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ここ数年のアジア太平洋地域の広範囲的経済連携といえば、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が注目されてきました。しかし、2017年のトランプ政権がTPPからの離脱を宣言したことで、TPPの影響力と注目度が減少。一方で注目を集めているのが、アジアの自由貿易協定である「RCEP(アールセップ:東アジア地域包括的経済連携)」です。RCEPとはそもそもどんな経済連携なのか。TPPやFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)とは何が違うのか、そして国内の産業に及ぼす影響などについて解説します(2018年7月2日一部更新)。
RCEPとは何か?
RCEPとは、「Regional Comprehensive Economic Partnership」の略称であり、日本語では、「東アジア地域包括的経済連携」と呼ばれています。
内容としては、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心にした国家群(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミヤンマー、ラオス、カンボジアに日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国)が参加する広域的な自由貿易協定のことであり、別名メガFTAとも呼ばれています。
この経済連携協定の議論は、2011年11月にASEANの提唱により始まっており、実現すれば世界の人口の約半分である34億人、世界のGDPの3割にあたる20兆ドル、世界の貿易総額の約3割に当たる10兆ドルを占める広域経済圏が実現することになるのです。そのため、広域的経済連携協定としては、現在、世界で最も注目すべき項目の一つであると考えられています。
2017年11月には参加国16か国が共同首脳声明を発表し、市場アクセス、ルールおよび協力の三本柱において成果を出すとしました。さらに2018年7月1日には東京都内で閣僚会合を実施し、共同メディア声明に「本年末(2018年末)の成果のパッケージ達成へ注力する」と明記しています。(※2018年7月2日追記)
想定される経済連携はどのようなものか?
ASEANはすでに、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国と個別にFTA(自由貿易協定)を結んでおり、関税障壁の撤廃に動いています。RCEPは、こうした個別のFTAを包括的に束ねることで、広域的な経済連携を実現しようという構想です。
この構想では、関税の自由化を実現するだけに留まらず、サービス分野においての規制緩和や投資障壁の除外が含まれています。
これが締結されれば、たとえば国を跨いだ広域的なサプライチェーンの実現・拡大や、通関コストの大幅な低減などが現実のものとなります。自由経済という観点では非常にメリットが大きいわけです。
また、RCEPの参加国としてすべてのASEAN加盟国が含まれていることも大きなポイントです。事実、20世紀までは、北半球の先進国によって世界のGDPの8割が生産されていましたが、今世紀は、人口に比例する形で、東アジアにその割合が大きく推移してきています。つまり、生産性の地域的な分散が実現しているというわけです。
協定参加国には、インドネシアやマレーシア、また中国やインドなど世界的に見ても人口大国といえる国々が名を連ねていることから、インパクトの大きさが伺えるでしょう。
RCEPの「8つの大原則」と「8つの領域」
RCEPには、8つの大原則が規定されています。それが以下です。
- WTO協定との整合性の確保
- 既存のASEAN +FTAの締結からの大幅な改善
- 貿易投資における透明性の実現と円滑化の確保
- 参加途上国への配慮
- 参加国間の既存の二国間FTAの存続
- 新規参加条項の導入
- 参加途上国への技術支援、能力構築の実現
- モノ・サービス貿易、投資および他の分野の交渉
また、また交渉分野としても8つの領域が設定されています。
- モノの貿易
- サービス貿易
- 投資
- 経済技術協力
- 知的財産権
- 競争
- 紛争処理
- その他
このように見ると、RCEPは極めて多面的な領域をカバーした経済連携協定であることが分かります。
※具体的な交渉分野は以下の16分野
物品貿易、原産地規則、税関手続・貿易円滑化、衛生植物検疫措置(SPS)、任意規格・強制規格・適合性評価手続(STRACAP)、貿易救済、サービス貿易、金融サービス、電気通信サービス、人の移動、投資、競争、知的財産、電子商取引、経済技術協力、中小企業、政府調達、紛争解決等(※2018年7月2日追記)
RCEP推進に伴う日本企業のメリットとデメリット
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