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- 2019/06/05 掲載
「古民家再生」ビジネスは1.8兆円規模 JR、地銀、ワコールら続々参入
日本の住宅の6軒に1軒は築50年以上
古木の味わいがある「和のなごみ空間」として人気な「古民家」。歴史遺産になったり、飲食店や宿泊施設としても活用されたりするなど、意外に身近にある存在だ。「古民家」の定義は「1950年(昭和25年)以前築」「築50年以上(2013年当時)」などに分かれるが、前者であれば11%、後者であれば1963年(昭和38年)以前に建てられた16%が当てはまる。16%とはおよそ6軒に1軒の割合で、地域による差は大きいが、古い住宅は意外と身近にある。
古民家の定義をもっと狭くし、2013年時点で1963年(昭和38年)以前に建てられた民家で「伝統構法で建てられた木造住宅」とすると約156万戸になり、木造住宅全体に占める比率は5.2%になる。
ここで定義する「古民家」は、木造でもいわゆる「洋館」や木質系プレハブ住宅、北米起源のツーバイフォー住宅などは含まれない。江戸時代の農家、商家、武家屋敷などがルーツの、一般に「古民家」でイメージされる風格ある伝統的な住宅建築のことで、木造住宅の約5%、およそ20軒に1軒の割合で残っている。
古民家が多い地域はどこ?
古民家が多いのは古い歴史がある近畿地方で、大阪府、兵庫県、京都府の3府県がそれぞれ1位、2位、4位を占める。3位は愛知県、5位には広島県が入る。東日本大震災の被災地では、被害を受けていなくても耐震性に懸念を抱いた所有者が改修よりも公費による無料解体工事を選択したため、数多くの古民家が消えた。宮城県は、2008年から2013年にかけての古民家の減少率が沖縄県に次ぐ第2位(25.4%)だった。
古民家は一般に、人に利用されやすい平地や市街地のほうが後々まで残る可能性が高い。川越も名古屋(那古野)も京都も金沢も松江も萩も、江戸時代築の家屋がまとまって残る地区は市街地の真ん中にある。文化庁が指定する「重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)」の大半も市街地か平地で、白川郷や大内宿(福島県)のような山あいの集落は数えるほどしかない。
古民家再生の潜在的市場規模は約1.8兆円
空き家の古民家を修繕・リフォームし、賃貸住宅や商業施設や宿泊施設に生まれ変わらせる「古民家再生」は、今や建設関連のビジネステーマの一つとして成立している。日本政策投資銀行は2015年、その潜在的な市場規模は約1.8兆円あると試算した。同行のレポート「古民家の活用に伴う経済的価値創出がもたらす地域活性化」によると、空き家の古民家は全国に21万1437軒あると推定されるが、その再生には地元の大工、工務店の技術や関わりが不可欠だと述べている。
ここ5年ほどの間に、全国で数多くの建設会社、工務店、建築コンサルタントが古民家再生事業に名乗りを上げ、2015年3月には事業者の全国組織「一般社団法人全国古民家再生協会」も設立された。同協会は、古民家リフォーム・リノベーションのガイドライン制定、「古民家鑑定士」資格会員による建物調査業務、自治体への古民家活用や空き家対策についての相談、調査、コンサルティングなどを行っている。また、2018年9月、「古民家ツーリズム」の活性化に向けてJTBと包括業務提携を締結している。
全国古民家再生協会の園田正文理事長は同協会ホームページで「古民家に学ぶべき点は多い。100年、200年という時を日本の気候風土の中で刻んできた古民家に学び、残された古民家を未来の子どもたちに残すことが我々の想いであり活動内容だ」と述べている。
【次ページ】企業も参入、各地で興隆する古民家再生プロジェクト
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