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- 2021/01/13 掲載
ITコスト管理のポイントをガートナーが解説、オンプレからクラウド移行で何が変わる?
デジタルビジネスがIT財務管理慣行の変化を促進する
デジタルビジネスのニーズは、ますます「変化」を促している。企業のクラウド利用はプライベート、パブリック、ハイブリッド、いずれも急増しており、IaaS、PaaS、SaaSなどのサービスソリューションの選択肢も増えているオンプレミスからクラウドへの移行方法もさまざまだ。Capex(Capital Expenditure=資本支出)からOpex(Operating Expense=運用支出)への会計処理の変化も伴うし、デリバリーモデルもプロジェクトからプロダクトへとアジャイルになっている。
こうしたさまざまな「移行」に伴い、IT財務管理においてコストやリスクだけを意識するのではなく、ビジネス価値の創出を意識しなくてはならなくなった。ガンリー氏は、この変化「後」の世界を「IT財務のニューノーマル」と称し、今後どのような考え方や、企業の方針・ルール策定が必要になるかを説明した。
IT財務のニューノーマルはどのような形態になるか
今までは、システムを購入し、インストールし、資産計上し、耐用年数にわたって減価償却してきた。しかし近年、ユーザーはシステムを所有し資本化するのではなく、Opexとして処理するようになる。コードやプログラムを書き上げるプロジェクト・デリバリーモデルから、プロダクトやプロダクトマネジメントを提供するソフトウェア・デリバリーモデルに移行している。さらに、ソフトウェア開発手法も従来のウォーターフォールから、アジャイルな手法へ向かっている。
「ニューノーマルでは、コストのみを重点的なITの要素として見るのではなく、リスクやビジネス価値・ビジネス成果も同時に検討されるため、その「測定」と「報告」が必要だ。それが経営幹部にとって投資判断の重要な決定要因となるからだ。
複雑なクラウド構成に適したIT財務管理が求められる
企業でのパブリッククラウドの採用や移行は進んでおり、2017年時点ではIT予算のうちクラウドに費やされていたのは平均で5%だったのに対し、2019年時点は10%を占めるようになった。従来のオンプレミスの採用の年平均成長率が2%であるのに対し、クラウドの15%の成長率で伸びており、今後もこの傾向が続くと予想される。従来型のオンプレミスITからクラウドへ移行する際、どのオプションとテクノロジースタックを選ぶかによって、サプライヤーからの提供方法や自社での管理方法が異なってくる。
クラウドレイヤーには複数のサービスがあり、IaaS、PaaS、SaaSといったレイヤーも異なる。ほとんどの企業は単一のサービスを使うのではなくマルチクラウド環境にあり、サービス内容だけでなく価格設定も多様で、「クラウド」とひと口に言うが、その構成・環境は複雑だ。
Opexが増加することで生じる課題
会計の観点では、CapexからOpexへの移行が進んでいる。現在、企業のIT予算の76%をOpexが占めており、その割合は年々1〜2%程度上昇し、これが多くの組織で制約や課題を生んでいる。パブリッククラウドの利用はそのほとんどがOpexであり、Capexを優先する業界にとってはクラウドの利用拡大はすなわちOpexの増加につながり難題となる。リース会計を考慮したり、アジャイル開発を行うことを考えると、すべてのSaaSがOpexであるとは限らない。状況は曖昧で、常に的確に会計処理されているとは限らない。
ここで問題となるのは、経営層が現場への理解がないことによってOpexの資金調達を制限しかねないということだ。
「組織の財務戦略を念頭に、クラウド戦略を明確に理解し、伝達し、管理することが重要です。ここを押さえておけば、組織のDXが途中で資金難に陥ったり、頓挫することはありません」とガンリー氏は話す。
【次ページ】ニューノーマルでのIT財務管理6つの変更点
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