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- 2022/10/19 掲載
カーボンニュートラルの最難題「トランジション」とは?化石燃料削減が難しすぎるワケ
連載:カーボンニュートラル最前線
なぜ今「カーボンニュートラル」が求められるのか
IPCCは、1990年より「人為的活動が及ぼす地球温暖化への影響についての評価の変化」について分析・報告を行ってきた。第1回報告書(1990年)では、「人為的活動による温室効果ガス排出は気候変化を生じさせる恐れがある」とされていたが、第5次報告書(2013~2014年)においては、「地球温暖化には疑う余地がない。20世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人為的活動の可能性が極めて高い。」という表現に改められ、今日では「産業革命以降の地球の平均気温上昇は人為的活動によって引き起こされたものである」というコンセンサスが確立されている。
その後2018年、IPCCでは、いわゆる「1.5℃特別報告書」についての議論が行われた。この報告書では、2017年時点での人為的な活動による世界全体の平均気温の上昇は約1.0°Cとなっており、このままの傾向で地球温暖化が継続すれば、2030年から2052年の間に気温上昇は1.5°C以上に達する可能性が高いと分析している。
地球温暖化により、平均気温が上昇すれば、海面上昇や干ばつなどによる物理的被害の程度も大きくなる。気温上昇を1.5℃以内にとどめることで、それらの被害は相対的に軽減することが可能となるが、そのためにはCO2を2030年までに約45%削減、2050年前後にはネットゼロにする必要があるとされた(いずれも2010年対比)。これがいわゆる「カーボンニュートラル」である。
その後、EUは2018年11月に打ち出したカーボンニュートラルに関するビジョン「EU長期戦略-A Clean Planet for All」において、「2050年ネットゼロは技術的に達成可能であり、欧州経済にも好影響を与え得る」という見解を示し、グリーンディールなどのさまざまな施策により、2050年カーボンニュートラル達成に向けた動きを加速させていく。
カーボンニュートラル実現に向けた課題は「トランジション」
カーボンニュートラル実現に向けてはさまざまな道筋(経路)が考えられるが、最終的な絵姿にはあまり議論の余地がない。すなわち、1.原子力、再エネ、CCS付火力などのカーボンフリーな電源で電気を賄うとともに可能な限りの電化を進め、2.液体燃料を使用する必要がある熱利用などの産業プロセスにおいては、水素・アンモニア・合成燃料などのカーボンフリー燃料に転換を図り、3.それでもCO2排出が残る航空分野などについては、人々の行動変容によりCO2排出量を最小化するとともに、残余排出についてはCCSや森林吸収などにより「ネットゼロ」化を図る、というものである。
このように、2050年カーボンニュートラルの絵姿は明確であるものの、その実現が難しいのは、カーボンニュートラルへの円滑な「移行(トランジション)」による。 現時点で、誰しもが想像するカーボンフリー電源の代表格としては再エネがあるが、まだその供給力は我々の生活や経済活動を支えるには十分ではなく、変動する出力を補うための技術的な対策も道半ばである。そのため、当面は化石燃料を「賢く」使いつつ、再エネを増やしていくという二枚腰の対応が必要となる。
【次ページ】化石燃料の削減はなぜ一筋縄ではいかないのか
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