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- 2017/03/14 掲載
急成長するベトナムで「APRICOT」開催、今後アジアは世界のITを牽引できるか?
APRICOT 2017リポート
約50か国から600人以上が終結したAPRICOT 2017
アジア太平洋地域におけるインターネット基盤の発展を主眼に置いた「APRICOT(Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational Technologies)」は、1996年にシンガポールで第1回目が開催されて以降、アジア太平洋地域の都市で年1回開催され、2017年が22回目の開催となる。主催するAPIA(Asia & Pacific Internet Association/アジア太平洋インターネット協会)は非営利の組織だ。APRICOTの最大の目的は、インターネットに携わる技術者の知識研鑽と、インターネット技術者どうしの情報交換――人的ネットワークを構築すること――だ。APRICOT 2017では、約50か国から600人以上のネットワーク・エンジニア、オペレーターをはじめ、政府機関関係者、サービスプロバイダー事業者、データセンター事業者、教育関係者が集結した。期間中は、ネットワーク運用や構築、仮想環境/クラウドに関するセッションのほか、IPv6、ピアリング、DNS/DNS Security Extensions(DNSSEC)、IPアドレスの管理に関するチュートリアル(少数集中講義)など、180を超えるプログラムが開催された。
2月27日の基調講演には、ベトナム情報通信省で副大臣を務めるPhan Tam(ファン タム)氏やベトナムの最大手インターネットサービスプロバイダー(ISP)であるNetNamでCEOを務めるVu The Binh(ビン ビン)氏、ベトナムでIPアドレス管理を行っているVNNIC(Vietnam Network Information Center)の副所長を務めるNguyen Hong Thang(グエン・ホン・タン)氏らが登壇。ベトナムにおけるインターネットの発展を、国内外の関係者にアピールした。
高いインターネット成長率のベトナム、今や人口の60%が利用
「過去20年間、インターネットはベトナム社会の発展に大きく貢献してきた。現在においても、デジタル・エコノミーの重要なインフラ基盤であり、電子商取引、貿易、投資の拡大、新たなビジネスを創出している。今や、ベトナム人口の約60%がインターネットを利用しており、インターネットが国家の競争力を高めていると言っても過言ではない」(タム氏)冒頭、タム副大臣は、インターネットがベトナムの経済成長を牽引していると強調し、その成果をアピールした。
実際、ベトナムのブロードバンドは急速に普及している。日本の総務省が公開した世界情報通信事情によると、2010年には367万人だった固定ブロードバンド加入者数は、2015年には180%増の約670万人になっている。また、2010年には56.7%だった携帯電話の普及率は、2014年には132.7%になった。“2台持ち”のユーザーも珍しくないという。
タム副大臣は今回のAPRICOT 2017を「第4次産業革命の序章」と位置づけ、「ネットワークの技術開発、セキュリティの確保、安定性の向上といった観点でブレークスルーになることを期待している」とコメント。政府としても、全面的にインターネット技術の進化をバックアップする姿勢を鮮明にした。
2000年以降にインターネットが普及したベトナムは、アジア地域でIPv6(Internet Protocol version 6)への移行が進んでいる国でもある。ベトナム情報通信省は2020年までに、IPv6への移行を国家プロジェクトと位置づけて取り組んでいる。VNNIC副所長のタン氏は、「すでにインターネットユーザーの6%以上がIPv6を使用いる」と説明する。
ただし、タン氏は「インターネットを産業に活用するためには、克服すべき課題も多い」と指摘する。たとえば、標準/プロトコルの多さや相互運用の難しさ、さらにDos/DDos攻撃といったインシデントにも対応していかなければならない。
最後にタン氏は聴衆に対し、「こうした課題は技術者が連携して解決することが重要だ。すべての人々がインターネットを利用できる環境を、皆さんの手で目指してほしい」と訴えた。
喫緊の課題はセキュリティ
APRICOTの特徴は、参加者どうしが国や組織の枠を超えて情報を共有することだ。日本インターネットインフォメーションセンター(JPNIC) インターネット推進部部長の前村 昌紀氏は、「インターネットの世界は、そこにかかわる人がみんなで(最適なネットワーク環境を)構築する『互助精神』が根付いている。ピアリングが必要で(インターネット事業者は)、自分達だけでは顧客にサービスを提供できない。だから課題を共有し、共に解決策を見出せるよう情報を提供し合う。その場の1つとなるのがAPRICOTだ」と説明する。たとえば、国別インターネットレジストリを管理するNIR(National Internet Registry)に関するセッションでは、日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、インド、インドネシアの各代表が、それぞれの活動内容を報告した。セッション後半の質疑応答では、IPv6の普及に苦労しているインドネシア代表から、普及率の高い日本とインドの代表に対し、「どのような方法で(普及)活動をしているのか」という質問が投げかけられた。同セッションに登壇したJPNIC IP事業部の川端 宏生氏は、「(IPv6の普及という)同じ目的を掲げていても、他国が違う方法でアプローチしていれば、それがヒントになる。それぞれのよいところを学び、お互いに高め合っている」と語る。
インターネットのセキュリティ向上は全世界の喫急の課題である。今回のAPRICOTでは国際的なCSIRT(Computer Security Incident Response Team)であるFIRST(Forum of Incident Response and Security Teams)が、技術セッションを開催した。前村氏は、「サイバー攻撃が“ビジネス”になる現在は、攻撃者は最新技術を悪用して攻撃を仕掛けてくる。インターネットで利用されているDNS(Domain Name System)は脆弱性の多いプロトコルだ。この“穴”をどうやって塞ぐのかが、ネットワーク・エンジニアの共通の課題だ。われわれは、攻撃情報を共有することで、(攻撃者に)対抗していく。セキュリティ対策に決定打はない」との見解を示した。
【次ページ】ビジネスの場としてのAPRICOT、出展する日本企業の戦略とは
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