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  • 2021/04/22 掲載

自動運転に必須のカメラ、写り込んだ人は「個人情報」? クラウドに送信OK?

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ADAS(先進運転支援システム)機能や自動運転機能で用いられるカメラは、周辺の環境を把握する役目と、制御機能の改善のため画像を記録・保存して機械学習に利用する役目がある。学習用データは、これまでシミュレーターやテスト走行で集められたものを使っていたが、近年ではユーザーの走行中画像を収集・保存して機能改善を行う車両が出始めている。画像には周辺の歩行者も映ることになるが、個人情報保護法ではどのような扱いになるのだろうか。
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自動運転のAIカメラによる画像処理と個人情報保護法の関係
(Photo/Getty Images)

本稿の前提と主旨

 議論の前に、本記事の前提と主旨を明確にしておきたい。本記事は、開発元が、市販車両の実走行画像を収集・保存して、自動運転機能の機械学習データとして利用、または関連サービスに利用する場合を想定する。この際に映り込んだ歩行者の画像は個人情報になるのか、その場合どんな注意点があるのか、といった点に注目する。

 したがって、一般的なドライブレコーダーや、衝突被害軽減ブレーキや車線維持機能などで、クラウド連携を必要とせずスタンドアロンで画像認識処理、運転支援制御を行う場合は想定しない。

 現在、市販のドライブレコーダーやADAS(先進運転支援システム)機能に利用されているカメラは、インターネットに接続しないスタンドアロンで動作している。AIなどが搭載されていても、実走行の画像がメーカーのクラウドに送られ、機能改善や自動運転の機械学習データとして利用されることはない。スタンドアロンで動作するADAS機能のAIは、テストコースやシミュレーター、あるいは許可を取ったテスト走行で得られた画像を使って、バッチ処理で学習とチューニングを行っている。

 また、個人情報保護法の視点でこの問題を取り上げるが、個人情報保護のために自動運転や画像認識技術の是非を問う主旨はない。その判断や各自の解釈の参考になる情報を提供することが目的である。執筆にあたっては、個人情報保護委員会、トヨタ、ホンダ等に問い合わせや確認を行っているが、記事内容は、当該委員会や各社の見解や解釈を示すものではない。

防犯カメラやドライブレコーダーはどのような位置づけにあるのか

 機械学習・ディープラーニングなどAI技術による画像処理技術は、自動運転よりも前から広く社会に浸透している。防犯カメラ解析の自動化、顔認証、店舗や施設内の動線の分析、購買パターンの分析、顧客属性ごとのターゲティング広告など、さまざまな用途で活用されている。ドライブレコーダーや自動運転を謳わない安全確認カメラ、自動ブレーキのためのカメラによるスタンドアロン撮影でも活用されている。

 個人情報保護法では、これらの画像でも、個人が特定できる状態ならば個人情報に該当する。個人情報は、情報の利用にかかわらず、取得する時点で利用目的や利用方法などを通知・公表しなければならないとしている。防犯カメラやドライブレコーダーの映像について、仮に、個人が特定できるものを、本来の用途以外(マーケティングやオープンデータなど)に利用したい場合、本人への通知、許諾が必要になるが、これは現実問題として不可能だろう。

 個人情報保護委員会は、これらの解釈や運用についてFAQやガイドラインを出している。わかりやすいのは防犯カメラだ。防犯カメラは、設置目的と利用が防犯目的であることが明らかであり社会的な認知も進んでいる。店舗などは「防犯カメラ作動中」の表示をすれば、撮影に被写体の許諾(この場合、来店者一人ひとりの許諾)は必要ないとされている(個人情報保護法18条4項4号)。

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防犯カメラは、「防犯カメラ作動中」といった表示があれば被写体の許諾は原則不要
(Photo/Getty Images)

 防犯カメラの場合、店舗や施設なら、張り紙やカメラの存在自体で、入場者への周知は比較的明確にしやすい。ドライブレコーダーやADAS機能用車載カメラの撮影も、これに準じた扱いが定着している。撮影は事故前後の短時間で、利用は事故状況の分析または危険状態の検知のためだけに自動的に行われる。社会的受容が成立していると考えられる。

 では、自動運転車両のカメラが、AIの機能強化や学習のために画像をクラウドに送っている場合は、どう考えればよいだろうか。

【次ページ】クラウド連携している自動運転のカメラの場合
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