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- 2017/03/13 掲載
コロワイド社内報と漫画「ハンター×ハンター」組織論からみた共通点と相違点
コロワイドの社内報から組織のあり方を考える
ボトムアップという言葉は、トップダウンという言葉との対比として、なんとなくポジティブなイメージがある方が多いのではないだろうか。しかし、ボトムアップは、それがいったいどういうものなのかという定義は難しい。そのため、その時々で語り手の都合の良い言葉と結び付けられ、手前勝手にそれが語られる。
ときに「旧態依然」の象徴となることもあれば、場合によっては「先進的」の旗手として語られる。非常に振れ幅の大きな概念である。
先日、外食チェーン大手企業のコロワイドの社内報の一部がWebで拡散されて話題となった。同社会長の独特の言い回しが話題になったため、同社では「本来の意図」を伝えるために当該文の全文を掲載する事態となった。
その全文を読んで筆者が興味深かったのは、同社会長の考える「意思決定のあるべき論」を語った箇所だ。
■会議
社会全体が好環境で、会社に金・銀・財宝が山ほどあるなら、意見調整等はボトムアップ型の業務の進め方が理想。日本古来の皆で仲良くは時間がかかる。全員1番、全員ビリ。
今の時代のやり方は、トップダウン型。リーダーにパワーがなく、建前のみで会話をする者は、自己満足に直ぐなりやすい。
お馬鹿は、会議が意味もなく長い。自分が言えば、下が理解してくれるものだと、勝手に思い込む傾向が強い。だから周知徹底ができない。
部下が聞いたという事と、それを理解して実行に移すことは別の問題。リーダーシップ・能力・スキル・工夫もない、勉強もしない、新聞も読まない輩は、人の話も聞いていない馬鹿野郎。会議が長い。こういう自己中馬鹿は、言っても治らないので、転職を勧める。
私は無口が嫌い、しかし周りは無口だらけ…。
上記の文章では、今の時代に求められるやり方はスピーディで明確なリーダーシップを発揮できるトップダウンこそが唯一の方法だ、としている。
ボトムアップは内部、外部環境が良いときの組織としては理想的だが、「和をもって尊しとなす」「民主主義」「平等主義」というイメージとセットに考えられており、それは弱腰でリーダーシップのない状態になる、との考えが述べられている。
「リーダーシップの不在」はボトムアップの弊害か
ここで参考にしたいのが、漫画「ハンター×ハンター」における組織論である。実は、コロワイドの考え方と共通する内容がハンター×ハンターで語られているのだ。物語の最序盤では、「民主主義における意思決定」に関して次のように語られている。
昨日今日あったばかりの5人の人間が何かを決める時
多数決は非常に便利で効率的に思える
だが それは 危険で甘い罠
決をとるという行為は 一見 個人の意志を尊重しているように思える
しかし 実は少数派の意思を抹殺する制度に他ならない
もしもこの状況で 何度も連続して少数派にまわり
自分の意志が抹殺されてしまったら
湧き上がるのは 疎外感 不満 怒り
(中略)
5人が意見を出し合い最終的な結論を導く相談という方法は
とても合理的かつ理想的に思える
しかし残り60数時間という限られた状態で
もしも意見が決定的に真っ二つに分かれたら?
乱闘寸前まで論争した結果 選んだ道が間違いだったとしたら?
相談とはたっぷり時間があってはじめて有効な手段なのだ
挙手による多数決は最大の愚行
匿名性が失われ 自分に反対する者が誰かはわかるのに
少数派には反論さえ許されない最悪のシステム
もしも常に特定の人物と意見が対立し 常に片方だけが意思を抹殺されたら…
それが続けば必ず集団は決裂する
(『ハンター×ハンター 第3巻 No.019 多数決の罠』より)
ビジネスの現場における二者択一は、「生きるか死ぬか」というと大げさかもしれないが、それなりにシビアなものである。
そのなかで「みんな仲良く」では到底追いつくものではない。そこまではコロワイドの社内報も、ハンター×ハンターも意見が一致しているのだ。
コロワイドの社内報とハンター×ハンターにある差
しかし、「トップダウンVSボトムアップ」論争においては、ハンター×ハンターという少年漫画は一枚上手である。「ボトムアップはぬるい」と即断してしまっているところに、コロワイドの社内報には論理の甘さがある。
対してハンター×ハンターでは、「選択とはなにか」「チームワークとはなにか」「仲間とはなにか」について、驚くほど深いレベルで思考がなされている。その結晶が、「幻影旅団編」である。
「幻影旅団」とは、連載当時からすると実に15年以上もの歳月が流れているにもかかわらず、ファンの間でいまだに根強い人気を保持しているキャラクター達のチーム名である。
「団長」を中心として13人のメンバーで構成されており、「危険度Aクラスの賞金首の集団」との設定がされている。
「幻影旅団編」においては、彼らと主人公達が、「緋の眼」というアイテムを巡って駆け引きを繰り広げる様が描かれる。
その終盤戦、「団長」と主人公が人質交換にされるのが本編のクライマックスである。団長を殺せば、集団としての幻影旅団は統率を失って壊滅するはず、との前提を誰しもが思い浮かべるものだが、そうではないという点がこの作品の白眉なのである。
オレが頭でお前達は手足
手足は頭の指令に対して忠実に動くのが大原則だ
…が それは機能としての話で生死の話ではない
たとえば頭が死んでも誰かが跡を継げばいい
場合によっては頭より足の方が大事な時もあるだろう
見極めを誤るな オレの命令は最優先
だが オレを最優先に生かすことはない
オレも旅団の一部
生かすべき個人ではなく 旅団
それを忘れるな
(『ハンター×ハンター 第12巻 No.114 9月4日⑬』より)
的確な組織的行動を実現するにあって、リーダーを中心とする指揮命令系統が破綻するようなことがあってはならない。
「建前の民主主義」では組織は崩壊する。機能としてのリーダーはなくてはならないものである。
だが、この「団長」のマネジメントは、いわゆるトップダウンという言葉が代表するような高圧的、官僚的なものではない。
ノルマを課すようなこともしない。自分が組織の上位にあるために、自分の安全が優先されるべき、といったことも主張しない。動機付けするための手練手管もない。
ただそこにいて、「精神的な支柱」としてのあり方を示すのみである。
組織のミッションを遂行するための指揮系統の役割は果たすが、あくまでそれは機能であって、組織を生かすという大目的の前では小事であるというわけだ。
【次ページ】「リーダーシップの遍在」が真のボトムアップ型組織をつくる
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