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市場の競争環境はますます厳しさを増し、企業はデータとデジタル技術を活用した製品や、サービス・ビジネスモデルの変革によって競争上の優位性を確立させる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現が求められている。帝国データバンクや富士キメラ総研が実施した市場動向調査によると、国内のDX市場は引き続き成長が期待されるものの、企業のDX推進の状況は企業規模、経営層の年齢や創設年数、業種などで大きな差がみられている。この記事では、調査結果を踏まえて、国内DXの実態と今後の成長領域を考察する。
調査結果が示唆、「半数以上がDXに取り組めていない」現状
帝国データバンクは2022年1月19日、「DX推進に関する企業の意識調査」に関する調査結果を公表した。2021年12月~2022年1月に1万769社から有効回答を得た調査では、DXへの理解度とその取り組み状況を尋ねている。調査によると、DXの「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業は、15.7%と、7社に1社程度の割合となった。また、「意味を理解し取り組みたいと思っている」(25.7%)と合わせると、全体の4割の企業が、DXへの取り組みを前向きに捉えている。
一方で、「言葉の意味を理解しているが、取り組んでいない」(31.6%)、「言葉は知っているが意味を理解できない」(13.3%)、「言葉も知らない」(6.4%)などの企業も存在する。それらを合わせると、半数を超える企業でDXへの取り組みが進んでいない現状が浮き彫りとなった。
続いて、企業規模別に考察する。同調査では、中小企業基本法に準拠して全国売上高ランキングデータを加えた「大企業」「中小企業(小規模企業を含む)」「小規模企業」の3つの企業規模区分を用いている。
大企業では「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業の割合が28.6%となっており、全体(15.7%)を大きく上回った。一方、中小企業では13.0%となり、DXへの取り組み状況は、大企業と中小企業の間で15.6ポイントの差となっている。さらに、中小企業の内、小規模企業では8.4%となり1割を下回っている状況だ。
社長年齢や企業年齢がDX推進のカギを握る?
帝国データバンクは2022年3月7日、「DX推進に関する企業の実態」を公表。「DX推進に関する企業の意識調査」と約147万社を収録する企業概要データベース「COSMOS2」を用いて、DX推進に関する企業の実態について分析している。その分析から、DX推進には社長の年齢や企業の年齢によっても大きな差があることがうかがえる。
たとえば、「DXの意味を理解し、取り組んでいる」企業を社長年齢別にみると、最若年層である「39歳以下」が20.1%でトップとなった。これは、全体平均を4.4ポイント上回っている。一方で、社長が70歳以上の企業でDXに取り組んでいる割合は、12.2%で最も低くなった。
帝国データバンクの調べによると、全国の社長平均年齢は60.3歳。社長の年齢が平均よりも若い企業の方が、DXへの取り組みが進んでいるという結果が判明した。
続いて、創業・設立年数別にみてみよう。「DXの意味を理解し、取り組んでいる」企業については、スタートアップ企業を含む「5年未満」が25.0%で最大となり、全体(15.7%)を9.3ポイント上回っている。
企業のDX推進の観点では「社長年齢と企業年齢が若い企業ほど、DX推進が進みやすい環境にある」「社長年齢と企業年齢を経た企業ほど、DX推進が進みにくい環境にある」と言えるだろう。
DX推進に積極的な業種は「金融」「情報サービス」
帝国データバンクの「DX推進に関する企業の実態」調査では、業種別のDXへの取り組み状況もまとめている。その結果によると、業種間での差が顕著に表れている。
「DXの意味を理解し、取り組んでいる」企業を業種別にみると、「ソフト受託開発」や「パッケージソフト」など企業のDXを支援する業種が多く含まれる「情報サービス」が 39.9%でトップとなった。また、「DXの意味を理解し、取り組みたいと思っている」(25.7%)と合わせると「DXに積極的な企業」は65.6%を占める。
また、フィンテックの活用が活発になってきている「金融」業でも「DXに積極的な企業」が66.3%となっており、情報サービス業と同様に全体(41.4%)を20ポイント以上も上回っている。
【次ページ】市場規模・成長率などの観点で、今後注目の業種とは?
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