネント化やポータルでデリバリーを拡張

 次の「拡張」に含まれるトレンドが、「インダストリ・クラウド・プラットフォーム」「プラットフォーム・エンジニアリング」「ワイヤレスの高付加価値化」だ。

 「インダストリ・クラウド・プラットフォーム」とは、特定領域に特化した垂直統合型のクラウド基盤だ。池田氏は現状について、「推進に向けフュージョンチームの組織やコンプライアンス/サステナビリティへの対応など、多様な取り組みが必要です。それだけ壁が高く、提供されているサービスも大半はビジネスの一部しか取り込んでいません」(池田氏)

 ただし、変化の兆しも見え始めている。米国では医療機関向けで垂直統合の動きが本格化。多職種が協働する現場において、職種や業務ごとに用意されたクラウド上のシステム間連携により、従来から課題であった連携時の現場の負担軽減による効率化や、その手間をどこが負うかといったことでの職種間の摩擦の減少などの成果が上がりつつあるという。

 「プラットフォーム・エンジニアリング」は、自社プラットフォームを効率的に整備/拡張するための取り組みだ。「再利用可能なコンポーネント」「開発者ツール」「セルフサービス開発者ポータル」を組み合わせ、クラウドにより複雑化するインフラの自動配備を目指す。

 ポイントは、差別化の肝の部分は新たに開発し、競争優位を獲得することだ。ノルウェー警察ではこの手法によるシステム共通化を通じて、インフラ提供の時間を数時間にまで短縮した。

 「ワイヤレスの高付加価値化」とは、無線を単なる情報伝送ではなく、新たな価値を生む手段として利用することだ。場所を問わずに通信できる無線では、位置情報やユニークIDなどのデータを有線よりも効果的に活用できる。

「無線を窓口にアナログの対象をデジタルツインに引き込むなどの策で、新たな価値創出を目指します。アイデア競争はこれからが本番です」(池田氏)

 イスラエルのスーパーマーケットチェーンShufersalでは、野菜の運搬用のプラスチックコンテナを無線で監視し、生産者から店頭に至るサプライチェーン全体の改善とフードロスの削減に取り組んでいる。取り組みを進めるにあたっては、4G/5GやWi-Fi、Bluetoothなどの規格の中から、用途ごとに最適なものを見極める目の養成も当然必要となる。

【次ページ】多様な対象との関係性を強化するメタバース
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