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  • 2016/10/26 掲載

IoTでカギを握るのは「データベース」、SAPとGEの取り組みを見ればわかる

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前回はIoT(モノのインターネット)分野におけるビジネスモデルの輪郭が徐々に見え始めていることや、IoTビジネスを形作る5つ階層構造について解説した。今回は、どの階層に属する企業が市場全体のカギを握ることになるのか考察してみたい。

IoTでネットのトラフィック量は大幅に増加する

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 前回説明したようにIoTはオープンな仕様であることが大前提となっているので、いわゆる水平分業的な産業構造になる可能性が高い。

 水平分業的な産業構造の中で重要なポジションを獲得するためには、いずれかのレイヤーにおいて高いシェアを握ることが重要となる。ただし一般的な水平分業とは異なり、IoTの場合、最も下のレイヤーである機器類の重要性が高いという特徴がある。

 また、GEやシーメンスといった大手メーカーは、従来の得意分野である産業機器から入り、上のレイヤーまでを包括する一種の垂直戦略も考えている。IoTの業界は垂直統合と水平統合が混在するという少し複雑な形となる可能性が高い(下図、前回記事から再掲)。

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IoTビジネスが一目でわかる5つの階層構造

 では、IoTビジネスを形成する各レイヤーの中で、どこが競争力のカギを握ることになるのだろうか。

 筆者は、2番目と3番目のレイヤーになると考えている。その中でも特に重要となるのは、2番目のレイヤーに属するデータベースの分野だろう。

 その理由は、IoTの時代における最大の懸念材料が、ネット上のトラフィックの増加に伴う処理量の増加であり、解決のカギを握っているのがデータベースだからである。

 ネットワーク機器を製造するシスコシステムズは、今後5年間で、全世界のIPトラフィックの量は約2.7倍に拡大し、2020年には全世界で122億個のIoTデバイスがネットに接続されると予想している。これは全世界に存在するネット接続機器の約半分という数字である。

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ネットワークにつながるデバイス数の増加に伴って、IPトラフィックも増加する

 ちなみに、2015年時点では、全世界で163億台のデバイスがネットに接続されている。つまり、今現在、ネットにつながっているすべての機器類がIoTに置き換わったことに近いインパクトが、数年で全世界にもたらされることになる。

データベースの処理がカギとなる

 しかもIoTの場合、システムへの負荷は極めて大きくなる可能性が高い。ネット上で画像やWebサイトを閲覧するだけであれば、閲覧側はその情報を表示するだけなので、それほど大きな負荷にはならない。データを提供するサーバには負荷がかかるが、同一処理なので対策は取りやすかった。

 しかしIoTの場合には世界に散らばる無数の機器からランダムなデータがサーバに送付され、サーバ側はリアルタイムに近いスピードでこれを処理する必要が出てくる。

 そうなってくると、クラウド上にあるデータベース・システムには極めて大きな負荷が加わることになる。データを活用できなければが顧客に有益な情報を提供することはできないため、高い処理能力を持ったデータベースを開発できる企業のアドバンテージは極めて大きなものとなるだろう。

 これまでデータベース・システムの主役は何十年にもわたって、リレーショナル・データベース(RDB)と呼ばれる方式だった。RDBとは、データをエクセルの表のような形(行と列)で管理するというもので、企業情報システムにおけるデータ管理には最適だったため広く普及した。

 RDB方式のデータベースとしては米オラクル社のOracle Databaseや米マイクロソフト社のSQL Serverといった製品が有名である。

 ところがIoTの場合、機器に搭載される無数のデバイスから送られてくる情報を、さまざまな角度から随時処理していく必要がある。

 ある部品でトラブルが発生する予兆を検知した場合、関連しそうな部品を無数の対象の中から抽出し、稼働情報を検索するといった気の遠くなる作業が求められる。

 RDBは、あらかじめ形式の決まった大量のデータから検索や抽出を行う作業には向いているが、こうした無数のデバイス同士の関係性を随時分析するといった処理には適していない。

 GEが開発したIoTのシステム基盤である「Predix」には、グラフ型データベースという新しい概念が用いられており、こうした処理を高速に実現できる。

 グラフ型データベースは、フェイスブックといったSNS企業では、知り合いを探し出す機能などですでに実用化されているが、GEは同じような概念を工業用途に使えるよう工夫を重ねた。

【次ページ】独SAPと米GEの取り組み
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