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- 2016/05/11 掲載
企業のフィランソロピーとは何か? フォード財団らの社会貢献活動が日本で普及しないワケ
フィランソロピーに対する誤解と、普及への課題とは
フィランソロピーとは、民間が公益のために行うボランティア活動、特に企業の寄付を含む社会貢献活動を指す。20世紀初頭にアメリカで誕生したカーネギー、ロックフェラーのような個人財団やフォード財団、近年ではセールスフォースをはじめとしたIT企業も積極的にフィランソロピーを行っている。
近年は、複雑化する社会問題の解決への新たな手法の一つとして、成長性の高い非営利組織や社会的企業に対し中長期にわって資金提供や経営支援を行うことで事業の成長を促す「ベンチャーフィランソロピー」に注目が集まっている。
新経済サミット2016では、「世界のフィランソロピー最新トレンド 注目されるベンチャーフィランソロピーやインパクト投資」と題したパネルディスカッションが行われた。楽天 代表取締役会長兼社長で新経済連盟 代表理事 三木谷 浩史氏をモデレーターに、米日カウンシル 会長 アイリーン・ヒラノ・イノウエ氏、Nexus 共同創設者兼グローバルディレクターのジョナ・ウィットキャンパー氏、ソーシャル・インベストメント・パートナーズ 代表理事 白石 智哉氏が登壇した。
冒頭で三木谷氏は、フィランソロピーとチャリティ(寄付)との違いについて「フィランソロピーは、イノベーションを社会的課題解決のために使う点が純粋な寄付とは異なる」と説明した。
「日本の公益法人の投資額が年間約8000億円だが、アメリカは約25兆円と40倍近い開きがある。新経済連盟はベンチャーフィランソロピーを今年の大きなテーマに掲げ、公益法人法の改正や、適格基準、認定などの規制緩和を政府に働きかけているところだ」(三木谷氏)
パネリストのアイリーン氏は、2009年より、米日カウンシルと在日米国大使館共同の官民パートナーシップである「TOMODACHIイニシアチブ」通じ、日米の若いリーダーの育成を行い、東日本大震災後は、東北地方の復興を支援してきた。
米国のフォード財団やクレスゲ財団の理事を歴任してきたアイリーン氏は、税制面など、日米間ではNPOの環境に大きな違いがあると指摘する。
「インパクト投資は、組織や企業への投資を通じ、測定可能なメリットのある社会的、環境的インパクトとともにファイナンシャルリターンを享受するモデル。得られたリターンは、財団から他のプロジェクトを進めるために活用される。クレスゲ財団では、40億ドルの資産を、医療、ホームレス支援、低所得者層向け支援、教育などのさまざまなプロジェクトに投資した。フォード財団も、数百万ドル規模のインパクト投資をしている」(アイリーン氏)
またジョナ氏は、70カ国、2000人以上の若者が参加するNexusの共同創設者だ。Nexusメンバーは、富裕層とソーシャルアントレプレナーを結びつけることによって、フィランソロピーを広める推進活動を行っている。
「ニューヨークの国連本部で開催した第1回Nexus会議には、世界各地から300人の若者が参加し、ここから卒業した若者が世界各国で富を動かし、社会的変革を起こしている」(ジョナ氏)
一方、白石氏は、1980年代から一貫してプライベート・エクイティ投資に従事してきた。30年近く、投資の専門家として活躍し、2012年に、ソーシャルインベストメントパートナーズを設立した。
「我々は長期的な融資支援、経営支援を行うが、ベンチャーフィランソロピーは、ファイナンシャルリターンは特にない。我々はソーシャルリターンのみを追求し、社会的インパクトを数値化しようとしている」(白石氏)
白石氏によると、ベンチャーフィランソロピーとインパクト投資には、ファイナンシャルリターンの有無で違いがあるという。
「我々は『イノベーション』『数値化できる社会的インパクト』『持続可能性』『起業家精神』の4つの基準で投資先のポートフォリオを見ている。そして『教育、青年の雇用』『育児』『地域社会の発展』といった分野で、長期的視野に立ち、重点的に投資を行っていく」(白石氏)
複雑化する社会課題の解決に必要なもの
三木谷氏は、「日本ではフィランソロピーのイメージが湧きにくい」と語る。そして、「政府は増税をして、政府を介して再配分をすればいいのではないか、という意見もある。また、フィランソロピーは社会主義を推進しようしているのではないかという誤解がある」とパネリストに問うた。これに対し、ジョナ氏は、「フィランソロピーは、資本主義の父と民主主義の母を持つといわれる。つまり、政治的なイデオロギーから完全に独立している」と説明した。
「政府の役割はルールを定め、それを遵守することを徹底する。迅速に対応することや、市民の生活を全て監視、管理することではない。フィランソロピーは、自分が属するコミュニティの近所で発生している問題、コミュニティが感じる課題を自ら解決することで、政府の役割外の部分で課題解決の可能性がある」(ジョナ氏)
また、チャリティにおける寄付とフィランソロピーの性質の違いについて問われたアイリーン氏は、「アメリカでは、3つの強力なセクターがある」と語った。
「『政府』『ビジネス』『非営利セクターとしての市民社会』という3つのセクターだ。このうち、市民社会が一番自由なセクターで、より多くの市民が、寄付した先の活動にもっと関わりたいと願うようになり、寄付した資金がどう活用されているか関心を持つようになった。そこで、フィランソロピーにおけるインパクト投資の議論が盛り上がっている」(アイリーン氏)
また、企業がフィランソロピーに関わる意義や役割について聞かれたアイリーン氏は、「企業の利害と、どういうプログラムに参加するかが重要視される」と話した。
「この2つがうまく合致すれば企業にとってのメリットを生み出せる。『TOMODACHIイニシアチブ』を通じて、4年半で4500億ドルの支援を行うことができた。大半は日米企業からの支援だったが、当初、各企業の反応は、被災地の救済支援をしたいということだった。しかし、今は、自分たちのCSRのゴールとのすり合わせを考え、プログラムを通じ、若者のためになることに取り組んでいる」(アイリーン氏)
そして、今後、日本において、フィランソロピーの認識を高めていくにはどうしたらよいかを問われた白石氏は、以下のように語った。
「チャリティは、自分の持っている富を再配分する性質がある。しかし、社会課題はどんどん複雑化しており、解決には一種のイノベーションが必要だ。社会問題は絶えずソリューションの種を持っており、起業家は、そこに注目している。一方で、日本の従来の民間の財団は、従来型の寄付に殉じている。規制緩和が必要だし、新規参入を促すなど、長期的、戦略的な取り組みも必要だろう」(白石氏)
【次ページ】日本で社会貢献活動が共感されにくいワケ
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