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  • 2019/10/04 掲載

サッカー岡田監督、ラグビー中竹監督ら議論 どうやって人は一流のリーダーになるのか

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サッカー元日本代表監督の岡田武史氏、早稲田大学ラグビー部 元監督の中竹竜二氏、バスケットプロリーグ(Bリーグ) 千葉ジェッツふなばし 代表取締役会長の島田慎二氏が日本最大級のチームリーダーカンファレンス「PxTX」に登壇。サッカー、ラグビー、バスケでそれぞれ「チーム作り」の最前線に立つ3名が、水戸ホーリーホック強化部長の西村卓朗氏を進行役に、自身の失敗談を交えながら「最強のチームの作り方」を語った。
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セッションのグラフィックレコーディング。内容の詳細(一部抜粋)は下記


チームの行き着く先は「生物学的組織」?

フットボールクラブ水戸ホーリーホック 西村 卓朗氏(以下、西村氏):スポーツビジネスの世界において「強いチーム」とはどんなチームだと思いますか? 同じ勝ちでも、ワールドカップのような短期決戦と、クラブチームでの長期戦では違いがあると思います。どちらも経験されている岡田さん、いかがでしょうか。

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今治.夢スポーツ
代表取締役会長
岡田 武史氏
今治.夢スポーツ 岡田武史氏(以下、岡田氏):僕は、もともとリーダーシップで引っ張っていくタイプでした。

 勝つこととは、ある意味、確率論で突き詰めていくことです。サッカーにおける失点の多くは、カウンター攻撃によるものです。それを防げば失点は劇的に減ります。そこで「失点を減らす」ことを重視した指示を私は当初出していました。しかしそうしたところ、選手が自分で考えることなく指示だけを意識した動きをするようになったんです。次第に「このやり方で本当にチームを強くできているのか」と思い悩むようになりました。

 トーナメントのように短期的に勝つことを目指すならばこのやり方でもいいのですが、長期的に勝ち続けるためにはそれだけでは不十分です。ただやることを与えられるのではなく、もっと大事な理念や哲学を自ら見出していかなければ勝ち続けるチームにはならないと感じます。

西村氏:中竹さんは、いかがですか?

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日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター
株式会社チームボックス 代表取締役
中竹 竜二氏
日本ラグビーフットボール協会 中竹 竜二氏(以下、中竹氏):私は以前、早稲田大学ラグビー部の監督を務めていましたが、いきなりサラリーマンから監督になり、指導経験はほとんどありませんでした。そのため、選手を「引っ張っていく」ことはできませんでした。私の中でのリーダーシップとは「とにかく選手を支えて見守る」ことでしたね。

 時間はかかりましたが、選手自らが考えたり、学ぶ機会のある環境を整えるのが私の仕事でした。「素人監督に任せておいてはダメだ。自分たちで考えなければ勝てない」という危機感を選手たちは持っていたと思います(笑)。指導者がみんなメンバーよりも能力があるわけではありませんので、それぞれのやり方があってよいと思います。

西村氏:クラブ運営をされている島田さんが考える「強いチーム」とはどういうものでしょうか。

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千葉ジェッツふなばし
代表取締役会長
島田 慎二氏
千葉ジェッツふなばし 島田 慎二氏(以下、島田氏):千葉ジェッツは元々、つぶれそうな弱小会社でした。「スポーツでもうかるはずはない」「マイナースポーツにスポンサーがつくわけない」いうマイナスのマインドセットからスタートしたチームでしたが、日本一だったクラブチームを追い越そうと奮起した結果、7年目でリーグ1位になることができました。

 ただ、チームの理念を作って1位という成功体験を共有した後には、別の難しさを感じました。1位を維持することが難しくなり、「危機感を持て」と強く言い続けても、どこかで慢心してしまうようになったのです。常勝チームを作るまでのアプローチと、勝ち続けるメンタリティをどう育てていくかは、まったく別物だと感じます。今、当社は後者の戦いに挑んでいる最中です。

  岡田氏:会社を始めて5年たちますが、時期によって組織の在り方やリーダーシップを変えていかなければいけないと強く感じています。行き着く先は、「生物的組織」ではないかと思います。これは生物学者の福田伸一さんの言葉ですが、「古い細胞が死んで、新しい細胞が入ってきても脳は何も命令していない」というものです。細胞同士が折り合いをなして、今までと同じ形を作っていく。細胞を選手だとすれば、選手同士が自律的に折り合いをなしていける生物学的組織が強いのではと考えます。

“勝つ”ことを意識すると人は萎縮する

西村氏:チームを作っていく中で、どこかで混乱期に突入することがあると思います。その際、どうチームをマネジメントしていきましたか?

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フットボールクラブ水戸ホーリーホック
強化部長
西村 卓朗氏
岡田氏:初めてワールドカップの監督に就任した際、プレッシャーに押しつぶされそうになりました。ただ、その中で自分の中の“遺伝子のスイッチ”が入りました。私たちの中には、厳しい環境を乗り越えてきた強い遺伝子がある。ところが、安全、快適な社会にいると遺伝子のスイッチが入らない。苦しみぬいて、必死になった瞬間に遺伝子のスイッチが入った気がしてプレッシャーから解放されました。

 「自分には理論しか武器がない」と理詰めで考え、勝つためにベストの選択することだけに集中することができました。

中竹氏:私は、指導者を指導する立場としての「コーチのコーチ」という研究をしてきましたが、コーチの中には、世界的なゲームで連続的に勝ち続ける「シリアルウイニングコーチ」にカテゴライズされる方がいます。彼らは共通して、選手に対して「勝て、勝て」とは言わないという特徴を持っています。

 岡田さんにスイッチが入って変わったのは「ベストを尽くす」ということ。“勝つこと”は相手がいる世界で自分自身でコントロールできない領域です。人間はコントロールできないことを命令されると、委縮してしまいます。そこで、「ベストを尽くす」という自身がコントロールできるところに注力すると、より良いパフォーマンスが発揮できます。

 私自身も監督時代、選手が考える場を設けてミーティングをして、選手にひたすら向き合ってきました。それしかできなかったので、腹がくくれたという思いもあります。

【次ページ】リーダーに求められる向き合う覚悟、健全な組織では誰もがリーダーになれる
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