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日本三大秘境に数えられる徳島県三好市の祖谷地方で外国人観光客が急増している。人里から離れ、交通アクセスが劣悪な地域なのに、2017年の宿泊客数は隣の大歩危地区を含めて10年前の34倍。山村の素朴な暮らしや住民の温かいもてなしが外国人の心をつかんでいる。訪日外国人観光客は東京、大阪など大都市圏のゴールデンルートに集中しているが、地方に足を延ばす観光客が徐々に増えてきた。福知山公立大地域経営学部の中尾誠二教授(社会経済農学)は「地方で体験型観光が広がれば、地方都市や農山漁村を訪ねる外国人観光客がさらに増える可能性がある」とみている。
外国人宿泊者数は10年前の34倍
車の対向に苦労する細い山道が、曲がりくねって続く。両側にある山の中腹には、斜面にへばりつくように建てられた古い茅葺き屋根の民家がところどころに見える。徳島県の西端、四国山地に抱かれた三好市の祖谷地区。平家の落人が隠れ住んだ山里として知られ、岐阜県の白川郷、宮崎県の椎葉村と並んで日本三大秘境の1つに数えられている。
人口は約2,300人。その多くが高齢者で、子どもや若者の姿は滅多に見かけない。大半が農林業や建設業に従事している。道路は車の対向ができない場所が多く、土砂崩れでしばしば通行止めになる。公共交通機関は路線バスだが、夏の季節運行便を除けば1日4往復しかない。
まるで外の世界と隔絶しているような不便な場所だ。その代わりに、豊かな自然と日本の原風景ともいえる山村の暮らしが残る。住民は純朴で人懐っこいといわれてきた。
そんな祖谷地方に最近、異変が起きている。秘境を訪ねる外国人観光客が急増していることだ。シラクチカズラという植物で架けた名物の祖谷のかずら橋には連日、香港などから外国人観光客が押し寄せている。
三好市大歩危・祖谷地区の5ホテルでつくる「大歩危・祖谷いってみる会」によると、2017年1年間の外国人宿泊者数は1万8,847人泊に達した。6年連続の増加で、前年の1万4,828人泊に比べ、27%増。2007年の546人泊に比べると、実に34倍の大幅増となっている。宿泊者総数に占める外国人の割合も25%に及ぶ。
地元のタクシー運転手は「過疎で人口が減る一方だったのに、ここ数年は外国人を見ない日はない。おかげで地域が活気づいてきた気がする」と喜んでいた。
他で味わえないもてなしが好評
祖谷地方は以前から秘境を売りにした観光地だった。祖谷のかずら橋だけでなく、V字渓谷の中を吉野川の急流が流れ、ラフティングやカヌーの名所となる大歩危・小歩危峡、標高差390メートルの急斜面に江戸時代から昭和初期に建てられた古民家が連なる落合集落、ケーブルで谷底に下りる祖谷温泉の露天風呂など秘境らしい人気スポットが多い。
三好市中心部のJR阿波池田駅が徳島、香川、高知の3県を結ぶ交通の要衝で、それなりの観光客を集めていたことも誘客に好影響を与えていた。しかし、四国4県を結ぶ高速道路網が四国山地を挟んで西側の愛媛県四国中央市で接続されたため、三好市が交通の要衝でなくなりかねない事態になった。
これに危機感を抱いた祖谷地方は平成の大合併で三好市が発足する前の2003年ごろから体験型観光に目をつけ、官民一体となって観光客誘致に動き始めた。
やがて、農薬を使わない農業体験、武家屋敷の飲食施設化、大歩危峡から雲海を眺める「八合霧ツアー」などユニークな企画を次々に生み出した。三好市観光課は「最初、体験型観光のノウハウはなかったが、地域一丸となって手探りで進めた」という。
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