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- 2020/01/22 掲載
スマートホームとは「ひと味違う」、積水ハウスが“課題先進国”日本発で取り組むワケ
#CES2020
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日本では年間7万人が自宅で命を落としている
積水ハウスが提唱するプラットホームハウスとは、非接触型センサーを用いて住宅内の人の心拍数、呼吸数などをモニターし、異常が検知された場合、すぐにオペレーターが連絡、応答がない場合は救急を要請し、遠隔操作で家のドアロックを解除する、というものだ。HED-Netとは「在宅時急性疾患早期対応ネットワーク」のことである。なぜこのようなシステムを提案するに至ったかについて、同社代表取締役社長、仲井嘉浩氏は「脳卒中が日本人の死因の第1位になっている」という現状を挙げた。
脳卒中が起きた場合、最初の4時間30分以内に対応することがその後の存命率に大きく関わる。しかし、誰もいない家の中で突然発作が起こればどう対応すれば良いのか。それを考えた時、家の中での早期発見システムの開発が必要だという結論に達した。
仲井氏はHED-Netと車のエアバッグ、ABS普及を比較し、エアバッグ、ABS普及率が上がるに従って、1992年には年間1万人だった交通事故死亡者数が2011年には4000人にまで減少したという具体的な数値を挙げ、「HED-Netにより家で不幸にも死亡する人の数を減らすことにつなげたい」と語る。
日本での脳卒中による自宅での死亡者数は年間1万5000人と推定される。その他、心疾患、溺死、転倒転落などにより、年間で実に7万人もの人が自宅で命を落としていると推計されている。
HED-Netによる早期発見が可能になれば、かなりの数の人が助かると予想でき、HED-Netが住宅建設のスタンダードになることが目的だという。
ウェアラブルではなく、非接触センサーである理由
非接触型センサーによるHED-Netは積水ハウスが独自に開発し、日本でシステム特許を取得、現在国際特許を申請している技術だ。2020年に社会実装を試験的に行う予定である。なぜ非接触型センサーを選んだのかについては「高齢者の見守りやヘルスケア目的でのカメラやウェアラブルという技術はすでに存在する。しかし、24時間カメラで監視されている、あるいはウェアラブルを装着している、というのはユーザーにとってストレスに感じることも多い。非接触型センサーならば、日頃ユーザーが意識することなくモニタリングが行え、ストレスを軽減させることが可能だ」(仲井氏)という。
重要なのはHED-Net導入による社会コストの削減だという。同社の試算によると、疾病の早期発見により「企業の生産性」「労働損失額」「介護費」「医療費」を含め、年間でおよそ1兆6,900億円が節約できるという。
さらに脳卒中で発見が遅れた場合、一命を取り留めたとしても後遺症に苦しむ可能性があり、これが「隠れ介護」と呼ばれる事態につながる。
親の介護のための離職などは本人の経済状況、そして企業の損失にもつながる。日本は世界一の高齢化社会となっているが、今後この傾向は世界中に広がるため、グローバルな需要が見込まれる。
セブン&アイや西川寝具もパートナーとして参画
HED-Netの今後の導入ロードマップだが、まず2020年にラボでの実装検証、さらに実験棟による導入試験が行われ、その後2021年には試験的に実装した住宅50棟を一般から募集して建設、実際の住宅内でのモニターが始まる。積水ハウスではセンサー設置のための初期費用、月々の使用料を負担し、募集に応じた人の中から50人を選択してHED-Netが実装された住宅を建設する。この試みにはセブン・アンド・アイ・ホールディングス、西川寝具がパートナーとして参画するという。
ところでHED-Net、非接触型センサーはどれほどの精度なのか。これについて同社のプラットホームハウス推進部長、石井正義氏が解説を行った。
非接触型センサーによる感知には、さまざまな障害要因がある。たとえば家庭内のカーテンの揺れ、扇風機やエアコンによる風、また人の動き(寝ていても寝返りなどで同じ場所に同じ姿勢で留まるとは限らない)、布団などの遮蔽(しゃへい)物、また複数人が同じ部屋にいる場合にどのように個々を見分けるのか。ペットなどが同じ部屋にいる場合もあるだろう。
こうした要因があっても正しく人の健康異常を検知するためには、データの取得とそれに伴うアルゴリズムの構築が必要となる。
【次ページ】今後の技術改良で「鬱の検知」も可能に?
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